「Up next - 英国政府の放送分野へのビジョン」を全訳してみました

Policy paperUp next - the government’s vision for the broadcasting sector(政策文書 Up next - 政府の放送分野へのビジョン) Updated 29 April 2022 

2022年4月28日、女王陛下の命によりデジタル・文化・メディア・スポーツ担当国務長官が議会に提出した。

■デジタル・文化・メディア・スポーツ担当国務長官による序文

英国のクリエイティブ・エコノミーは、世界的な成功物語だ。制作部門は活況を呈し、英国で制作されたコンテンツは需要があり、混在する放送の生態系は国際的に賞賛されている。
この活発で多様なエコシステムが好循環を生み出しているのである。英国を投資先として非常に魅力的な場所にし、英国のクリエーターが視聴者が好む高品質でオリジナルなコンテンツを制作出来るようにしている。
その成功の鍵を握っているのが、我々の公共放送局だ。この光景の中心に位置し、スキルと才能を開発し、クリエイティブ産業全体の成長を促進し、独特でありながら一目でわかる英国のコンテンツを配信しているのである。
しかし、技術、視聴習慣の急速な変化、グローバルプレイヤーの参入により、英国の放送局に新たな挑戦がもたらされた。
このような急速な変化を背景に、我々は、英国の放送局が最も差し迫った課題に対応できるよう支援し、我々の混合生態系を保護し、公共放送が我々の計画の中心にあり続けるようにするべく行動を起こす必要がある。我々はそうする。
※視聴者がどのような方法で視聴するかを問わず、テレビ的なコンテンツが同様の基準に従うのを保証する。こうした変更により、英国の視聴者は有害なものからより良く保護され、気になるものを見た場合にOfcom(訳注:英国の総務省に相当)に苦情を言えるようになる。
※公共サービスコンテンツが指定されたテレビプラットフォームで利用可能であり、かつ容易に見つけられる事を保証するべく、オンデマンドテレビのための新しいプロミネンス(注目)体制を導入する。
※公共放送事業者が貢献しなければならない職務権限を更新し、今の視聴者のためになるようにする。
※視聴者がいかにコンテンツを視聴しているかを反映するために、公共放送事業者が義務を果たす方法について、より柔軟性を持たせる。
※チャンネル4が今後も繁栄し続け、英国のより広い公共放送の生態系の一部として、その影響力を拡大できるように、チャンネル4の所有権の変更を追求する。
この改革は本当に重要である。視聴者にとっても、経済にとっても、そして英国の価値を世界に発信する能力にとっても良い結果である。

Nadine Dorries 議員 デジタル・文化・メディア・スポーツ担当国務長官

■概要

英国のクリエイティブ・エコノミーは、世界的な成功物語であり、公共放送局(PSB)はその成功の心臓部である。彼らは、英国全土、そして世界中で愛される素晴らしい英国のコンテンツを制作している。政府はこの状態の維持を望んでいる。
ラジオとテレビは、重要な公共的価値を提供する英国の強力で価値あるメディアであり続けている。人口の89%が毎週ラジオを聴いており、この数字は過去10年間、驚くほど一貫している。2022年3月の既存テレビの総視聴時間は1日2時間33分で、視聴者は信頼出来るニュースや質の高いオリジナル番組を求めて、引き続き公共放送を利用している。
政府は、この状況が今後10年間続くと考えている。最近のDigital Radio and Audio Review向けに作成された将来の聴取率予測によると、少なくとも今後10~15年間は、ラジオが英国のメディアの中心的な役割を維持するとされている。また、英国の成人の約半数がオンライン・ビデオ・サービスをテレビや映画の主な視聴方法と考えている一方で、1730万世帯が地上波デジタルテレビにアンテナを通してアクセスし、840万世帯が衛星テレビに、390万世帯がケーブルテレビに契約している。
一方で、ラジオとテレビの放送局が直面する逆風はますます強くなっている。競争は激化し、視聴者の習慣や技術は絶えず変化し、世界的な大企業がその存在感を示している。
そこで政府は、英国の公共放送制度を支援するために行動し、新たな立法上の自由を活用して、英国にとって最も利益のある規制の枠組みを実現する事を意図している。我々は今、公共放送が英国中の視聴者にサービスを提供し続けられるよう、公共放送に与えられる利益と義務のバランスである「コンパクト」に対する大いに必要な改革を実現しなければならない。
この白書は、我々がどのように行動しているかを示したものである。
※公共放送が、英国的であり、英国の視聴者の興味を引くコンテンツを配信する上で重要な役割を担っていると認識し、また、リスト化されたイベント制度の対象となる現行のサービスは全て公共放送によって運営されていると認識し、リスト化されたイベント制度の資格を公共放送特有の利益とする事を検討する。また、リスト化されたイベント制度の範囲をデジタル著作権に拡大すべきかどうかの見直しも行う予定である。
※競争可能なファンド計画の評価を実施する。これには、長期的には、競争可能なファンド・モデルが、英国で制作された高品質の公共サービス・コンテンツの幅と利用可能性に付加価値を提供し、視聴者のニーズをより満たせるかどうかを判断する際の教訓を詳細に検討する事が含まれる。
※「資格のある独立した」プロデューサーの地位が、このセクターの成長を促進する効果的な手段であり続ける事を確実にするべく、収益の上限を導入するかどうかについての検討を開始する。
※クリエイティブ分野への減税を通じて、高度な技術と革新的なクリエイティブ産業の支援を継続する。最近の調査では、ハイエンドテレビ減税の1ポンド毎に6.44ポンドのリターンをもたらすなど、その驚異的な効果が実証されている。同時に、その税制優遇措置によって支援される作品は、2017年の12億ポンドから2021年には41億ポンドに増加した。
※英国映画委員会を支援し、7つの制作拠点(各国に1つずつを含む)と、英国全土の多数の新しいスタジオ開発の成長を促進する。これらの各地域には、既にあらゆる産業の中で最も才能のある創造的で商業的な人々がいるし、この機会を活用するためにスキルの状況を進化させなければならない。
※コミュニティ・ラジオ・セクターを擁護するための新たな提案について2023年初頭に協議し、必要な場合、コミュニティ・ラジオ命令2004の改正を通じて免許要件の変更を前倒しで行う。また、政府は、議会の時間が許す限り、電波規制緩和に関する2017年の協議の結論を実現する立法化を引き続き約束する。
※より広範な広告エコシステムにおいて起こりうる変化を通じ、英国の放送局を支援する方法を模索していく。例えば、オンライン広告プログラムを通じ、我々は、説明責任と透明性を向上させるためにどのような手段を導入できるかを検討する上で、プラットフォーム責任の問題など放送とオンライン広告の間でより公平な競争の場を作る方法を検討する予定である。
※英国の貿易政策が、欧州評議会の「国境を越えるテレビジョンに関する条約」への加盟、ひいては欧州作品の地位の維持など、英国の視聴覚公共政策の枠組みを確実に補完・保護するよう努める。この地位により、英国は今後も国家間の重要な文化的充実に貢献し、欧州の近隣諸国と効果的に協力し、文化的に重要な作品を欧州全域に配給するのが可能となる。
※デジタル市場での競争を促進する新たな体制を確立する。これは、英国全体でより活発で革新的なデジタル経済を推進し、既存の競争体制とOfcomなどの分野別規制当局が利用可能な規制権限を補完するものである。
※放送とオンデマンドサービス間のアクセスサービス提供の乖離に対処するための法律案をOfcomと共同で策定していく。法律が明確で、適切で、目的に適ったものであると確認するべく、関連するステークホルダーと協働する。
※2034年までのDTTマルチプレックスライセンスの長期更新を可能にする。また、政府はOfcomに対し、DTT視聴の変化を引き続き追跡し、2025年末までにコンテンツ配信の将来に影響を与える可能性のある市場の変化について、早期レビューを行うよう要請する。
※ラジオが将来もリスナーに届き続けるための最良の体制を整えるべく、業界との協力や、スマートスピーカープラットフォームの方針と慣行を深く理解していく。
この野心的な政策プログラムの実現には時間を要するが、英国が今後も活気に満ちた成功した放送エコシステムの恩恵を受ける上で不可欠である。

第1章:市場の背景

英国のクリエイティブ・エコノミーは世界的なサクセス・ストーリーである。制作部門は活況を呈し、英国で制作されたコンテンツは需要があり、混在する放送エコロジーは国際的に賞賛されている。2019年、英国のクリエイティブ産業は1159億ポンドもの経済貢献を行ったし、映画、テレビ、ビデオ、ラジオ、写真部門だけでも216億ポンドにのぼった。
この活発で多様なエコシステムは、好循環を築いている。英国を投資先として非常に魅力的な場所にし、クリエイターが、視聴者が好む高品質のオリジナル・コンテンツを制作出来るようにしているのだ。そして、我々がレベルアップするにつれ、クリエイティブ産業は、英国全体の機会と成果を高める上で重要な役割を果たすようになった。
我々の公共放送は、その成功の鍵を握っている。この構図の中心に位置し、スキルと才能を開発し、クリエイティブ産業全体の成長を促進し、独特でありながら一目でわかるコンテンツを配信している。2020年には、国内各地で制作された3万時間の新しい英国のオリジナル・コンテンツが配信された。新型コロナの大流行という困難な状況にもかかわらず、である。

パンデミック時には、放送局が重要な役割を果たし、非常に困難な状況の中で国民を支えた。代表例としては、以下のようなものがあった。
※BBCは、学校に通えない子供向けに、終日教育コンテンツを流した。BBCのローカルラジオはメーカー、小売業者、慈善団体のWavelengthなどと協力し、70歳以上の最も弱い立場の人々にDABラジオを無料で提供した。
※ITVは、放送とソーシャルメディアにおいて、Britain Get Talking キャンペーン('Apart. But never alone'=離れよう。でも、孤独にならないように)をリニューアルした。
※チャンネル4は、この重要な公衆衛生メッセージを伝えるため、チャンネル4の全番組で「Stay at Home」のグラフィックを放映した。このグラフィックは英国の人口の78%に届き、平均で13回メッセージを目にする事となった。
※コミュニティラジオ局は、ボランティアの貢献により、放送を継続するべく混乱を乗り越え、地域の貴重な情報やサポートを提供し、支援が届きにくいグループを対象とした地域の公衆衛生メッセージも提供している。
※地元の商業ラジオ局は、ロックダウンの間、ニュースや情報への取り組みを大幅に増やし、平均して25%多く、28%長くニュース速報を放送した。
同時に、制作部門は、その回復力と革新能力を示した。新型コロナの課題に直面しても、業界は記録に近いレベルの支出を達成した。2021年中の映画とハイエンドテレビの制作による支出の合計額は56億4000万ポンドに達し、過去最高の報告となった。パンデミック前の2019年より12億7000万ポンド高い金額となったのである。
これを達成したのは業界や放送局だけでなかったのは言うまでもない。パンデミック時の政府の介入により、制作の安全な継続が確保されたからだ。これまでに1100以上のプロダクションが政府の映画・TV再始動スキームに署名した。29億ポンド以上の制作費は、このスキーム無しでは不可能であり、9万5000人以上の雇用を支えてきたのである。

ラジオもまた、英国の放送界に多大な貢献をしている。ラジオ放送の親しみやすさと、ニュース、情報、音楽、娯楽をミックスする能力は、その永続的な人気を確実なものにしている。国や地域のニュースや情報を提供する事によって多元性を強化し、英国で最も信頼されるメディアの1つとなっている。もちろん、コミュニティを結びつけ、孤独やメンタルヘルスなどの社会問題の解決に重要な役割を担っているのは言うまでもない。
一方で、技術、視聴習慣の急速な変化、海外プレイヤーの参入により、英国の放送局には新たな課題がもたらされた。

