イラマチ男タコ蔵

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寿司と愛⑮~真っ赤なルージュ~

何もかもお見通しのような大きな瞳 つややかでぷっくりとした唇には 上品な真っ赤なルージュが塗られている 常にFendi、Vuitton、CHANELなどの、 ハイブランドを身にまとい 手には選ばれし者しか持てない クロコダイルのバーキン 銀座club nanase 瀬里奈ママ 歴史あるnanaseの中で 史上最年少でママとなりメディアにも引っ張りだこの彼女 銀座の夜の世界での人間で 瀬里奈ママを知らない人間はいない 銀座のホステスから ママになれるの

    • 寿司と愛⑭~予約困難~

      「おい!聞いたか久十兵衛の二番手に新しい小僧が入ったみたいだぞ」 「え?今田のオヤジが雇ったのか?」 「さえき田親方の息子らしいぜ」 「聞いた事ないぞ?さえき田親方の下には握れる奴がいなかったはずだ」 豊洲市場はあの日以来 佐伯田優星の話題で持ち切りとなった そして 寿司の世界は狭い すぐに周りの銀座中、いや、 日本中、いや世界中の寿司屋やフーディーの間で 「久十兵衛にとんでもない職人がいる」 との噂が広がった 朝から晩まで 休みなく働く佐伯田優星は

      • 寿司と愛⑬~運命の一貫~

        最後の玉(ぎょく)を置いた瞬間 俺は膝から崩れ落ちた 体全身が脈打つようジンジンとして 意識がだんだんとフェードアウトしてくるのを感じる 周りのざわつきがどんどんと どんどんと 耳が聞こえなくなる コースの寿司が出る順番について 以前は 味の濃い大ネタ(大トロ・うに・いくら・煮穴子等)の次に 淡い味わいが持ち味の白身の寿司では、味わいが霞んでしまうことを恐れ、味の薄いネタから食べ始め中盤に酢締めをもって行き、 終盤に大ネタで閉めるという流れが基礎としてあったが

        • 寿司と愛⑫~決戦~

          カレイ スミイカ カンパ 2貫目 3貫目 4貫目 三崎、そして佐伯田が 握った寿司に対して 久十兵衛 総料理長 今田 清次郎は 最初の中トロとうってかわり 全く反応しなかった 頷きもしない 声も発さない 果たしてうまいと感じてくれてるのか 会場全体が疑問だった そして 佐伯田が握る 次のネタは ライトに照らされ キラリと光が反射した そう 小肌だ 次のネタが 江戸前寿司の王様 小肌を握ろうとした瞬間 佐伯田優星は 意識が遥か

        寿司と愛⑮~真っ赤なルージュ~

          寿司と愛⑪~小手返し~

          三崎 仁基 久十兵衛史上 最も若く1番手の握り手となった男 現在35歳 1985年生まれ 埼玉県出身 初めて喧嘩をしたのは 保育園の時 三崎は当時5歳、相手は17歳の暴走族のヘッド 持っていたアイスピックで片目を指し 失明をさせ問題に 保育園を強制退園させられた 小学校にあがるころには 常にポケットには 100万円の札束を輪ゴムでくくっていれ もう片っぽのポケットには スタンガンを持っていた 「見たこともない悪」 全国的に裏社会では名前が広

          寿司と愛⑪~小手返し~

          寿司と愛⑩~オヤジの魂~

          『持って崩れず、口の中でホロリと綻ぶ』 舌の上に ネタが降着し 咀嚼するごとに香りが鼻を通り 一粒一粒のシャリの塩味と酢が ネタの脂と乳化するとともに 山葵の辛みと香りが これでもかと旨味を引き出し浮彫にする 「酢飯と一切れの魚」 そのシンプルな料理には 複雑に入り組んだ技術・仕事が隠されている 目の前で 颯爽と寿司を握るその職人の姿の裏には 簡単そうに見えるかもしれないが ものすごい細やかな技術とひたむきな努力が隠されているのだ 『こ・・こぞう

          寿司と愛⑩~オヤジの魂~

          寿司と愛⑨~所作と技術~

          「ここに15種類のネタがある 同じネタを、同じ人間が仕込んだものだ この15種類のなかから 5種類のネタを選んで握ってくれ シャリは久十兵衛と同じ 福島県会津産コシヒカリ を砂糖を使わずにミツカンの米酢と塩だけで仕上げたものだ 10分間の時間をお前らにやる 10分後 1巻目を俺に握ってくれ」 切り付け ネタの選別 そして握りの所作と技術 それでどちらが一枚上手か勝負を決めようじゃないか」 そう親方は俺たちに告げた 目の前に広がった ネタ箱の中に

          寿司と愛⑨~所作と技術~

          寿司と愛⑧~脱走~

          「おい!!起きろ!!ゆうせい起きろ!!」 何度も何度も体を揺さぶられる 「うるせぇななんだよ、朝っぱらから」 そう言って薄く目を開ける 目の前にいたのは 俺の唯一の同期と言っていいだろう 高岡 幸一郎(21)だった この高岡という男は 服部専門学校で料理を習い 東京の新橋にある京料理屋に就職を決めていたのだが 就職する直前に 親に連れてこられた寿司屋で 寿司職人の仕事に痺れ、ほれ込んでしまい その場ですべての就職先を蹴り 「働かせてください」 と

