出囃子
先日、NGKのプログラムでテンダラーさんとすゑひろがりずがキャスティングされていました。
音響さんから相談の電話が掛かってきました。
「テンダラーさんとすゑひろがりずさんの出囃子が被ってるんですけど、どうしましょ?」
へー、そうなん!この時初めて知りました。
出囃子の被りはやはりあまり宜しくないのです。
すゑひろがりずにいつから使ってるん?と聞くと「東京進出してからです」と。
うーん、テンダラーさんと使用開始時期まで近いなぁ(笑)
まぁこういう時は後輩が変えるのが普通で、本人達も被ってることは知ってたけど、タイミングやどんな曲がいいか解らないからズルズルと…。とのことでした。
電話をくれた音響さんは「一応、和テイストな曲を編集したのありますよ」とのことで、それを採用することに。本人達も聞いて納得してくれたので一安心です。
やはり出囃子は登場前にお客さんの気持ちを高めたりしてくれますから演出として非常に重要なのです。
Twitterにも書きましたが、銀シャリは筋肉少女帯の日本の米というパンクロックな曲調の出囃子で、NGKに出始めた頃、午前中からの公演でお年寄りも多い客席の雰囲気に合わないから、NGKでは出囃子を変えたいと相談があり、NGKだけでは若手用に昔からあるポップな曲をになりました。
さて、この出囃子とはいつ頃からあるのでしょう?
実は江戸時代からあるんです。
もちろんルーツは落語の出囃子(三味線、笛、太鼓)からです。
出囃子のルーツを語るにはまずは当時の落語の上方と江戸の違いを知って頂く必要があります。
落語が出来たのは今から約300年前です。
落語が出来た時、上方は神社の境内や街の一角で行い辻噺しと呼ばれていました。
一方、華のお江戸の落語はお茶屋さんや将軍などに呼ばれてお座敷で噺していました。
上方はガヤガヤした所で人を集めて公演を行うので、人に知ってもらう必要がありました。なので、いかに賑やかにするか…
音、鳴らすか!!
という、発想から出囃子が生まれました。
さらに見台という
拍子木を叩いたり扇子を叩いたりしてとにかく音を鳴らし、町行く人に知ってもらう、足を止めてもらうという工夫がありました。
お江戸は既に建物内へのご招待だったので
わざわざ賑やかにする必要はありません。
東京に出囃子が伝搬したのは大正時代くらいのようです。
さて、そんな歴史の深い出囃子ですが、日常から我々スタッフは聞きまくっております。
個人的に好きな出囃子や、もうちょっといい曲にした方がいいのになぁ…と思ったりする出囃子もあります。
例えばフルーツポンチの出囃子はウルフルズの「暴れだす」なのですがこの曲はイントロがスゴく静かなんです。
前のコンビの下げ囃子から曲を乗り替えるとものすごく物足りない感を僕は感じてます。
本人達がそれを選んでいるので、それでいいのですが、さすがに下げ囃子だけはそのイントロが静か過ぎるので、NGKでは音響さんに頼んでイントロを切ってサビから流してもらうようにお願いしました。
他にもライスのChordetts「Lollipop」も曲の頭はタップの音なのでコツコツしか聞こえないので、ボーカルが入るまで拍手に掻き消されていることもあります。彼等と出囃子についてお話しをする関係性が出来てないから、どんな思い入れがあるかも知らないので、今はまだ助言出来ないです。。。
出囃子は流す時に照明を煽ることが多く、だいたい10秒くらいでボーカルが始まったりサビが始まるとそのタイミングで明転したり、出演者が登場するキッカケになります。
そういう意味ではアインシュタインのLocofancの「START」とかは完璧です!!
他にも2丁拳銃さんのブルーハーツ「44口径」
これはAメロの歌詞から2丁拳銃というフレーズがあって、15秒くらいでサビに入ります(音響さんの編集済み)
さらに華丸大吉さんのNatural Radio Station「博多WALLKER」もイントロ→サビ。曲もカッコいいし歌詞の「福岡で作ろうか、でっかいレゲェの輪。博多のヤバさはしっとうや、ちかっぱいけとっちゃん。」歌詞の意味を調べたくらい好きです!
ザ・ぼんちさんは自分達で発売日した恋のぼんちシートが出囃子です。ぼんぼんぼんちぼんち、これ程分かりやすい出囃子はないですよね(笑)
変則的なとこで言えばギャロップさん。
出囃子はドーピングパンダ「Hi-Fi」なのですが、吉本の劇場では曲の頭からサビのI Love you~と始まるのですが、営業によく行く音響さんが使うギャロップさんの出囃子は同じ曲なのですがイントロも付けております。
僕はこのイントロありバージョンの方がいいと思ったりもしております。→原曲はコチラ
カモーン!!がちょうどいい(笑)
やすよともこさんは3年くらい前に氣志團の「房総スカイラインファントム」から今のBIG BANGの「BANG BANG BANG」に替わったのですが、なんとやすともさんが替えた時、その曲は若手のなにわスワンキーズが既に使用しておりました。
ここは若手のなにわスワンキーズが出囃子を譲るかたちになりましたが、僕は譲って良かったと思います。
やすともさんはBANG BANG BANGのイントロ→Aメロが出囃子、これは普通なのですが、スゲー!!と思ったのが下げ囃子がCメロなんですよね。そういう使い方する人は今まででいなかった。
やすともさんは毎回爆笑をかっさらって、ネタが終わった時のこのCメロがめちゃくちゃカッコいい!! 何か拍手を纏ってる感じがほんと好き!!
吉本で音響をやっている人は圧倒的に20代が多いんです。昨日のこのツイートをしたら
東京で某坂道グループやケツ◯イシなどで音響をしている友人からこんなリプライがきました。
これは素敵な誉め言葉だと思います。
彼女は僕と同い年の音響で、吉本の仕事も一時やっていたから解る部分です。
若い音響さんには本当に頑張って欲しいし、うらやましいのが今回のすゑひろがりずの音源のように、自分の仕事がカタチとしてずーっと残るのです。
これは舞台監督にも照明にも出来ない領域です。
今回は何気ない出囃子について書いてみました。
因みに舞台を見に行って個別の出囃子が流れない時は配信とか収録をしていて、著作権に抵触するからです。劇場はJASRACと契約してますが、配信や収録ではそうはいかないのです(´・д・`)
音源についてこちらの動画を作製しましたので、ぜひご視聴下さいませ!
出囃子をまとめたnoteもあります→コチラ
ではまた書きます!
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