1.1.新しいテクノロジーの登場


ラジオとテレビは、何百万人ものリスナーや視聴者にとって、日常生活の中で非常に重要な部分である事に変わりはない。2020年には、英国の平均的な成人は1週間に約40時間の映像コンテンツを視聴し、89%がラジオを聴いている。
一方、我々が「視聴」を選択する方法は変化している。超高速ブロードバンドの急速な普及と、インターネットに接続可能な機器の普及により、オーディオや映像コンテンツへのアクセス方法が変化している。例えば、テレビを持つ世帯の79%が、テレビをインターネットに接続する事を選択し、多様な追加サービスを利用出来るようになっている。同様に、インターネット配信のオーディオサービスは過去3年間で急成長しており、ラジオの未来の一部となるだろう。特に、たった5年前に登場したスマートスピーカーが、今や全成人の3分の1が所有またはアクセスするようになった事は注目に値する。こうした流れにより、英国におけるインターネットの平均使用量は、1接続あたり月453ギガバイト以上に達した。これは150時間以上の高解像度コンテンツに相当し、今後も止まる気配が無い。
こうしたテクノロジーは、視聴方法だけでなく、視聴する場所にも変化をもたらしている。特に、携帯端末、特にスマートフォンの普及は、テレビを見る場所の制限が無くなり、どこにいても視聴可能になった事を意味するのである。
多くのテレビ・ラジオ放送局にとって重要な収入源であり、我々が目にする広告も変化している。ディスプレイ広告全体に占める既存テレビ広告の割合は、2000年から2015年までほぼ一貫して約40%だったが、2015年から2020年にかけては、広告主のオンライン化が進み、割合は27%に減少した。

1.2.視聴者・聴取者の選択肢の増加

このような技術の進歩は、今日の視聴者とリスナーが、何をどのように見るかという点で膨大な選択肢を持ち、活用しているかを意味している。公共放送の膨大なコンテンツに加え、商業放送の高品質で英国に根ざしたオリジナル番組も幅広く視聴者に提供されているし、その数は増えゆくばかりだ。スカイニュースと2020年以降のスカイアーツは無料で視聴可能である。一方、Discoveryは世界のストリーミング市場で競争するべく、既に多額の資金を英国のコンテンツに投入している。
生放送のテレビとラジオに加え、視聴者はますます多くのプロバイダーとデバイスに時間を配分するようになっている。例えば、2021年時点で、数千ものオンライン局やストリーム、333のアナログ商業局やBBC局、300以上のコミュニティ局に加え、全英でDAB(訳注:英国のデジタルラジオの規格)で聴けるラジオ局が574局も存在する。また、何か見るものを探している人に向け、英国では294のテレビチャンネルが視聴可能となっているし、YouTubeには毎分500時間以上の動画がアップロードされていた。
結果、既存テレビとラジオが支配するマスメディアの時代が終わり、居間に置かれたボックスを介して電波で配信されるようになった。実際、2020年には、動画視聴者の内、従来型の生放送だけという人は半数以下だ。特に若い年齢層で顕著だが、同じ傾向が今やほぼ全ての年齢層で見られる。ラジオについては、BBCと商業ラジオは新しいオンライン・サービス、例えばBBC Sounds、Global Player、Kiss Kube や Times Radioアプリなどのアプリベースのサービスに投資している。また、SpotifyやYouTubeなどのストリーミング・サービスでコンテンツをホストする事によりリスナーを維持し続け、新しく若い視聴者を惹きつけるなどの対応をしている。
テレビを視聴する方法に於ける変化の主な受益者は、ビデオ・オン・デマンド・サービスだ。インターネット経由で配信され、視聴者は数百から数千時間の番組カタログの中から、ボタン一つで選択が可能だ。2021年4月、アマゾン・プライム・ビデオのコンテンツライブラリは4万1000時間、ネットフリックスは3万8000時間、公共放送は合わせて3万7000時間、1日8時間視聴で12年分のコンテンツを誇る。BBC iPlayerの開始以来15年間で、こうしたサービスの人気は急速に高まっている。現在、英国の4分の3以上の世帯が、既存の放送局によるもの(BBC iPlayer、ITV Hub)や定額制(ネットフリックス、アマゾン・プライム・ビデオ)を含むビデオオンデマンド・サービスを利用している。注目すべきは、ネットフリックスなどの定額制ビデオ・オン・デマンド・サービスの利用が、2020年の前半に55歳以上の間で急増し、人々が家に留まるようになった事だろう。最近では、競争が激化する市場において、視聴者が自分のニーズに最も適したサービスを求めて買い物をするという証拠が増えつつある。
しかし、恩恵を受けるのは視聴者だけでは無い。現代のテレビやラジオの放送局は、動画共有プラットフォーム、ポッドキャスター、音楽ストリーミングプラットフォーム、ビデオゲーム会社など、それ自体が数十億ポンド規模の国際産業が提供する新しいコンテンツへの多額の投資と、我々の目と耳を奪い合う必要がある。
このように選択肢と競争が増えるのは良い事だ。一方、これは英国の放送部門に重大な影響を及ぼすものであり、考慮する必要がある。特に英国の公共放送局は、今日の放送環境と技術環境のなかで大きな課題に直面している。BBCが創設された1920年代とも、最新の公共放送局であるチャンネル5が発足した1990年代ともかけ離れた環境である。この課題については、第2章と第3章でより詳しく述べる。

1.3.国際的なビッグプレーヤーの英国国内市場への参入

視聴者やリスナーの選択肢が増えただけで無く、インターネットを利用した配信方法の採用が、新しい番組を求める視聴者の欲求の高まりと相まって、グローバル化の新たな波を促した。英国の番組は長い間、海外で輝かしい評判を得る一方、アメリカの番組は何十年もの間、英国のテレビチャンネルの主力番組だった。だが、状況は変わり、我が国の放送局が国際的な舞台で競争している事は、かつてないほど明確になっている。これは主に2つの点で実感されている。
第一に、英国に拠点を置く放送局は、海外に拠点を置くサービスと直接競合するようになった。多くは世界的規模から生じる大きな財源を活用する事が出来るようになった。2019年、英国の公共放送は新しいコンテンツに28億ポンド弱を費せたが、決して軽微な額では無い。一方、ネットフリックスだけで推定139億ドル(約115億円)を費やしている。この影響は、ハイエンドドラマなど特定のジャンルで最も強く感じられ、純国産作品の1時間あたりの平均予算は200万ポンドを大きく下回る水準で推移しているのに対し、海外からの投資を受けた番組の予算は1時間あたり600万ポンド近くにもなっている。このような資金格差は、国内の放送局が最高の設備を利用し、内外の優れた人材を集めるのを難しくしている危険性がある。
同時に、放送局は、コンテンツ発見の門番となりつつあるデジタル大手が運営する新しいグローバル・プラットフォームでのプレゼンスを確保するために、ますます努力しなければならなくなっている。そうした企業の中には、独自のサービスを運営しているところもある。また、そのサービスは、彼らが運営するプラットフォームで誇りをもって利用されている。
これらの新しいグローバル・プレイヤーは、グーグル、アマゾン、アップルといった、利便性と統合性を提供する事で成功している。だが、そうしたプレイヤーの力の増大と、プレイヤーの手元にあるデータは、必然的に、今後、アクセス権、運送権、著名性の交渉方法に影響を与える。配信プラットフォームの種類と所有権の増加は、消費者の選択肢とイノベーションに関わる潜在的な利益を生み出すが、我々英国人が知っている放送局が単に混雑してしまうというリスクも存在するのである。
他の分野では、世界的なハイテク企業の出現と、それらが促した統合の波が、競争への影響と、消費者が利用可能な潜在的な視点の範囲へのリスクについて疑問を投げかけている。放送分野では、北米と欧州で大規模な合併が行われ、統合の傾向が強まっている。我々は、視聴者とリスナーが放送部門の進化から生まれる利益を確実に享受出来るようにする一方、消費者の選択と混合生態系の成功を引き続き支援可能にしたい。これらの課題については、第3章、第4章、第5章でより詳しく述べる。

1.4.英国の制作部門の成長

このような選択肢の増加と技術革新の背景の中で、英国のテレビ制作部門は、内外を問わず繁栄している。2019年のセクター総収入は、BBC、ITV、チャンネル5が完全所有する制作スタジオの個々の成功を考慮する以前の話として、これまでで最高レベルの33億ポンド超に成長した。収益の大部分を英国の放送局からの委託が占めているが、国際収益(海外の放送局やストリーミング・サービスからの委託)の重要性が増している。この収入源は、過去10年の中頃から急速に増加し、2019年には初めて10億ポンドを超えたのである。
新型コロナの大流行がもたらした明らかな課題にもかかわらず、この分野での収入は2020年に弾力性を証明した。政府の世界有数の映画・テレビ制作再開スキームによって促進され、僅か14%減の29億ポンドとなった。依然としてこの分野の年間総収入は高く、過去3番目である。立ち直りは目覚しく、英国の制作分野がいかに弾力的でダイナミックになったかを証明している。
英国を平準化するという政府の野心に沿って、ロンドン以外の地域での生産は過去10年間で大幅に増加した。この傾向は、主に公共放送局が牽引している。現在、コンテンツの半分以上をロンドン以外で制作している。全英に活気あるプロダクション・ハブが構築されているのである。BBCとITVは既にサルフォードのMediaCityUKに活気あるメディアクラスターを設立し、そこからBBC Breakfast やCoronation Streetなどの英国の主要全国番組が制作・放送されている。同様に、カーディフも、BBCウェールズ、ITVウェールズ、ウェールズ語放送局S4Cを抱え、ロンドン以外では英国最大のメディアセンターの一つとなっている。
このような成長はテレビに限らない。近年では、小規模ながらダイナミックな独立プロダクションの出現により、ラジオの生放送も強化されている。そうした会社はBBCや商業ラジオ向けにコンテンツを制作し、ポッドキャストやその他のオーディオ・プラットフォームに於ける英国のオーディオ・コンテンツの存在感を高めている。

1.5.未来への展望

英国経済に対するクリエイティブ産業の貢献度は、過去10年間で大幅に増加した。数字を見ると、2010年から2019年の間に50%近くも増えている。また、雇用者数も2011年以降3分の1以上増加している。我々は、この傾向が続き、クリエイティブ経済の重要な柱を形成する国際的に有名な放送部門が、更に力をつけていく事を望んでいる。
この強さは、「成長計画」でも認識されており、クリエイティブ産業は、パンデミック後に国の成長を牽引する4つの重要なセクターの1つとして位置づけられている。セクタービジョンの策定を通じて、我々は2030年までのこの分野に対する政府と業界の共同ビジョンを形とする。この戦略により、クリエイティブ産業のあらゆる部分が、世界貿易と投資機会の最大化、ネットゼロ目標の達成、国の平準化において中心的な役割を果たし続けるのが可能となる。
ラジオとテレビは依然として強力で、重要な公共的価値を提供する英国の価値あるメディアである。前述のとおり、人口の89%が毎週ラジオを聴いており、この数字は過去10年間、驚くほど一貫している。2022年3月のリニアテレビの総視聴時間は1日2時間33分で、視聴者は信頼出来るニュースや質の高いオリジナル番組を求めて引き続き公共放送を利用している。
この状況は、今後10年間もずっと続くと考えられる。最近の Digital Radio and Audio Review向けに作成された将来の聴取率予測によれば、少なくとも今後10~15年間は、ラジオが英国のメディアの中心的な役割を維持するとされている。また、英国の成人の約半数がオンライン・ビデオ・サービスをテレビや映画の主な視聴方法と考える一方、1730万世帯が依然として地上波デジタル・テレビにアンテナを通してアクセスし、840万世帯が衛星テレビに、390万世帯がケーブルテレビに契約するだろうとされている。
放送部門は大きな変化を経験し、この10年、そしてその先を見据えても、さらなる変化のスピードが止まる気配は無い。ビデオ・オン・デマンドサービスの総契約数は2020年下半期に3100万に達し、前年比54%増となった。また、これらのサービスの利用者の42%が、5年後に放送されるテレビを全く見ないと想像出来ると答えている。その数は、18~34歳ではほぼ半分(46%)だ。
これらの傾向は明らかであり、覆る事は無かろう。一方で課題を生み出すと同時に、視聴者やリスナーに新しいサービスを提供する機会も生む。視聴者を維持するだけでなく、世界中の新しい視聴者を惹きつけるのが可能となるのである。
本白書に示された提案は、英国の放送局がこうした課題に対応するのを支援し、公共放送を中心にした混合生態系の継続的な成功を確保するものである。