          寿司と愛⑧~脱走~

          寿司と愛⑦~会いたい~

          孤立してもいいと腹を決めて自分を貫いていけば、 いつかはみんなによろこばれる人間になれる。 これは生きてた時にオヤジが口をすっぱくして言っていた言葉 魚を見定め、寿司を仕込み、握ってお客さんに提供する これは完全に職人仕事 特に寿司屋というのは 多くの寿司屋が店の名前に自分の名前を命名するように 自分が看板であり 替えは絶対に効かない生業だ 全国に存在する寿司屋の店名には、「寿司」「鮨」「鮓」の3つの漢字が使われている。これらの漢字は使われている地域に特徴が

          寿司と愛⑦~会いたい~

          寿司と愛⑥~下積み~

          飯炊き3年握り8年 一人前につけ場に立ち 寿司をにぎれるようになるには10年以上かかる 伝統芸能に近いと言われている寿司屋は 今までそう言われてきた そして、 確かな店で、確かな修行をしたものだけが 生き残れる厳しい世界 それが「寿司屋」である 現在の寿司ブームにおいて 30代前半や 20代、そして今では20代前半で独立する店も多い これに関しては賛否両論ではあるが 筆者である私から見ると 『可哀そう』 と感じる事も多い 確かな店で、確かな努力

          寿司と愛⑥~下積み~

          寿司と愛⑤~寿司のすべて~

          「これこれ、懐かしいなぁ!」 俺はオヤジの書斎から一冊の埃(ほこり)だらけのボロボロの本を見つけた 小さい頃 オヤジは寝る前に 絵本ではなくこの本を俺によんでくれた 興味もなかったし、つまらなかったが 朝早くから河岸に向かい 夜遅くまで営業をしているオヤジが 俺と一緒にいてくれたのはその本を読んでくれる一瞬時間だけだった その本とは <寿司のすべて> というタイトルのもので ものすごく分厚い本であった 表紙を開くと 包丁の使い方から 服装、姿勢、

          寿司と愛⑤~寿司のすべて~

          寿司と愛④~さえき田~

          東銀座5丁目 みゆき通りから 一本入った雑居ビル エレベーターでB1を押す するとそこには薄汚れたビルからは想像できない 美しく、眩い白木で出来た引き戸と、 厳かな雰囲気の暖簾が姿を現した そう、ここが 寿司を好むものだったら 知らぬものはいない 死んだ親父の店 鮨さえき田 である 「お・・お坊ちゃま・・来られたんですね・・その頭どうしたんですか?」 ひどく疲れた顔で俺を出迎える白髪交じりの男 親父の2番手として 長年板前をしている男、前川 清

          寿司と愛④~さえき田~

          寿司と愛③~季節外れの松茸~

          チーン チーン チーン ななんみょーほうれんげきょーーんみょーほうれんげきょーー 親父はあっけなく死んだ こんな簡単に人って死ぬんだ そう高校生にして初めて思った 葬式中も 俺は涙が出なかった どっちかというと まだオヤジの死を受け入れられてない自分がいるから ただ 俺の人生が変わったのは この葬式の日からだった オヤジが経営していた寿司屋 銀座 鮨 さえき田は 寿司を好むものだったら誰もが知ってる 8年連続ミシュラン3つ星の店だ ちなみにミシ

          寿司と愛③~季節外れの松茸~

          寿司と愛②~緊急搬送~

          そんな日々に終止符を打ったのが 突然学校にかかってきた 母親からの電話だった 今でも覚えてる 丁度、昼休みが終わり、授業が始まる瞬間だった 「佐伯くん?お母さんから電話が来てるわよ、急用みたい!」 そう担任に叫ばれた 「なんだよ、また説教かよ」 そういって、なんの悪さがばれてしまったんだろうと思い職員室まで行き受話器を取り次いだ 「もしもし、何だよ、学校にいるのに電話かけてくるんじゃねえよ」 そう言った途端、母親が鼻水をすすり泣き崩れていたのが分かった

          寿司と愛②~緊急搬送~

          寿司と愛①~伝説の始まり~

          「この拳の怪我を見ると落ち着くんだよな」 そう言って立ち入り禁止の校舎の屋上で寝そべり 拳を太陽にかざす 俺は高校2年生 名前は佐伯田優星(さえきだゆうせい) 渋谷区神山町生まれ神山町育ち ガキの頃からこの猥雑な街にいるからか 見たくもない事ばかり見てきた 家にも帰らず、友達の家を転々とし 学校にも行かず、年上の正体不明の組織から頼まれたブツを運んだりとか 人に言えない悪さもしてきた 【神山町の悪魔】 人はそう俺の事を呼んだ ただ、そんな言葉が俺にと

          寿司と愛①~伝説の始まり~