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一時払い外貨建て生命保険を考える

ご無沙汰しております。袴田です。
最近、一時払い外貨建て生命保険について友人から相談を受けました。彼の母親が馴染みの保険外交員から勧められているいるそうです。
一般的に一時払い外貨建て生命保険は、保険商品購入時のキャッシュフローは悪化しますが、現在の外貨の高金利下、安定した利回りが想定でき、富裕層や退職金運用を考える人には人気な商品だと思います。
私自身、資産運用会社で運用職として働いていたこと・同様の保険商品を扱う保険代理店に業務で関わっていることから、運用商品・保障内容の両面で考えられると思い、できる限り客観的・合理的な視点を持って一度まとめてみようと思いました。

気になる点や思うところ等、ご意見あればお気軽にコメントいただきたいです。よろしくお願いします。

※ご注意事項
〇本記事は私の個人的な考察をまとめたものであり、特定の保険商品・投資商品を推奨/非推奨する意図はありません。
〇第三者の保険募集人に推敲をしていただいておりますが、記事の正確性・網羅性は担保できません。
〇私は保険に関連する会社や保険関係者との仕事上のつながりがあり、保険商品を推奨するインセンティブが発生する可能性を排除できません。

結論

  • 購入時にまとまった金額を支払い、その後ある期間に渡り一定の金額を受け取れる商品性は債券と似ており、保障目的でなく運用目的で購入するべき。

  • 債券と比べて、ネット利回りを比較すると一時払い外貨建て生命保険は劣る。

  • 購入時の負担・サポート、相続対策に関しては、一時払い外貨建て生命保険のメリットが大きい。


保険の商品性

友人の母親が勧められた商品は某外資系生命保険会社の商品でした。
一般的な名称は積立利率変動型一時払終身保険(米ドル建て)です。
※ご参考
積立利率変動型:積立金の運用利率が変動すること
一時払い:保険期間全体分の保険料を契約時にまとめて払い込む方法
終身保険:一般的に一定額の死亡保障・高度障害保障が一生続く商品
米ドル建て:保険料の支払い、保険金の受け取りともにドルで行う保険(保険料支払い時、円での積立金受取時に円↔ドルで為替取引が起こる)

商品性には以下の特徴があります。

  1. (契約日)一次払いで保険料を払い込む。積立利率・ドル運用時の為替レートの決定

  2. 当該の為替レートを適用して、ドルに換金し運用

  3. 積立利率に応じた定期支払金が毎年に支払われる(10年間・ドル建て)

  4. 定期支払金はドルで受け取れるが、円で受け取る場合は当該の為替レート

  5. 契約日から10年毎に積立利率が再計算

  6. 保障内容は基本的に死亡保険で、保険金は当初支払いの一時払い保険料

参考:メットライフ生命 P6

特徴を考えると、保険金が払った保険料を超えることががないので、保障目的の保険商品ではなく、運用目的の保険商品だと言えそうです。

債券投資との類似性

この保険商品って何かと似ていないですか??
「契約時にまとまった金額を払い、その後少しずつ金額をもらい、亡くなるときに最初に払った保険料が受け取れる。」
私は債券投資と非常に似ていると感じました。
→「契約時にまとまった金額(債券価格)を払い、その後少しずつ金額をもらい(利払い・クーポン)、亡くなるときに最初に払った保険料が受け取れる(満期が到来した際に額面金額の償還)。」
細かく言うと、10年で利回りが再設定されるので、満期10年の債権を10年毎に再購入をするイメージです。

参考:野村証券 債券投資とは


原則として

運用目的の保険商品かつ、債券と似ているのであれば、原則的には債券の方が、保険商品よりリスクリターンがいいはずです(保険会社の諸費用があるため)。
では、運用だけを考えた際にどの程度リスクリターンがいいのか、保険商品のメリットは何なのかを事項からまとめていきます。

債券との比較

ここからは具体的な数字がでてきます。基本的にはnote執筆時(2022年11月27日)の情報を基準として考えます。
保険商品で考えるのはメットライフ生命保険のサニーガーデンEXとします。保険商品の積立利率は4.15%です。

参考:サニーガーデンEX

比較する債券は下記のオリックスの債券(満期まで約10年利回り 5.166%)とします。

参考:SBI証券

また、為替は139.12円/ドルとして計算します。

下表のように比較をしてまとめています。

比較の結果、ネット利回りは債券が5.14%、保険商品が3.43%で1.71%の差がありました。
流動性は保険商品は10年未満に解約をすると、手数料がかかるので、債券のほうが優れていると言えます。
また元本毀損リスクに関しては、保険商品が不明なので比較ができません。メットライフ自体は格付(企業の安全性:参考)がS&P: AA-ではありますが、契約中の積立利率の更改が起こり得るリスクに関して情報の記述がなく、どのように評価するか難しいと思います。
対してオリックスの格付はS&P: A-, R&I: AA-, JCR: AAです(参考までに日本国債はS&P: A+)。メットライフより格付は低いですが、S&PのA格は相応に高く信用度の証明となるものであり、日系二社(R&I, JCR)の格付も高いので、特段気にするものではないと思います。
(そもそもオリックスが潰れることを考えられますか?という話ですが、デフォルトの確度の大小に関わらず正確に企業の信用力を評価しようとしているのが格付です。格付の話をすると長くなるのでこのへんにしておきます。)

保険商品のメリット

その他、保険商品には主に以下のメリットがあります。

  • 生命保険料控除が使える(契約した年のみ)

  • 営業の方が一緒に契約をサポートしてくれる

  • 証券口座開設等の面倒なことは必要なし

  • 相続時の税制優遇, 相続人・相続財産額を決められる

終わりに

思ったより、保険商品の利回りが高くて驚きました。
営業マンによるサポートは大きいと思うので投資初心者には保険商品もいいのかもしれません。
表面的な利回りのみでなく、トータルで判断をしていただければと思います。

追記

リベ大(お金に関する知識やスキルを共有しているコミュニティ)が貯蓄型保険として同様の保険を考察していました。下記に載せておきます。
個人的に下記動画に関しては真っ当なことを言っているなと思っています。本記事では保険に入らない場合に同様の商品性を持つオルタナティブを紹介している点が、リベ大動画との違いです。


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