第2章:公営放送局が繁栄を続けられるようにするために

英国には6つの公共放送局があるが、いずれも運営面でも編集面でも政府から独立している。うち3社は公営である。BBC、チャンネル4、ウェールズ語放送局S4Cは、規模、任務、資金調達モデルが異なっている。民間の公共放送であるITV、STV、チャンネル5については、第3章で説明する。
我々は、こうした放送局全てが、英国中の人々が愛し、信頼し、学ぶ事の出来る高品質のオリジナルコンテンツを作り続ける事を望んでいる。同時に、そのコンテンツを視聴者に届けるための開発の最前線にいる事も望んでいる。だが、それを確実に達成する上で、公営放送局には幾つかの具体的な変化が必要である。
BBCは偉大な国家的組織である。過去100年に渡り、英国のほぼ全ての人々の生活に密着し、我々の文化遺産に独自の貢献をしてきた。また、世界的にも敬意を払われており、毎週、世界中の何億人もの人々に視聴されている。このような組織は、世界でも他に存在しない。
BBCはまた、英国全体の創造的経済を支える重要な役割を担っており、その支出や幅広い活動を通じて、英国のそれぞれの地域全体に大きな経済的貢献をしている。BBCの直接的な経済活動は1ポンドにつき2.63ポンドの経済効果がある。その経済効果の約半分はロンドン以外の地域にもたらされる。また、独特の公共サービス・コンテンツの委託や、英国国内のコミュニティからの才能やスキルの開発などを通じて、幅広い公共サービス放送エコシステムに於ける重要な役割を担っているのである。
BBCは1922年以来、英国の視聴者を楽しませ、さらに何百万人もの視聴者に世界的にサービスを提供してきた。100周年記念の年に、政府は過去の成功を祝うだけでなく、将来を見据え、今後数十年のBBCの将来を確保するべく更なる改革に着手する適切な機会としたいとしている。BBCは、英国全土の視聴者に奉仕する現代の放送の課題に対応出来るような、将来を見据えた存在でなければならない。事務局長が就任後の最初のスピーチで述べたように、BBCは受信料支払者に「より良い価値」を提供する「よりシンプルでスリムな組織」でなければならない。また、公平性と集団思考をめぐる問題に取り組む必要があり、そのためには10項目の公平性と編集基準に関する行動計画を実質的かつ迅速に進展させる必要がある。政府の改革ロードマップでは、来るべき中期憲章見直しと来るべき資金調達モデル見直しが、次の憲章見直しに向けた重要な節目とされている。このアジェンダによって、BBCは今後数十年に渡って繁栄し続け、世界の光となる事が出来るのである。
チャンネル・フォー・テレビジョン・コーポレーションは1982年に放送を開始した。独立採算制の公社であり、公営でありながら収入の殆どを広告料から得ている。チャンネル4は、我が国の公共放送システムの不可欠な一部だ。英国のクリエィティブ・エコノミーに貢献し、楽しく、大胆で、挑発的な番組を制作し、幅広い層の視聴者に楽しんでもらっている。一方、現在のオーナーシップと運営モデルの下では、変化するメディア状況の課題に対応する能力に独特の制約を生じさせている。同社の借入金は公共部門の借入金として計上され、公共部門の純債務に照らして評価される。出版社・放送局という立場から、制作から大きな収益を得られず、チャンネル4が独自のコンテンツを制作する事はほぼ不可能であり、二次的著作権の販売による収益も制限されている。チャンネル4が活動している環境は、今も大きく変化し続けているが、こうした制約は、チャンネル4が成長し、成功する能力を阻害している。公的所有の中でこうした制約を緩和するのは、公的部門の純債務の増加に繋がり、チャンネル4が追加債務を返済出来ないか、財務状況が悪化した場合、政府、ひいては納税者のリスクとなる可能性がある。故に、メディアを取り巻く環境の変化の速度と、その中でのチャンネル4の際立った地位を守る事の重要性を考慮し、政府はチャンネル4の将来の持続可能性を確保するための最良の所有権と運営モデルについて諮問を行った。そのコンサルテーションに対する政府の回答は2.4節で述べられている。
英国には、英国の地域言語や少数言語の視聴者にサービスを提供する放送局も数多く存在する。1982年に放送を開始したS4Cは、ウェールズの視聴者に向けて、伝統的なプラットフォームとデジタルプラットフォームでウェールズ語による幅広いコンテンツを提供し、ウェールズ語の普及に重要な役割を果たしている。MG ALBA は英国のゲール語メディアサービスで、ゲール語による幅広く多様で質の高い番組の提供を、スコットランドの人々が確実に利用可能にする事を任務としている。BBCとの提携によるBBC ALBAの提供など、スコットランドおよび英国全体のゲール語話者の生活と福祉に非常に貴重な貢献をしているのである。
政府は、公営放送局の継続的な成功と持続可能性を確保する上で重要な役割を担っている。公営放送局が英国生活に大きく貢献していると認識しつつ、今後も繁栄させ続けるには変化が必要かもしれないという事実を留意している。本章では、この変化に対する政府の提案を示す。
2.1.受信料決済とBBC改革
BBCの財源はライセンス料である。ライセンス料は1923年に無線免許料として導入された。これが1946年にテレビとラジオの受信料となり、1つのチャンネルで2ポンドの料金となった。以来、1964年のカラーテレビの追加から2016年のiPlayerのループ・ホールの閉鎖まで、BBCの出力とライセンス料は大きく進化してきた。
1月17日、政府は現在の認可期間終了までのライセンス料調停を発表した。テレビライセンス料は2年間は159ポンドに据え置き、その後2024年4月からインフレ率に応じて上昇する。政府は、この調停により、BBCがその使命と公共目的を効果的に果たす上で必要な資金が得られると同時に、厳しい時代を過ごす家庭を確実に支援出来るものと考えている。
ライセンス料の調停は、BBCに残りの認可期間中の資金調達について確実性を与える。将来に向けて、政府はBBCが今後6年間で改革に取り組む事も望んでいる。それには、BBCの使命と視聴者の信頼を維持するために不可欠な公平性を改善する措置が含まれる。その意味で、我々は2021年10月に発表されたBBCの「10ポイントの公平性と編集基準のアクションプラン」を歓迎し、BBCの番組とコンテンツが公正、正確、不偏で、英国国民を反映する事を保証し、それによって基準を高めるのを目標としている。これと並行して、BBCのガバナンスと文化に関するセロータ・レビューの調査結果を全面的に採用した。行動計画は良いスタートであるが、変化が必要であり、それを実現する事が必要である。
BBCの幅広い改革課題に対する政府の支持を示すべく、我々は最近、政府とBBCの間の枠組み合意を更新し、BBCの新しい改革公約を含める事や、枠組み合意が認可の残りの期間中にBBCが果たす新しい義務と責任を正確に反映するようにする事に合意した。これらの更新は間もなく発表される予定だ。
2.2.BBC憲章の中期的な見直し
BBCの改革に向けたロードマップの次の段階は、中期的な憲章の見直しである。これは現行の憲章によって設けられたもので、BBCが正しい方向に向かっているかどうかを政府が検討する上で重要な手段である。
この見直しは2024年までに提言され、2025年に開始される予定の憲章見直しのプロセスに反映される事になっている。既に作業が開始されている。見直にしはBBCのライセンス料と資金調達の問題には目を向けないが、現在の統治と規制の仕組みが効果的に機能しているか、更なる改革が必要かを検討する事になる。
我々は、レビューの範囲と付託事項を決定するために、BBC、Ofcomおよび権限を委譲された政府と協議している。政府は、BBCのガバナンスと規制の仕組みが、より公平で、苦情の処理を含む編集基準に対する説明責任を果たし、BBCが設立された目的の視聴者の幅を代表するという我々の大望を達成するのに有効かどうかに関心を持っている。これは、BBCがどれだけうまくいっているかという事だけでなく、OfcomがBBCに責任を負わせる枠組みの有効性についても見ていきたいと考えている。その際、BBCの将来の規制に関するOfcomのレビューの結果を検討する。
詳細については、今後数ヶ月中に明らかにする予定である。
2.3.BBCの資金調達の見直し
BBC改革のロードマップを更に進めるには、BBCの資金調達モデルの将来について検討する必要がある。政府は2015〜16年にライセンス料モデルを前回見直した際、ライセンス料には幾つかの欠点があると認識したが、この認可期間中のBBCの資金調達モデルとして最も適切であるとの結論に達した。
一方で、放送業界は急速に変化し続けている。第1章で詳しく述べたように、テクノロジーは、視聴者がコンテンツにアクセスし、視聴する方法、時間、場所に革命をもたらした。テレビ免許を必要とする生放送やその他の活動を見る事を選択する人が少なくなったため、テレビ免許を持たない世帯が増加している。
この傾向が予測通り推移するとなれば、受信料の持続可能性には明らかに課題が出てくる。例えば、テレビ免許を必要とする世帯が減少し、BBCの現在の資金レベルを維持する事が望まれる場合、テレビでの視聴を引き続き必要とする世帯向けに、ライセンス料の価格を大幅に引き上げる必要がある可能性がある。
政府はまた、ライセンス料が刑事罰によって強制されるのを懸念している。現代の公共放送システムにおいてますます不釣り合いかつ不公正なものとなっていると考えている。特に、75歳以上のテレビ免許無料化の終了に伴い、弱者である高齢者に対して免許料徴収の措置がとられる可能性がある事について懸念している。また、2019年にテレビ受信料逃れで有罪判決を受けた人の74%が女性であり、女性に対する制裁の割合に現在も格差がある事を不公平と捉えている。
近年、複数の国が同様の課題に対応し、公共放送の資金調達モデルを変更している。我々はその経験を生かす事が出来るだろう。同時に、BBCは世界でもユニークな機関である。故に、BBCが英国全体に奉仕し続ける上で、その持続可能性に最も適した独自のアプローチを特定する事が必要であろう。
政府はBBCが成功し続けるのを望んでおり、そのために現在の認可期間の終了時に導入されるべき最も公平で適切な資金調達メカニズムを検討する必要がある。我々はBBCが魅力的な番組を制作し、繁栄するクリエイティブ産業に貢献し、英国全土で何千もの雇用を支えるという重要な役割を果たし続ける事を望んでいる。また、BBCがワールドサービスを通じて、世界の視聴者に質の高い公平なニュースを提供し続けるのを望む。ワールドサービスは現在、ライセンス料と一般税で一部賄われている。更に、我々は、すべての公的資金をライセンス料収入から得ているS4Cが、持続可能で予測可能なレベルの資金を受け続ける事を保証したいのである。
そのため政府は、次の認可期間に先立ち、受信料財源モデルの見直しを行う予定であり、今後数ヶ月中にその見直しに関するより詳細な計画を打ち出す予定である。
政府はまた、BBCが収入源を多様化し、より商業的に成功し、ライセンス料への依存度を下げる支援も続ける予定である。政府は最近、BBCの商業借入限度額を3億5000万ポンドから7億5000万ポンドに引き上げるのに合意した。それによって、適切な監督メカニズムの合意を待って、BBCが資本にアクセスし、野心的な成長計画に投資出来るよう支援する。
2.4.チャンネル4の持続可能な未来
チャンネル4は、我が国の公共放送制度に不可欠な存在である。英国のクリエイティブ・エコノミーに貢献し、楽しく、大胆で、挑発的な番組を制作し、幅広い層の視聴者に楽しんでもらっている。
チャンネル4は、その設立目的である、視聴者に幅広い選択肢を提供し、英国の制作部門を支援する、という点において、素晴らしい仕事をしてきた。40年経った今、英国の独立プロダクションは活況を呈し、チャンネル4への委託はますます少なくなっている。スマートTVやストリーミング・スティック、キャッチアップやオンデマンドの世界では、もはや選択肢は問題ではないのだ。
チャンネル4は商業的に成功したコンテンツを提供し、特に若い貴重な視聴者にアピールしており、その独特のブランドを支えている。一方、事業を展開する市場は現在根本的に変化し続けている。故に、現在の財務状況とその短期的な見通しのみに焦点を当てるのは不可能である。過去の実績は将来の持続可能性を保証しない。我々は、より長期的な展望にも注意を払い、将来の成功に向けてどのような手段が必要であるかを検討しなければならない。
