骨髄移植ならず

仕事の事ではないですが、心の内側の気持ちをどうしても文章に残しておきたくて、投稿する次第です。

僕は骨髄バンクに登録しています。
昨年12月、一通のメールが届きました。

内容は「僕と白血球の型(HLA)が一致する白血病患者がいるので、HLAを提供して欲しい」と

2019年頃に登録しましたが、僕は骨髄バンク登録者だ!という自負で生きていなかったので、普通に登録したことをちょっと忘れていて、迷惑メールかも…とリンクをタップするのも抵抗ありました。が書かれていた番号を検索するとちゃんと骨髄バンクセンターだったので、そのメールを受け入れることが出来ました。

数日後、骨髄バンクコーディネーターさんから電話があり、HLA提供の意思確認でした。

骨髄バンクに登録した後に生活環境が変わり、提供意思が消失するケースが多いそうです。

骨髄採取は2パターンあります。
全身麻酔を行い骨盤(腸骨)に数ヶ所穴を空けて、そこに数十回注射を刺し採取する方法と、

末梢血幹細胞採取という投薬で白血球の数を増加させ骨から血液に溢れ出た造血幹細胞を献血の様に採取する方法。

骨髄採取は入院4日程度
末梢血幹採取は入院6日程

過去の採取で多くはないですが後遺症や死亡例もあります。

移植待ちの患者さんは日本に約2000人おられます。
ドナーは約50万人います。分母の多さで、96%の患者さんに適合者が見付かります。

しかし、実際に移植手術を受けられるのは約60%まで下がります。

骨盤バンクに登録した時は良くても結婚や出産、就職、体調変化、など自分のスケジュールをコントロール出来なくなる事も少なくありません。

そして、この移植する白血球の型(HLA)は、とてもパターンが多く、血液は4種類にRHのマイナスかプラスくらいなので、まだ容易に適合者が見付かりますが、HLAは親子ですら一致率が1%。兄弟で25%。他人になると数百~十万分の1という、奇跡的な一致率まで下がってしまいます。

さらに自分は提供の意思があっても、身内からの承認が必要になります。僕の場合は親の承諾が無くては提供することは出来ません。しかも基本的には身内が意思確認時に同席することになります。

(コロナ禍で移動などリスクある場合はオンラインでの承諾も可能になったようです)

と、まぁ様々なハードルがドナーと患者の間に渦巻き、ドナー登録していても一度も提供せずに年齢制限を迎える人の方が多いようです。

12月頭にメールが届き、意思確認の電話があり、提供意思があれば書類が届き、そこには自分の身体に対する様々な質問が書かれています。それを返送して、12月下旬に血液の再検査を行いました。

ドナー登録時と変化していないか、の確認です。
その再検査の結果は1月上旬に届きました。

オールクリアでした。

感染症チェックの良く解らない抗体検査の中に突然HIVの診断出てくるとちょっとビビります。

つらつら書いていますが、こういう知識も全てここ1ヶ月で知ったことです。自分自身もドナー登録はしていながら、骨髄バンクや白血病患者さんのことに関しては知識ほぼ0でした。

登録したのも池江璃花子さんが白血病に罹患した時に、ちょうど献血に行っていて、20代の頃はスケジュールを自分でコントロール出来ないから、登録する意識は無かったのですが、近年は仕事よりもそういう事をもっと大切にして行こうと意識が変わり、仕事断ってもいいや!

って思えるようになったので、悩む事もなく突発的にドナー登録しました。

僕は脳死判定を受けたならば、ありとあらゆる臓器の移植を行う男です。もうケチくさいことは言いません、毛根も恵まれない方に差し上げます。体内スカスカにしてから焼いて欲しい。

火葬場の人が驚くくらい早く焼き上がって、親族をあまり待たせたくない意思すら持ち合わせてます。

話しはずれましたが、骨髄も年齢によって増殖量が変わるようで、20代~30代の方が効果が高いそうです。しかしその年代が一番スケジュールを自分でコントロール出来ないのが今の日本の社会の在り方です。

そしてHLAの提供が決定したら、患者さんは移植日から逆算して2週間前からドナーの造血幹細胞を受け入れるようにする為に、大量の抗がん剤を投与され、全身に放射線照射され、本来の造血機能を破壊します。

なので、この段階ではドナーは絶対に移植手術を受けないといけません。正直、僕はこの部分がとても怖いというか、もし移植が決定したら何が何でも健康に二週間生き延びないとダメなんだという、他人の命を本当に背負えるのか、という今までに感じることも考えることも無かった、人の命にいて考えることになりました。もちろん提供意思は変わりませんでしたが。

そして

今日の夕方コーディネーターさんから電話が掛かってきました。患者さんへの移植中止の連絡でした。

この中止の連絡には2パターンあります。

一つは僕より、より良いHLAの適合者が見付かったケース。

もう一つは患者さんが移植手術に耐えられないほど病状が悪化したり亡くなられてしまったケース。

コーディネーターさんは、中止理由は教えてくれませんでした。

本当に複雑な胸中です。
患者さんの情報は何も貰っていないので、おいくつの方なのかも解らないし、より良い適合者からの移植が成功することを心より願うしかない。

骨髄移植は、我々ドナーにとってメリットはほぼありません。唯一あるとすれば、自分が人の命を救えたという達成感と安堵感ではないでしょうか。

移植手術の休業補償も自治体によって違います。
大阪市は補償なしでした。ただ自分の休暇に骨盤に穴空けるという状態です。

骨髄バンクはドナーの意思を最大限考慮してくれます。コーディネーターさんの応対にも心遣いを感じられ非常に好感を持てます。

一つだけ要望を言うなら、中止になった場合

嘘でもいいから、より良いHLA適合者が見付かったという連絡にして欲しい。夕方以降ずっと何か切なさがあります。

あと、先日NHKのドキュメンタリーで池江さんが水泳をされている姿を見ました。白血病発症前の記録からは2秒程遅くなっていましたが、僕のように池江さんキッカケでドナー登録した人間がいるということや、元気に泳ぐ姿が同じ病気の皆さんの希望になっていると思います。

最後になりましたが、池江璃花子さん、新成人おめでとうございます。

https://www.jmdp.or.jp/

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