資本に飲み込まれる中小タクシー会社
以上の報道を受けて、十全交通株式会社を子会社化することにより大和自動車交通株式会社が享受し得るメリットを考察してみた。
多摩地区での営業基盤強化: 十全交通は東京都府中市を拠点としており、大和自動車交通は多摩地区での営業強化を図っている。今回の子会社化により、同地区での営業拠点が拡充され、サービス提供エリアの拡大が期待できる。
業務効率の向上: 大和自動車交通立川株式会社や大和交通保谷株式会社など、多摩地区にある既存の子会社との業務統合や間接部門の集約を進めることで、コスト削減や業務効率の向上が見込まれる。
乗務員の採用拡大: 多摩地区での営業拡大に伴い、乗務員の採用を強化することで、サービス品質の向上や顧客満足度の向上が期待される。
資金運用効率の向上: 十全交通が賃借している不動産(本社事務所および駐車場)を親会社である株式会社ミドリから取得することで、資金流出の抑制とグループ全体の資金運用効率の向上が図られる。
大和自動車交通は現在タクシー・ハイタクなどの旅客運送サービスの他、不動産や工業用品の販売、保険代理、総合メンテナンスなどの事業も展開。また2018年4月にはソニーグループ株式会社が提供するAI需要予測サービスの利用を開始し、同年5月にはS.RIDE株式会社(旧みんなのタクシー株式会社)に共同出資社として参画している。
斜陽産業の代表格とも言えるタクシー業界だが、今後も巨大な資本力を武器に大手企業が中小零細を買収し、旅客運送業の寡占化を図る動きが加速すると思われる。彼らがその先に見据えている業界像とはいったい何なのか。今後も一タクシー愛好家として見守っていきたい。