他の公共放送局と同様、チャンネル4は、より大きな支出力を持つ新しいグローバルなビデオ・オン・デマンド・プロバイダーとの、視聴者、番組、人材に関する競争の激化に直面している。視聴者は、ビデオ・オン・デマンド・サービスのような非在来型プラットフォームでコンテンツを消費する傾向が強まるばかりだ。1日の視聴時間全体は増加しており、2017年の4時間49分から2020年には5時間40分に増加する一方で、視聴全体に占めるリニアテレビの割合は2017年の74%(3時間33分)から2020年には61%(3時間27分)に減少した。一方、定額制ビデオ・オン・デマンドサービスの動画全体に占める割合は、2017年の6%(18分)から2020年の19%(1時間5分)へと増えた。また、テレビ広告市場は大きく変化しており、2020年にチャンネル4の収益の74%を占めていた既存テレビ広告支出は、この10年で大幅に減少し、デジタルに取って代わられている。既存テレビ広告の収益は、2015年から2020年の間に全体で31%減少した。我々は、チャンネル4が事業を行っている状況の変化について、この白書と一緒に出された意思決定の根拠と販売影響分析でより詳しく述べている。
政府の見解では、チャンネル4の公有モデルは、この変化する放送市場の課題と機会に長期的に対応する能力を制約している。故に、我々は公共放送としてのチャンネル4の将来の成功と持続可能性を確保する上で最善の方法は何かを協議した。我々の結論は、今こそ政府がチャンネル4の所有権の変更を追求する適切な時期であるという事である。我々は、チャンネル4が英国のより広い公共放送の生態系の一部として、今後何年にもわたって繁栄し、その影響力を拡大し続ける事が出来るようにする必要がある。
我々は今、特殊な転換期を迎えている。チャンネル4はその本来の使命を果たし、今や長期的な視野に立つ事が政府の責務となっている。急速に変化するメディアの世界で成功するために必要なコンテンツとテクノロジーへの投資は、納税者に関連するリスクの負担を求めるのではなく、民間資本に支えられた民間所有の下でより大規模に、より速いペースで行われると我々は信じている。チャンネル4の特徴を失う事無く、より大きく、より良いものにする機会を得た。チャンネル4は、ITV、STV、チャンネル5など、既に民営化されている他の成功した公共放送局と同様、公共放送であり、今後もそうあり続けるだろう。チャンネル4の所有権の変更は、この文書の他の箇所で述べたように、全ての公共放送を将来も支援する上での政府の広範な放送改革の一環をなすものである。
チャンネル4自身が、成長を望み、また、成長する必要があると表明している。我々はその野心を歓迎するが、達成するにはより多く、より速く、投資と革新をする必要がある。他のすべての公共放送と同様、チャンネル4は独自のコンテンツを生成し、所有出来るようになる必要がある。資本へのアクセスが拡大し、独自のコンテンツを制作・販売出来るようになれば、チャンネル4はその潜在能力を加速し、発揮するための最良のツールを手に入れる事が可能となろう。
それにより、英国全土に住み、働く人々によって作られた、より素晴らしい番組の制作が可能となる。チャンネル4のコンテンツをより簡単に、より速く、より魅力的にするための技術に更なる投資が可能となるのだ。チャンネル4は、ビジネスモデルと戦略の次の進化という観点から真に大きく考えられるようになるし、世界のテレビ市場における「次の何か」を定義する上で先導的な役割を果せるようになるのだ。
これは、政府が軽々に下した決定では無い。我々のコンサルテーションには、4万411件のキャンペーン回答、1万5727件の個人回答、155の団体、キャンペーングループ、セクターのステークホルダーからの回答を含む5万6293件の回答があった。この問題に対する強い思いがある事は明らかである。政府は、コンサルテーション回答を考慮し、所有権変更以外の選択肢を幅広く検討した。受け取ったコンサルテーション回答の要約、我々の回答、決定根拠と売却の影響分析が、この文書と一緒に公表されている。
相当数のコンサルテーション回答が、現在のテレビ放送市場には公的所有の下での持続可能なチャンネル4にとって障壁となる課題がある事に同意していないと、我々は認識している。しかし、上記のように、我々はチャンネル4の長期的な展望に注意を払い、チャンネル4が将来の成功のために利用出来る最良の手段を確保しなければならない。我々は、所有者の変更がこれを提供すると信じている。
パブリッシャーとブロードキャスターの制限(チャンネル4が独自のコンテンツを制作するのを事実上禁止している)を取り除く事によって、独立プロダクション部門に影響を与えるのではないかとする懸念を、我々は認める。しかし、我々は、このセクターが成功し続けるためには、この制限を維持する事が必要であると主張する人々には同意しない。独立プロダクション部門の収入は、1995年の5億ポンドから2020年には29億ポンドに成長している。一方、公共放送の委託料が部門の収入に占める割合は、2010年の58%から 2020年には41%に減少したが、これは国際委託料の収入の増加が主な原因だ。2020年の部門収入29億ポンドのうち、公共放送は12億ポンドを占め、チャンネル4は外部委託に2億1000万ポンドを費やし、自社制作スタジオを持つBBC(5億800万ポンド)やITV(3億5600万ポンド)よりも少ない。故に、チャンネル4は依然として重要な役割を担っているが、この部門は他からの委託への依存が高まっており、チャンネル4に対するパブリッシャーや放送局の制限がなくても、繁栄を続けられる。政府は、チャンネル4が収益源のコンテンツを多様化し、事業の回復力を高められるように、この制限を撤廃する。チャンネル4は、他の公共放送局に課された割当量と同様に、独立したプロデューサーに番組の最低量を委託する事が義務付けられ、このセクターへの継続的な貢献が保証される。
また、この変更により、中小のプロデューサーの一次委託からの収入が減少するとの議論も出ている。チャンネル4は、英国中の独立系プロデューサーと素晴らしい関係を築いており、これを変える理由は何も無い。こうしたクリエイターとの仕事が今の成功をもたらしたのであり、そのビジネスモデルの一部は、英国中の視聴者に語りかけるリスクの高いコンテンツを制作する事である。そのため、新しいオーナーは、独自のコンテンツを制作・販売するようになっても、こうした関係を拡大・発展させたいと考えているものと推察される。独立プロダクション部門に対する政府の継続的な支援は、全ての公共放送に適用される「取引条件」体制と関連する独立プロダクションの割当を保護し、更新する事により保証されるであろう。これについては、第4章でさらに検討する。
また、政府はチャンネル4の平準化に対するコミットメントと、国や地域の経済に対する支援も認識している。地域制作と英国外での制作という点では、チャンネル4の既存の義務は維持される。我々は、チャンネル4がロンドン以外のネットワークにアクセスし、英国中の多様な視聴者に語りかける能力を持つのは、潜在的な買い手が育成し、発展させようとする魅力的な資産であると期待している。実際、売却によって、ロンドン以外の地域での放送局の影響力を高めるプロセスが加速されない理由はない筈だ。
政府は、英国の映画部門におけるチャンネル4の投資の重要性と継続的な影響を認識している。Film4は、多くの潜在的な買い手によって資産と見なされている、オスカー受賞の成功した映画を提供する独特のブランドと実績を持っている。
政府は、私的所有が公共の利益を損なうものであるとは考えていない。二者択一では無く、適切なオーナーはより多くの投資を行い、公共財を提供するチャンネル4の役割を支援する事となろう。民間の所有者がチャンネル4の活動内容や公共放送の中での位置づけを根本的に変えてしまうのではないかと懸念する人もいる。特定の買い手によって将来の義務がどのように運用されるかを正確に予測するのは不可能だが、我々は買い手が、チャンネル4のブランドと結びついているように、現在と同様の成果を引き続き提供する決定を下す事に価値を見出して欲しいと期待するものである。
チャンネル4にふさわしい所有者は、この事業に対する我々の野心と、この事業を特別なものにしているものに対する我々の信念を共有する者であろう。政府は新オーナーに対して、チャンネル4が今後何年もスクリーンにその独特の声を残しながら適応し、成長出来るようにする一方、チャンネル4が現在持っているものと同様の継続的なコミットメント遵守を要求する事になる。これには、社会の幅を代表する個性的、教育的、革新的、実験的な番組を提供するという使命の維持が含まれる。また、ニュースと時事問題の提供、オリジナル
番組の放映、ロンドン以外と英国全土での番組制作の継続など、同等の義務も負う。特に、新しい所有者の下でのチャンネル4には、英国全土の独立プロダクションとの協力関係を継続する事が期待される。我々はチャンネル4が果たす独特の役割を変えようとしているのでは無く、出現しつつある市場環境の中で成功するための最良のツール群を積極的に与えているのだ。
所有者の変更によって促進される新たな機会と投資は,創造的経済に対する政府の継続的な支援(第4章で詳しく議論)を補完するものである.政府はチャンネル4の売却益の一部をクリエイティブ・エコノミーのための新たな配当金として活用する事を検討している。また,政府は,次回の歳出見直しの際に,創造的産業への資金提供について検討する予定だ。
2.5.地域・少数言語放送
地域および少数言語による放送は、英国の放送エコロジーにおいて重要な役割を担っている。話者にとって身近な言語でコンテンツにアクセスする機会を提供するだけでなく、英国全体のコミュニティにとって文化表現の手段にもなっているのである。
政府は、地域言語や少数言語放送へのコミットメントを示す強力な記録を持っている。例えば、政府は現行のBBC憲章のもとで、BBCの一般的な義務の一部として地域および少数言語に対する義務を組み込み、続いて現行の枠組み協定のなかで更なる一連の責任を課している。
我々には今、更なる前進が可能だ。第3章で述べたテレビの公共サービスに関する権限の変更の一環として、テレビの新しい公共サービスに関する権限にこれを含める事により、英国固有の地域言語および少数民族の言語で放送される番組の重要性を初めて法律で明確化する。
政府は、S4Cが変化するメディア環境に適応し、英国における独立した現代の公共サービス放送局としての存在感を維持できるよう、引き続き支援すると約束する。
1月17日に政府が発表したように、S4Cは今後6年間、強力なライセンス料の支払いを受けている。これは最初の2年間は年間8880万ポンドを提供し、その後はインフレに合わせて上昇する。これには、S4Cのデジタル展開を支援するための年間750万ポンドが新たに含まれており、S4Cの番組がデジタル時代においても持続可能である事を保証している。S4Cは、ウェールズの視聴者に向けて伝統的なプラットフォームとデジタルプラットフォームで幅広いコンテンツをウェールズ語で提供する事で、ウェールズの人々にとって不可欠な存在である。この調停により、S4Cはウェールズの経済、文化、社会を引き続き支援し、若い視聴者を含むより多くのウェールズ語話者、および2050年までにウェールズ語話者100万人の野心を支援するという英国政府の公約に到達可能だと述べている。
この調停を叩き台に、第3章で述べたより広範な改革に沿って、我々はS4Cの公共サービスの権限をデジタルとオンラインサービスを含むように更新し、現在の地理的な放送制限を撤廃する予定である。これらの変更により、S4Cはリーチを広げ、英国内外の様々な新しいプラットフォームでコンテンツの提供が可能になる。S4Cは、投資と商業収入を得る能力をより明確にし、2017年のS4Cの独立レビュー「未来に向けたS4Cの構築」を受けて実施された新しい独立運営陣と監査の取り決めは、更新された法律に反映される予定である。
また、S4CとBBCが、BBCがS4Cに特定の時間数のテレビ番組を提供する事を義務付ける現在のやや硬直的な枠組みから脱却し、進化する放送の状況や人々のコンテンツへのアクセス方法の変化に適した別の取り決めに共同で合意できるよう、法整備を行っていく。
政府は、MG ALBAがBBCとのユニークなパートナーシップによるBBC ALBAの提供などを通じ、スコットランドおよび英国内のゲール語話者の生活や福利厚生に非常に貴重な貢献をしていると認識している。このようなパートナーシップにより、ゲール語文化が今後も保護されるよう、高品質で多様なゲール語コンテンツが容易に利用できるようにしなければならない。また、MG ALBAがゲール語話者のために提供出来るようにする上で、将来の資金調達の確実性が重要であると認識している。
政府は、北アイルランドの視聴者に質の高いコンテンツを提供し、北アイルランドの独立プロダクションを支援するべく、アイルランド語放送基金とアルスター語・スコットランド語放送基金にも資金を提供している。2020年の「新しい10年・新しいアプローチ」という政治合意に於けるコミットメントを受け、政府はこれらの目標をさらに支援するため、200万ポンドの追加資金を提供した。
また、2012年以来、北アイルランドにRTÉとTG4のサービスを提供している北アイルランド地上デジタルテレビ放送マルチプレックスへの資金提供など、アイルランド島の国境を越えた放送を支援する長期的なコミットメントを引き続き支持するものである。この他、地域や少数民族の言語サービスの重要性を確保するための範囲も検討する。

第3章:新時代の公共放送のあり方


英国のテレビ向け公共サービス放送は、他国の追随を許さないシステムである。視聴者はボタン一つで、定番番組から最先端のドラマやドキュメンタリーまで、何千時間もの質の高いローカル制作の番組にアクセスする事が可能だ。これは、公共放送局(PSB)が視聴者にコンテンツを提供する際に、しばしば世界をリードしてきた事に助けられてきた。BBCは2005年にiPlayerの展開を開始し、チャンネル4はネットフリックスがまだDVDレンタル事業者だった2006年に、4OD(All4の前身)の完全立ち上げを行った。英国のコンテンツは国中の視聴者に愛され、世界中から羨望を集めている。そして、政府は今後もそうであり続ける事を望んでいる。
英国の視聴者は何百ものテレビチャンネルにアクセス出来る。公共サービスチャンネルはそのごく一部に過ぎない。主な公共サービスチャンネルは、BBCワン、BBCツー、チャンネル3(現在は地域によってITV1またはSTV)、チャンネル4、S4C、チャンネル5である。
こうしたチャンネルは、公共放送局(PSB)であるBBC、ITV、STV、チャンネル4、S4C、チャンネル5によって運営されている。PSBとしての地位によ り、いずれの放送局にも、例えば、一定量のニュースや時事番組を放送するなどの追加的な義務がある。しかし、電子番組表で目立つように表示される権利などの便益も得ている(3.2節参照)。このような交換はPSBの「コンパクト」と呼ばれる事もある。
他の多くの国とは異なり、英国は複数のPSBを持つ事により利益を得ている。第2章に示したように、公営もあれば民営もあるが、いずれもシステム全体の成功に責任を負っている。そして、その結果、PSBは活気ある放送部門の中心に位置している(第4章参照)。
本章では、公共放送に関する政府の戦略的レビューの結論と、最も重要なものを保護するために我々がとっている当面の措置を示したい。
一方、最後にシステムが大幅に更新されたのは、テレビ放送がまだアナログ中心であった2003年だった。つまり、ビデオオンデマンドサービスやグローバルストリーミングサービスが登場する前である。言い換えるなら、今後10 年、更にその先も、視聴者にサービスを提供し続けたいのであれば、第1章で取り上げたテレビ放送の最新動向と発展という文脈で、システム更新が不可欠である。
これは、本レビューの2つめの包括的な問い、すなわち、現代の公共放送システムの目的は何かという問いかけに繋がる。その答えは簡単だ。視聴者が幅広い公共放送のコンテンツに無料でアクセスし続けるのを保証する事である。
この新しい任務の文脈で、我々は公共サービスコンテンツが以下のような多くの形態となるのを認識する。
●今日の英国とそれを定義する価値観を反映する、文化的に適切なコンテンツ。
●独立したプロデューサーによって、英国全土で制作された経済的に重要なコンテンツ
●信頼出来る公平なニュースや時事問題など、民主主義に影響を与えるコンテンツ
これらの質問に対する答えが得られたら、我々は公共放送が貢献しなければならない14の重複する「目的」と「目標」という時代遅れのセットを、新しい、より短い権限に置き換える事に焦点を置きたい。つまり、公共放送が独自に提供可能な立場にあり、提供しなければ文化的、経済的、民主的に国家としてより貧しくなるものに焦点を当てるものとする。我々は、PSBがこの任務に貢献しなければならない事をより明確にし、その貢献の度合いについて説明責任を負うものである。
2003年以降に見られたテクノロジーの変化を考慮し、政府は公共放送がその使命を果たす方法についてより大きな柔軟性を与える一方で、介入が必要な場合に利用出来る効果的な権限を確保するための立法を行う予定である。これにより、公共放送は、より広範な無料放送プラットフォームでコンテンツを利用可能としていく。
英国と我々が共有する価値観を反映した、より文化的に関連性の高いコンテンツが、上記のように新たな任務の一部を構成する事を保証する一方、この英国らしいコンテンツの重要性を既存の割当制度に直接埋め込む協議をする予定だ。我々が執る如何なる法的アプローチも、適切かつ英国の視聴者のためにのみ制作されうるコンテンツの継続的な制作を保証するという目的を達成する上で更なる検討を可能にするものである。
これには、バンガーからボグナー、ダンムリーからダンブレンまで、英国の様々な地域の生活と関心を反映する番組が含まれる事を明確にする。そして、英国の地域放送や少数言語放送を支援するための行動を起こす(第2章参照)。
政府はまた、公共放送は人々が見たいと思うコンテンツ、つまり英国だけでなく世界中で愛され、賞賛される番組を制作する必要がある事を引き続き認識している。これまでと同様、PSBはそれぞれ個別のチャンネル権限を持つ。これは、現在の高水準の番組品質が維持され、視聴者の好みに関係なく楽しめる幅広いコンテンツを制作し続けるのに貢献するものである。

3.1.新たなテレビの公共サービスの任務

政府の戦略的レビューでは、公共放送が現代のメディア時代に不可欠な存在であり続けるのか、もしそうなら、PSB制度は英国全体の経済、文化、民主生活にどのように貢献すべきなのかを検討してきた。
最初の質問に対しては、答えは「イエス」である。公共放送は、多様なバックグラウンドを持つ、英国のあらゆる地域の視聴者が利用可能で、高い評価を得ている幅の広い質の高いコンテンツと関わりを持ち続けているのだ。
一方、現在の「目立たせる」事に関する規制の枠組み、および提供されなければならないものと流さなければならないものをカバーする既存の規則は、PSBのオンデマンドサービスには適用されていない。競争の激化など第1章で述べたさまざまな要因により、PSBは世界的なプラットフォームでのプレゼンスを確保し、それらのプラットフォームで目立たせ続け、提供するサービスの公正な価値を確保する事が困難になりゆくばかりである。
時を追うに連れ、視聴者はオンラインでコンテンツを視聴するようになり、多くの場合、従来の配信プラットフォームを完全に回避している。こうした傾向が更に加速し、英国のPSBシステムの長期的な持続可能性に課題をもたらすものと推察される。PSBがオンライン上で十分な存在感を示せなければ、公共サービスのコンテンツが広く利用され、簡単に見つかるようにするという我々の長年のコミットメントも危険にさらされるだろう。

DCMS特別委員会が「公共放送の将来像」という報告書で明らかにしたように、従来のテレビプラットフォームと新しいプラットフォームとの間のこの格差に対処するための迅速な行動が必要である。2019年と2021年にOfcomが行った提言に基づき、我々はオンデマンドテレビのための新しいプロミネンス体制を導入する予定だ。これにより、公共サービスコンテンツが指定されたテレビプラットフォームで利用可能であり、かつ見つけやすくなることを保証する事になる。これには、STVとS4Cが制作する公共サービスコンテンツが英国の特定の地域で独自の関連性を持つことを適切に認識する事も含まれる。
我々は、原則に基づく新たな法的枠組みを立法化する事で、これを達成する。同時に、指定TVプラットフォーム(英国の相当数の視聴者がテレビコンテンツのオンデマンド視聴の主要手段として利用しているもの)のプロバイダーは、PSBの指定オンデマンドサービスを適切に目立たせるよう義務付けられる事となる。対象となるTVプラットフォーム・プロバイダーには、一般的なスマートTV、有料TV事業者、グローバルTVプラットフォーム・プロバイダーが含まれると予想される。この新体制はOfcomによって施行され、Ofcomは新枠組みに関するガイダンスを作成・維持することが義務付けられる。
オンデマンドサービスのための新しいプロミネンス制度は、過度の負担と消費者の選択と経験に悪影響を与える事無く、市場全体の違いと継続的な変化に適応できるよう、適切かつ柔軟なものとする。また、Ofcomは、情報収集の権限や、コンプライアンス違反があった場合に適切な罰則を課す権限など、必要な新しい執行権限を付与される予定だ。
この体制は、PSBプロバイダーが指定されたオンデマンドサービスをプラットフォームに「提供」するのを義務付け、プラットフォームがこれらのPSBオンデマンドサービスを「運ぶ」ことを義務付けることによって、関連するTVプラットフォームでのコンテンツの利用可能性を確保する新しい規則を組み入れる事となる。これは、以下のような法的目標に裏打ちされたものである。

  • PSBのオンデマンドサービスが、現実的に可能な限り多くの視聴者に視聴されることを確保する

  • PSBのオンデマンドサービスが関連するテレビプラットフォームで適切に目立つようにする

  • PSBオンデマンドサービスが、PSBの義務の持続的な提供に合致し、かつ消費者の選択やTVプラットフォームの革新能力に不当な制限を与えないような条件で利用可能になるようにする

また、Ofcomは、Small Screen, Big Debutのレビューでなされた勧告に沿って、紛争解決機能を付与される予定だ。Big Debateのレビューでなされた勧告に沿った措置ある。PSBとプラットフォームは常に相互に有益な商業的取り決めを追求すべきであるが、何らかの理由でそれが不可能な場合、規制当局が効果的な交渉を支援するために必要な介入権限を持たせる事が適切だ。
3.2.公共サービスコンテンツを見つけやすく、見やすくする
英国のPSB制度の重要な側面は、公共サービスコンテンツをできるだけ多くの視聴者が容易に入手可能にする事、そして見つけやすくする事だ。
これを可能にするべく、放送法は「目立たせる」枠組みを組み込んでおり、価値のある公共サービスコンテンツを見つけやすく、見やすくしている。現在、既存テレビの放送では、Ofcomが定めた規則により、電子番組ガイドからアクセスした際の指定チャンネルの位置(チャンネル番号)に影響を与える事で実現させている。現在の法的枠組みは、英国国民がテレビのスイッチを入れた場合に最初に目にする5つのチャンネルがPSBによって運営されている事を保証している。
この枠組みは、視聴者がお気に入りの番組を容易に発見できるという文化的・社会的に重要な便益をもたらすし、PSBにとっても商業的・経済的に重要な便益をもたらしている。PSBの卓越性は視聴率とエンゲージメントを高める事により重要な役割を果たしている。それはPSBの広告収入とブランド価値にとって重要だ。これにより、質の高いオリジナル番組の継続的提供が可能となる。故に、これは前述のPSBコンパクトの重要な部分を形成しているのである。
また、PSBが放送テレビ局にチャンネルを「提供」し、放送テレビ局がそれを「放送」する事を義務づける規則も別に存在する。これらの規則を総合すると、Freeviewプラットフォームや、スカイやバージンなどの現行の衛星放送やケーブル放送は、それぞれのプラットフォームでPSBチャンネルを視聴可能にしなければならない事となる。
3.3.国民的関心の高いイベント
上記のとおり、視聴者が文化的に関連性のあるコンテンツに容易にアクセス可能とする事が重要である。これにはFIFAワールドカップやウィンブルドンテニスの決勝戦など、国民的関心を呼ぶ特定のスポーツイベントも含まれる。政府は、こうしたイベントをできるだけ多くの視聴者が楽しめるよう、可能な限り無料放送でテレビを放映すべきであると考えている。

「候補となったイベント」制度は、Ofcomの事前の同意抜きで独占的な権利の放送を禁止する事により機能している。現在のリストは2つのカテゴリー(グループAとグループB)に分かれており、権利者がイベントを利用可能にする場合、グループAのイベントについては完全なライブ中継をまず無料放送チャンネルに提供し、グループBのイベントは、二次中継またはハイライトを無料放送局に最初に提供し、購入するのを条件としながら、購読テレビでのライブ中継を行う事が出来る。ただし、権利者は権利の売却を強制される事は無いし、放送局も権利の取得を強制されない。

政府は、放送権の販売によりスポーツ団体が収入を得ることで、エリートや草の根レベルのスポーツへの投資が可能になると認識している。故に、法的枠組みとして、一般市民向けに無料放送のスポーツイベントを保持する一方で、権利保持者がそのスポーツの最善の利益のために契約を交渉するのを可能にするという適切なバランスをとる必要がある。我々は、現在の競技種目リストがこれを達成していると考えるものである。一方で、リストの多様性を向上させる上でもっと出来る事があるとも考えている。そのために、2020年にパラリンピックを追加したし、最近ではFIFA女子ワールドカップとUEFA女子ヨーロッパ選手権を追加している。

だが、現在の枠組みは、無料放送の競合相手が限られており、英国に特化している、異なるメディア状況の中で考案された。視聴者の消費習慣は急速に変化しており、放送局はグローバルなメディア・プラットフォームと放映権をめぐって競争することが求められている。そのため、現行の枠組みを近代化するために、少数の重要な改革が必要であると考えている。

公共放送が、英国的であり、自国の視聴者の興味を引くコンテンツを配信するという重要な役割を担っており、リスティング広告制度の対象となる現行のサービスはすべてPSBによって運営されていると認識し、リスティング広告制度の対象をPSB固有の利益とすることを検討する。

現在の法的枠組みは1996年に制定されたが、当時は英国の家庭の僅か4%がインターネットにアクセス出来たに過ぎなかった。そのため、オンデマンドを含むデジタル著作権は、現在ではスポーツ著作権の販売において重要な要素となっているが、リスティングイベント制度の対象とはなっていない。これは、現行制度の目的が今も達成されているのか、そして今後も達成され続けるのかという問題を提起している。例えば、五輪の100メートル決勝が深夜にBBCで生中継されたが、全てのストリーミングとキャッチアップの権利が別の放送局に売却され、課金制度に置かれたとしたら、文化的に重要なイベントが無料放送ベースでは多くの視聴者に提供されないかもしれない。

我々は、視聴習慣が変化し、技術が進化しても、規制の枠組みが目的に適ったものであり続けることを保証したいと思う。そのため、我々は、上場イベント制度の範囲を拡大して、デジタル著作権を含めるべきかどうかを検討するための見直しを行う予定である。
3.4.競争力のある資金調達
英国には活気ある放送産業があり、政府はこの産業をさらに発展させると確約している。そうするには、英国の全ての視聴者が、我が国の多様性を反映した幅広い質の高いコンテンツにアクセス可能としなければならない。また、テクノロジーや視聴習慣がかつてないスピードで変化する中で、世界に名だたる制作部門にイノベーションと成長の機会を提供しなければならない。
こうした大望を支援する上で、政府は、十分なサービスを受けていない公共サービスコンテンツを直接支援する新しい方法として「コンテスト型資金」を試験的に導入している。2019年以降、ヤングオーディエンス・コンテンツファンドとオーディオコンテンツファンドは、約4800万ポンドの公的資金を受け、これまでに220時間の子供向けテレビコンテンツと700時間以上のラジオ・コンテンツを支援した。

「コンテスト型資金」の3年間の試験フェーズは、2022年3月31日に終了した。我々はパイロット版の評価を行い、コンテスタブル・ファンド・モデルが(長期的には)英国で制作された質の高い公共サービス・コンテンツの幅と利用可能性に付加価値を与え、視聴者のニーズをより満たす事が可能かどうかを判断するに当たり、その教訓を詳細に検討する予定である。
3.5.チャンネル3および5のライセンス
英国の公共放送の提供規模と多様性は、英国をユニークにしている側面の一つである。その重要な要素が、個々のライセンシーに対する詳細な義務を定めたチャンネル3とチャンネル5の商業ライセンスだ。イングランド、ウェールズ、北アイルランド、チャンネル諸島、スコットランド南部のチャンネル3ライセンスはITV plcが、北部と中部スコットランドのライセンスはSTV plcが保有している。パラマウント・グローバル(旧ViacomCBS)が管理するチャンネル5Ltdがチャンネル5サービスを提供している。
こうした放送局は公共放送システムだけでなく、より広い放送エコロジーにおいて特別かつ重要な役割を果たしている。ITVは6000人以上の従業員を擁し、コンテンツに年間10億ポンド以上を支出している。大部分は、地域ニュースを含む英国オリジナルのコンテンツである。チャンネル5は2020年に放送賞と王立テレビ協会番組賞の両方で「チャンネル・オブ・ジ・イヤー」を受賞したし、子供向け番組ブロック「ミルクシェア!」は2019年に1950万人もの視聴があった。

チャンネル3とチャンネル5のライセンスは、いずれも2024年に失効する予定だ。2003年通信法の要請により、政府はチャンネル3とチャンネル5の免許更新の可能性に関連して、2022年6月にOfcomから報告書を受け取る予定である。我々は、今年後半にOfcomの報告書を検討するのを楽しみにしている。
3.6新規プロバイダーへのシステム開放

スカイ、ディスカバリー、BTなどの商業プロバイダーは、それ自体が公共放送では無いが、放送のエコロジーにおいて非常に貴重な役割を果たしている。特に、ニュースを含む幅広い質の高いコンテンツを委託・制作し、新技術や制作設備に投資している。

スカイは、PSB以外のテレビ局で最大のニュースサービス「スカイニュース」を運営しており、無料で視聴可能で、王立テレビ協会賞で5年連続「ニュースチャンネル・オブ・ザ・イヤー」に選ばれている。2020年現在、同社のスカイアート・チャンネルもフリービューとフリーサットで無料視聴が可能となっている。2019年、スカイは2024年までに英国オリジナルコンテンツへの投資を倍増する計画を発表し、エルストリーに新しいスタジオコンプレックスを建設中だ
。最初の5年間でクリエイティブ・エコノミーに30億ポンドを追加するとの試算がある。

ディスカバリーは、特に自然史やファクトリーといったジャンルの英国オリジナルコンテンツに大きな投資を行っている。世界的なストリーミング市場での競争に伴い、その投資額が増え続けている。BTスタジオはスポーツ番組の制作に使用され、英国の独立系制作会社が利用する事が可能だ。BTは、オンラインでの虐待や憎悪を対象とした「線を引け」キャンペーンなど、注目度の高い公益キャンペーンも数多く行っている。

政府は、様々なプロバイダーが高品質の英国オリジナル番組をテレビ向けに制作していると認識している。これには公共放送局も含まれる。一方、義務では無いのに、公共放送のようなコンテンツを何百時間も制作している広範な商業放送局も含まれる。特に、英国オリジナルのニュース、ドラマ、芸術番組がそうである。

Ofcomは最近の政府への提言で、公共放送を追加指定する制度を設け、新たな事業者に公共放送システムを開放することを勧めている。これにより、イノベーションを促進し、持続可能性を高められるとしている。

上記のように、政府は英国の公共放送制度について他にも多くの変更を進めており、さらなる改革を検討する前に、これらを定着させる意向である。しかしながら、我々は、PSBの枠組みを更新し、その長期的な持続可能性を確保するために、将来の改革のケースについて引き続き検討していく。
3.7.ローカルテレビ
2013年以降、英国では合計34のローカルテレビサービスが開始され、それぞれ特定の地域でローカルニュースやローカルコンテンツを配信している。
2013年以降のローカルテレビを取り巻く環境は、サービスがローカル広告を展開出来るという点で、厳しいものがあった。2018年のSTVを含む多くの初期ライセンス保持者は、コスト削減のためにこのセクターが事業とサービスを統合するのに伴い、権益を売却した。Ofcomは、全てのローカルテレビサービスが中核となるローカルニュースサービスを提供し続けるようにしつつ、局が提供しなければならないローカル制作時間数を削減する提案に同意し、このプロセスを支援した。また、ベルファスト、ブライトン、ロンドン、メイドストーン、ノッティンガム、シェフィールドのライセンシーは、単一の事業体としてローカルサービスを運営し、トレーニングやスキル、ローカルジャーナリズムに対する強い倫理観をもって、オーダーメイドのローカルサービスを提供し続ける事が可能になった。

当初、ローカルテレビの立ち上げには、BBCのライセンス料として最大4000万ポンドの資金が投入され、地方の地上デジタルテレビ(DTT)マルチプレックスの開発とニュースコンテンツのサポートにあてられた。BBCが運営するローカルテレビニュース提供のスキームは2020年に終了し、現在ローカルテレビは公的補助金を受け取っていないが、予備のDTTビデオストリームから得られる商業収入と、DTTや他のテレビプラットフォーム上で目立つ事で、大幅に削減されたDTT伝送コストの恩恵を受け続けている。

2021年9月、政府は国内のDTTマルチプレックスライセンス法への変更を発表した。この変更により、OfcomはBBCや他のPSB、その他の商業事業者に発行されたライセンスを2034年まで延長出来るようになった(新たな取消権により、2030年末までは発効できない)。

これを踏まえ、政府は地方テレビ局の免許制度を変更し、地方テレビ局のマルチプレックス免許を2034年まで延長し、全国DTTマルチプレックスに適用されるのと同じ条件(取消権を含む)を適用可能にする意向である。地方テレビ局のマルチプレックス免許更新の詳細な取り決めと更新条件については、2022年末までに協議する予定だ。同時に、個々のローカルテレビサービスの更新または再ライセンスのオプションについても協議する予定である。
3.8.コラボレーションの利点
第4章で詳しく述べたように、英国の放送部門は豊かで変化に富み、様々なアクターが存在する。政府は、このセクターの変化と統合によって、我が国の公共放送が、相互もしくは外部のパートナーとの間で、より多くのコラボレーションを追求する必要があるかどうかという、戦略的な問題を提起していると考えている。

ラジオプレイヤーは、ラジオをオンラインで簡単に聴けるようにするべく、2010年に設立された。BBCと商業ラジオ放送局による非営利ベンチャーである(現在の株主はBBC、グローバル、バウアー・メディア、ラジオセンター)。2014年からは他地域の放送局のコンソーシアムにも技術をライセンスし、14カ国とパートナーシップ契約を結んでいる。

近年、ラジオプレイヤーは、そのバックエンド技術を使って、放送局のメタデータを自動車に配信し、ハイブリッドラジオを駆動する活動を大幅に拡大させている。これにより、ドライバーはFM、DAB/DAB+、ストリーミングをシームレスに切り替えながら、よりリッチでビジュアルな体験出来るようになった。また、自動車メーカーが無償または有償で使用できるハイブリッドラジオアプリ(DAB、DAB+、FM、インターネット)をアンドロイド・オートモーティブで制作している。

このようなコラボレーションは、多くの事例が既に存在する。一例を挙げると、BBCとITVは、2007年にベンチャー企業のフリーサットを設立し、テレビの切り替えをサポートする無料衛星放送のプラットフォームとし、最近フリービューと合併して、BBC、ITV、チャンネル4、チャンネル5の共有プラットフォームにした。同様に、BBCと商業ラジオ放送局による非営利ベンチャーであるラジオプレイヤーは、その技術を他の地域の放送局のコンソーシアムにライセンスし、2014年以降、他の14カ国とパートナーシップ契約を結んでいる。チャンネル4とスカイのパートナーシップ、特にスポーツの権利の共有は、国を1つにする瞬間を生み出すのに役立っているのである。
断片化しつつも競争の激しい放送界、特に放送局が視聴率や収入面で互いに競争するだけでなく、他の種類のコンテンツやグローバルなプラットフォームとも競争するようになった状況では、こうした戦略的パートナーシップの重要性が一層高まっている。例えば、2009年に競争委員会(訳注:英国の公正取引委員会に相当)がプロジェクト・カンガルー(ITV、チャンネル4、BBCワールドワイドによるビデオ・オン・デマンドの合弁事業)を、英国の新興ストリーミング市場にとって脅威が大きすぎると判断して阻止したような過ちは繰り返したく無いのである。このため、国際的な競合他社に国内放送局を出し抜かれ、追いつかれる事となってしまった。

このセクターの持続可能性を支援するだけでなく、こうしたパートナーシップは視聴者にもメリットをもたらすだろうと政府は考えている。コンテンツを一箇所でより簡単に見つけられるようになったり、放送局が世界中の新しい多様な視聴者に到達するのを助けるための技術を提供したり出来るのは、その一例である。BBC憲章には、BBCが他の組織、特にクリエイティブ・エコノミーに於いて協力的に活動する事を求められており、このような行動をより広いPSBシステム全体でどのように奨励可能かを引き続き検討していく予定だ。コラボレーションは、視聴者が多様な声と視点から利益を得続ける事を保証するのにも役立つ。

第4章:活気ある放送エコロジー


クリエイティブ産業による英国経済への貢献度は、この10年間で著しく増加した。2010年から2019年の間に50%近くも増加していたのである。雇用された人の数も2011年から3分の1以上増えている。
この盛んで多様なエコシステムが、好循環を築いている。英国を投資先として非常に魅力的な場所にし、英国のクリエイターが視聴者に愛される高品質のオリジナル・コンテンツを制作できるようにしているのだ。このような傾向が続き、クリエイティブ経済の重要な柱を形成する国際的に有名な放送部門が、さらに力をつけていく事が望ましい。
この章では、この好循環を守り、放送部門が直面する課題と機会に対応可能にしていくよう、我々が執っている措置を紹介する。
4.1.プロダクション部門への支援
政府の行動と介入により、テレビ制作は組合のあらゆる部分で活況を呈している。第1章で述べたように、この成功は、国内の放送局による伝統的な投資と、国際的な投資を誘致する英国の成功の両方によって促進された。
テレビ番組制作の総収入は2004年から2020年の間に2倍以上になり、年間 10億ポンド以上が英国外からの対内投資によってもたらされている。新多々コロナの課題に直面しても、業界は記録に近いレベルの支出を達成した。2021年中の映画とハイエンドテレビ制作による支出の合計は56億4000万ポンドに達し、過去最高となった。パンデミック前の2019年より12億7000万ポンドも高い金額となったのである。
これを達成したのは業界や放送局だけでは無いのは勿論である。パンデミック時の政府の介入によって、制作の安全な継続が確保されたのである。これまでに1100以上のプロダクションが政府の「映画テレビ再出発スキーム」に申請している。29億ポンド以上の制作費はこのスキーム抜きでは不可能であり、9万5000人以上の雇用を支えてきた。映画・テレビ制作者を代表する業界団体PACTは、「政府の映画・テレビ制作再稼働制度は、このセクターに重要なビジネスサポートを提供し、制作の開始や再開を可能にし、人々の雇用を維持し、英国のスクリーンに新しいコンテンツを提供した」とし、この事を認めている。
この部門は真に世界をリードおり、その成功は、北アイルランドのLine of Duty、コーンウォールのPoldark、ヨークシャーのPeaky Blinders、スコットランドのOutlander、ウェールズのBrassicなど、国内のあらゆる場所で感じられる。政府は、その成功を保護し構築していくだろう。最高レベルのテレビ番組と映画制作の要件に差が無くなってきていると認識し、映画制作会社が制作中に映画減税とハイエンドテレビ減税を切り替えられるようにする措置を導入するなど、放送と映画を含む幅広いスクリーン制作部門が共に発展する事を支援する決意も固めている。
テレビ以外では、ポッドキャスト・コンテンツの需要が増え続けており、英国のオーディオ制作はラジオから多様化の道を歩んでいる。毎週約1000万人の成人がポッドキャストを聴いており,英国のポッドキャスト広告収入は、2024年までに倍増して年間7500万ポンドになると予想される。
第1章で述べたように,英国の独立系テレビ制作部門は過去10年間に急成長し、2010年から2019年の間に収益は50%以上増加した。英国の放送の将来の展望を形成するに当たって、国内外のコンテンツ制作者のために繁栄する制作ハブであり続ける事を我々は保証する。さて、英国の放送の将来の展望を形成するにあたり、我々は、英国が国内外のコンテンツ制作者のために繁栄する制作ハブであり続けられるのを保証する。これは、英国の「取引条件」 制度を保護すると同時に、技術や視聴者がPSBのコンテンツを視聴する方法の変化を反映させるために更新する事を意味する。また、この制度の一部を BBCの番組を制作するラジオやオーディオの制作者にまで拡大する必要があるかどうかも検討する予定である。
同時に、我々は、取引条件制度と、それに付随して運用される独立プロダクション向けの割り当ての利益が、こうした介入から最も恩恵を受けるであろう中小企業にもたらされる事を確実にしたい。この分野の目覚ましい成長は、いわゆる「スーパーインディーズ」の出現を促した。現状では独立系と分類されてはいるものの、しばしば彼らが仕事をする放送局よりも規模が大きくなっている。故に、我々は、「適格なインディペンデント」プロデューサーというステータスが、このセクターの成長を促進する効果的な手段であり続けるべく、収入上限を導入するかどうかを検討するレビューを開始する予定である。
また、英国が対内投資の誘致に成功しているのは、英国を世界一の制作目的地にしている、安定かつ寛大な税制、熟練した労働力、強力で成長する物理的インフラ、支援する制度と幅広いスクリーン・エコシステム、英国市民の創造性と活力などの特性がユニークに相互作用するためであると認識している。
英国首相が以前にも指摘したように、政府は、クリエイティブ・セクターの税制優遇措置を通じて、高度な技能と革新的なクリエイティブ産業を引き続き支援していく予定だ。例えば、ハイエンドテレビ税控除は、1ポンドにつき 6.44ポンドのリターンをもたらす。同時に、その税制優遇措置によって支援される制作物は、2017年の12億ポンドから、2021年には41億ポンドに増加している。
さらに、このような投資、特に大規模なプロダクションには適切なインフラが必要だと認識し、政府は英国映画委員会に2020年度から2022年度まで年間160万ポンドを追加して、英国全体でより多くのサウンドステージの開発を促進するための資金提供に踏み切った。この投資は、スクリーン・インフラに対する膨大な需要を満たし、あらゆる規模のプロダクションをサポートする上で、既に重要な役割を担っている。
テレビはグローバルな市場であり、我々は共に対内投資を呼び込み、英国のコンテンツが出来るだけ広く国際的な視聴者を見つけるのを助けたいと考えている。我々は、他の国々が同じ事をしており、英国を羨望の眼差しで見ているのを知っている。故に、我々の改革が上手くいくものを確実にサポートし、TVと映画制作のための主要な目的地としての英国の地位を守るために行動しなければならないのである。
こうした措置は、本文書に記載されている他のものと同様に、クリエイティブ産業のための我々のビジョンの一部を形成している。2022年夏に発表される予定のクリエイティブ産業セクタービジョンは、このセクターの長期的な戦略を定め、政府が掲げるレベリングアップ、グローバルブリテン、ネットゼロの目標を実現するものである。この戦略は、政府と産業界の提携の下で策定される予定だ。
4.2.英国の商業ラジオ部門への支援
ラジオ放送は100年以上にわたって英国のメディアの一部であり、現在も公共放送の礎となっている。近年、BBC、商業ラジオ部門(来年50周年を迎える)、コミュニティ・ラジオはいずれも、ラジオの並外れた回復力と国民に対する価値を示してきた。それは、人々がコミュニティ内の新型コロナの影響を知る事だったり、娯楽や発見のための無料放送源であったり、単に交友を提供する事でだったりする。

政府は英国のラジオを支援し、強化する事を望んでいる。我々はBBC、商業ラジオ、コミュニティラジオの間の協力を引き続き奨励し、育成する-最近ではデジタルラジオとオーディオのレビューを通じて実証されたように。政府はBBCと商業ラジオが最近発表したラジオプレーヤーへの新たな投資と継続的な支援を強く歓迎するものである。

商業ラジオの免許に関する現行の規則は、1990年と1996年の放送法の一部として、FM放送の選択肢を増やし、デジタルラジオサービスの開発を支援するために策定されたものである。一方、商業ラジオは英国のメディアの中で最も信頼されている部門であると同時に、最も規制の厳しい部門でもある。これは、約20年前に導入されたアナログ免許サービスに対する制限的な地域性要件の名残りである。

英国のラジオ聴取の64.4%がデジタル化され、規制無しで運営されているオンライン・オーディオ・プロバイダーからの新たな挑戦もあり、我々は商業ラジオの規制構造を最新のものにする必要があるとの見解を持っている。その事に変わりは無い。我々は、商業ラジオが現代にふさわしい、より柔軟な規制の枠組みの下で運営できるようにしたい。そのため、我々は議会の時間が許す限り、音楽フォーマットなどの時代遅れのサービス特性を削除する措置を導入し、ローカルラジオ番組の制作場所に関する現行の規則を改革する一方、デジタルプラットフォームにおけるローカルニュースの保護を可能にする措置を含む、重要なローカルニュースおよびローカル情報サービスに対する要件を強化する計画である。

政府は2017年に商業ラジオの規制緩和策をパッケージで諮問した。その後、2021年10月に発表された「デジタルラジオとオーディオのレビュー」では、テクノロジーとリスナーの行動の急速な変化が将来のラジオ聴取に与える潜在的な影響を評価し、ラジオとオーディオコンテンツへの投資とそれがリスナーに届く方法に、より焦点を当てる必要があるという明確な結論に達している。政府は、国会の時間が許す限り、ラジオ規制緩和に関する2017年の協議の結論を実現するための立法化を引き続き約束する。これには、Ofcomが初めて一部の海外ラジオサービス(特にアイルランド共和国を拠点とするもの)に免許を与えられるようにし、デジタル・文化・メディア・スポーツ相がOfcomが免許を与えられるサービスのリストに他の国を追加することなどが含まれる予定だ。
政府はまた、デジタルラジオとオーディオのレビューの主な結論である、少なくとも2030年までFMサービスの切り替えを行うべきではないという意見に同意している。しかし、デジタルラジオへの継続的な移行を促進するために、法律を更新する必要がある。そこで、我々は以下の計画を立てている。

  • 移行日が確定した場合、OfcomにFM免許を延長する権限を与え、移行日まで必要であればFMサービスを継続可能にする

  • 3つの独立系ラジオサービス(Classic FM、TalkSport、Absolute Radio)が、将来の切り替え前のある時点でAMまたはFMでの放送を停止し、アナログ免許をOfcomに返上することを決めた場合、D1全国DABマルチプレックスの保証容量を利用可能にする

  • ローカル・マルチプレックス・オペレーターが放送局のラインアップを変更する際にOfcomの同意を求めるという過酷な要件を撤廃する

4.3.コミュニティラジオの強化
コミュニティラジオ局は、小さな地理的な領域をカバーし、非営利ベースで実行されているのが一般的である。コミュニティ全体を対象とすることもあれば、特定の民族グループ、年齢層、利益団体など、関心のある様々な分野を対象とする場合もある。都市部や実験的な音楽を扱う局がある一方、若い人々や宗教団体、軍隊とその家族を対象とする局もある。
コミュニティラジオは2005年に正式に設立されて以来成長を続け、英国のラジオセクターの中で活気に満ちた、成熟した部分となりゆく一方である。現在、英国全土で300以上のコミュニティラジオ局が放送されており、政府が強力に推進している小規模DABの開発の成功に伴い、新しいデジタルサービスも計画されている。
このような成長は、政府のコミュニティラジオ基金による持続的な支援の奏功でもある。この基金はOfcomによって管理され、コミュニティラジオ局の発展を支援するための助成金を提供している。この基金は2020/21と2021/22の両年度に20万ポンドの目標引き上げを受け、Ofcomはこれまで以上に多くの局へ資金を割り当てる事が可能になった。
しかし、2005年に開設された最初のコミュニティ・ラジオ局の免許は2025年に失効する予定である[脚注1]。我々はコミュニティ・ラジオが既存の局がサービスを継続的に発展させ、新しいコミュニティ・ラジオ局がデジタルラジオで発展できるような体制を確保したいと思っている。
我々はコミュニティを基盤とした非営利の会社や慈善団体を通じてコミュニティラジオを提供するというモデルを維持したいが、一部のコミュニティラジオ局がコンテンツを完全に収益化することを妨げている広告収入に関する制限について再度検討していきたい。また、政府の広範なレベルアップの課題の一環として、Ofcomのデジタル認可プロセスなどを通じて、コミュニティ・ラジオ・サービスがより広く利用可能になるようにしたいと考えている。
したがって、我々は2023年初頭にコミュニティ・ラジオ・セクターを支援するための新たな提案について協議する予定であり、必要に応じて、コミュニティ・ラジオ・オーダー2004の修正を通じてライセンス要件の変更を行う予定である。
4.4部門へのアクセスと代表性の向上
放送局と広域メディアは、21世紀の英国の生活を反映する重要な責任を負っている。放送業界は、スクリーン内外でも、我々の住む国を代表し、あらゆる背景を持つ人々が貢献し、達成する機会を提供する事が重要である。より多様な労働力が、放送局が新しい視聴者を見つけ出す一方、より信頼性が高く、情報に基づいたコンテンツを作成するのに役立ち、直接的に利益をもたらす事も起きうる。
政府は放送部門の編集・運営上の独立性を認識しているが、放送部門全体における代表性と包括性の向上を確保したいと考えている。英国の放送は、より広いクリエイティブ産業と同様に、英国の全人口を代表するものであるべきだ。こうしたセクターへの参入や昇進には、特に代表権の低いグループや労働者階級出身の人々にとって、複数の隠れた障壁がある事が示されている証拠がある。クリエイティブ産業政策・証拠センターが行ったクリエイティブ・エコノミーに於ける社会移動に関する調査では、「特権的な背景を持つ人々がクリエイティブ産業に雇用される可能性は、労働者階級の人々よりも2倍高い」ことが明らかになっている。新型コロナはこの格差を悪化させ、「映画、テレビ、ビデオ、写真」において、労働者階級出身者の労働力の割合は、2019年と比較して2020年9月には最大で4%ポイント低下している。
2003年通信法の下、Ofcomは放送部門(テレビとラジオの両方)の雇用に関して機会均等を促進する義務を負っており、放送局に対して、多様性方針と労働力の構成に関する情報の提供を求める権限がある。Ofcomの放送の多様性に関する5年間のレビュー(2021年9月発表)では、より代表的な業界への全般的な傾向が示されたが、特に今後5年間で低下すると予測されるテレビ従業員の障害者の割合や、上級レベルにおける少数民族の代表数の低さについては、多くの改善の余地があるとされた。また、多様な人材の確保と育成についても、より大きな進展が必要である事が判明している。
英国放送界の多様性と機会均等に関するOfcomの5年間のレビューで提起された問題は、最近のデジタルラジオとオーディオのレビューでも検討された。BBCと商業ラジオ放送局は、採用や訓練・技能への取り組みの変更を通じて、放送とオンラインサービス、そしてより広い組織内の両方で多様性を高めようとする明確な動きを見せている。しかし、「デジタルラジオとオーディオの見直しに向け行われた調査」では、ラジオが英国中のコミュニティに語りかけ続けることの必要性と機会が強調された。このため、政府はラジオ放送局と協力して、商業ラジオ局やコミュニティラジオ局が提供している既存のサービスを土台に、十分なサービスを受けていないコミュニティ向けのラジオとオーディオサービスを拡大する機会を特定する事にしている。
世界市場の変化、ビデオ・オン・デマンド・サービスの台頭、パンデミックの影響は、我々が知っているように、この分野を変化させ続けている。我々は、オンデマンドサービスが多様性に関する話題のより大きな部分を占めるようにし、参入と昇進の障壁を減らし、代表性を向上させる革新的で効果的な方法を見つけるべく、業界全体でより多くの協力を得る事を切望している。
また、多くの公共放送局やその他の業界関係者が独自の多様性・包括性戦略やイニシアティブを打ち出していることを歓迎する。政府は、英国の放送事業者に対し、その組織とより広いセクターに於いて、特に労働者階級の出身者がアクセスしやすいという点で、代表性に欠ける重大な分野に取り組むために可能な限りの事を行い、集団思考ではなく、スタッフ間の意見の多様性へのコミットメントを示すよう求めている。そうすることで、温かい言葉だけでなく、真の変化を目指す事が可能となるのである。
4.5.言論の自由の保護
自由なメディアは民主主義の礎の一つである。政府は、テレビ・ラジオ放送局を含むメディアが、人々の責任を追及し、最も重要な問題に光を当てる上で、極めて重要な役割を担っていると認識している。特に、信頼できる公平なニュースにアクセスすることの重要性は、最近のウクライナ侵攻の際にも強調された。BBC、ITN、スカイといった報道機関で働くジャーナリストたちは、命がけで戦場から公平で正確なニュースを私たちに伝えているのである。
こうした原則を支えるために、我々は当然ながら、Ofcomによって独立に導かれる強固な通信規制のシステムを有している。放送に関しては、公正さ、正確さ、公平さなどの問題を規制する放送コード(Broadcasting Code)を維持する責任をOfcomが持ち続けるのは、適切としか言いようが無い。このコードは、放送事業者の表現の自由の権利と視聴者の情報や考えを受け取る権利を完全に反映するものである。
この点で、英国の放送法が英国の自由と伝統を反映させるのも重要である。視聴覚メディアサービス指令の施行後、英国の法律は現在、欧州連合の基本権憲章を参照しており、言論の自由を抑制する効果があるのではないかと懸念している。ブレグジット後も法令に残るレガシーEU法で時代遅れの「留保EU法」を改正・除去する政府の幅広い取り組みの一環として、我々は今後数ヶ月の間に2003年通信法におけるEUの定義を英国固有の措置に置き換える予定だ。
我々は、主要なハイテク・プラットフォームによる行動がメディアの自由に及ぼす影響についても懸念している。英国の報道機関には、テレビ、ラジオ、紙媒体を問わず、メディアの自由を擁護し、出来事について大胆不敵に報道しコメントしてきた強い歴史がある。テレビとラジオはOfcomによって直接規制されており、報道機関には独立した自主規制のシステムがある。一方、こうした規制の枠組みと、オンライン・プラットフォームによる個別の意思決定との間には潜在的な緊張関係があり、ニュース配信元はコンテンツの配信で依存が高まるばかりだ。例えば、2021年にYouTubeがTalkRadioのサービスを一時的に閉鎖したのは、既に国営ラジオで放送されたコンテンツであり、Ofcomの直接規制の対象であったためだ。政府は、ニュース配信元のコンテンツや、より広範なジャーナリズムの資料が、オンライン上でより大きく保護されるべきであると明言している。それに向けて、我々はオンライン安全法案に、報道機関のコンテンツをオンライン安全法の安全義務から除外し、関連するプラットフォームがそのサービス上で共有される報道コンテンツに対して安全策を講じることを保証する条項を盛り込んだ。
4.6.レベル向上
今年2月、政府は、政府の仕組みを完全に「システム・チェンジ」し、英国のレベルアップを図るという野心的な計画を打ち出した。この新しい政策立案・実施方法の中核となるのは、12の大胆な国家ミッションだ。これらのミッションは、2020年代のアジェンダの中心を成し、政府横断的、社会横断的な取り組みとなる。例えば、最初のミッションは、あらゆる場所で給与、雇用、生産性が向上し、業績の良い地域と悪い地域の格差が縮小することを目指すものだ。
放送局と広域メディアは、レベルアップに貢献する大きな可能性を持っている。放送局は、大不況後の地域経済を活性化させて地域の成長を促進し、人々が自分自身や自分たちの生活様式を画面に映し出し、アイデンティティと地域社会との繋がりを強化する事により、その実現が可能となるのである。
ロンドンと南東部以外の地域により重点を置いて、支出や活動を全国的にバランスさせるのは、メディアと放送の経済的・社会的利益を英国の地域全体の人々にもたらすのに役立つ。
公共放送局には、ロンドン以外から番組を委託するための特別な割り当てがある。これらのクォータはOfcomによって設定され、監視されており、英国全体の成長を促進する上で効果的であった。たとえば、BBCとITVは既にサルフォードのMediaCityUKに活気あるメディアクラスターを設立しており、そこからBBCブレックファーストやコロネーション・ストリートなど英国の主要全国番組が制作・放送されている。BBCのアクロス・ザ・UK戦略では、BBCの経済効果の半分が既にロンドン以外の地域にあるとし、地域委託と人材開発に対し更なる重要な新しいコミットメントを明らかにしている。そこには、BBCのテレビとラジオの支出に占めるロンドン以外の地域の割合を、現在の憲章期間終了までにそれぞれ60%と50%に引き上げる事が含まれている。政府はこのコミットメントを歓迎している。同様に、チャンネル4は2013年以降、毎年、番組の半分以上をロンドン以外に拠点を置くプロデューサーに委託している。
一方、我々はさらに前進するためのステップを踏み出しました。デジタル・文化・メディア・スポーツ省の英国映画委員会への資金提供は、7つの地域的な制作拠点(各国に1つずつを含む)と、英国全土に於ける多数の新しいスタジオ開発の更なる成長を支援している。こうした各地域には、既にあらゆる産業の中で最も才能のある創造的で商業的な人々が存在し、この機会を活用するべくスキルの状況を進化させる必要がある。国立映画テレビ学校は、デジタル・文化・メディア・スポーツ省の支援を受けて、グラスゴー、ヨークシャー、カーディフに拠点を開設し、英国全土のプロダクションのために地元の人材パイプラインを強化する事を目的としている。例えば、ベルファスト地域のシティディールを通じて、北アイルランド初のスクリーンとメディアのイノベーションラボであるフューチャー・スクリーンズ・ノーザン・アイルランド・クリエイティブ・クラスターに3800万ポンドの資金が調達された。これに加えて、ベルファストのフレキシブル・プロダクション・スタジオ向けに、レベリング・アップ・ファンドのラウンド1から290万ポンドの資金が提供され、映画と映像のための競争力のあるクリエイティブ・クラスターとしてのベルファストの成長が促進される予定だ。これらの投資により、映画産業は、英国全域の地域経済成長への貢献を拡大するための体制を整える事が可能となった。
レベルアップには、繋がりのあるコミュニティを支援し、その土地への誇りを育む事が含まれるのは言うまでも無い。ここでも我々の放送部門は貢献できる。先に触れたように、コミュニティラジオは、主に地元のボランティアによって運営され、シビックプライドの醸成、コミュニティへの参加の増加、孤独感の緩和など、多くの社会的インパクトを地域に与える成長セクターである。これまでコミュニティ・ラジオ基金から資金提供を受けている放送局は、例えば地域の募金活動の促進、社会的に孤立した弱者のためのコーヒーモーニング、運動教室など、地域の生活向上に役立っている。デジタル・文化・メディア・スポーツ省が最近委託した基金の評価では、助成金が小規模な放送局に命綱を与え、その成長を後押ししている事が分かっている。
4.7.温室効果ガス実質ゼロ排出へのコミットメント達成
政府は、気候変動への取り組みの緊急性を認識している。2021年11月にグラスゴーで開催されたCOP26国連サミットの成功を受け、英国は2022年のエジプトでのCOP27までCOP議長国を継続し、この重要な問題の進展をさらに推進する。2050年までに温室効果ガス実質ゼロ排出を達成し、2035年までに1990年比で78%削減する目標を掲げ、引き続き取り組んでいる。
ここで放送部門が重要な役割を担っている。政府は、英国の映画・テレビ制作のための主要なサステナビリティ・イニシアチブとして、この問題に取り組むBAFTAアルバートの活動を特に歓迎するものである。実用的なツールとサポートを提供する事により、アルバートは、業界が積極的に炭素排出に取り組み、制作活動から出る廃棄物を制限する事を可能にしている。放送局や政府の独立行政法人である英国映画協会を含む多くの資金提供者は、資金提供を受けるべく、全てでは無いにせよ、多くの作品にBAFTAアルバートの炭素計算機と認証ツールの使用を求めている。

放送部門の炭素排出には、以下のような原因がある。

制作:アルバートの最新レビューによると、2020年に、テレビの平均的な1時間分の排出量が9.2トンから4.4トンCO2換算で52%削減された。削減の半分は、パンデミックの結果導入された制限、特に旅行の減少に起因している可能性がある。生産が正常に戻るだけでなく、以前の最高値を超えると、環境への影響は再び増加すると推察される。一方、この事が、当該期間から得られるポジティブな要素や、パンデミックの結果として生まれた新しい働き方を基に、産業界が継続することを妨げるものであってはならない。

配信:カーボン・トラストは、ヨーロッパにおける1時間のビデオストリーミングの平均的な二酸化炭素排出量は、視聴者一人当たり約55g CO2換算(平均的な電気ケトルを3回沸かすのに匹敵する)と推定している。2021年に発表された白書では、50インチのテレビでの視聴に伴うエネルギー使用量は、ノートパソコン経由での視聴の約4.5倍、スマートフォンの約90倍だと試算されている。同時に、英国のラジオ産業は、送信のために約115GWh/年を消費するとされている。これは3万世帯が使用する電気エネルギーに相当する。

デバイスの製造:一般的な薄型テレビの製造は、そのライフサイクル全体の温室効果ガス排出量の約半分を占めていると実証されている。また、地球上で最も産出量の少ない鉱物の一つであるインジウムを含む多くの金属を使用する必要がある。故に、テレビの耐用年数を延ばし、最終的にリサイクルされるようにする事が持続可能性を支える上で重要な役割を担っている。政府は、企業が二酸化炭素排出量に対してより高い意識を持つようになった事を歓迎している。例えば、世界初のカーボンニュートラル認証テレビ「スカイガラス」が昨年発売されている。

政府はまた、2050年までに炭素排出量をゼロにするという英国の目標を支援するべく、各放送局が行っている活動を歓迎し、既に前向きな前例となっているのを高く評価している。スカイの先駆的な仕事は特に高いハードルを設定していた。その後、BBC、ITV、チャンネル4など他の放送局が2030年までにカーボンニュートラルになることを約束した事を強く歓迎し、他の英国の放送局にもこの例に倣うよう呼びかける。
この問題はテレビに限った事では無い。最近のデジタルラジオ・オーディオ・レビューでは、アナログおよびデジタルラジオ放送に起因するエネルギー使用の包括的評価が行われ、ラジオ業界は、将来の計画の前提の一部として、伝送およびラジオセットのエネルギー使用量を低減する目標を約束すると明言した。
政府は、放送部門の貢献が、排出量だけでなく、公共サービスのメッセージ性という点でも重要だと認識している。そのため、COP26の期間中に業界が共同で「気候コンテンツ公約」を発表したのは喜ばしい。これはBAFTAアルベルトの新しい公約で、これまでに12の署名者(BBC、ITV、チャンネル4、チャンネル5、STV、スカイなど)が、コンテンツを用いて気候変動に取り組む必要性について視聴者を教育し、環境に優しい選択を鼓舞し、情報を提供することを呼びかけている。
また、政府は国際的なパートナーと共に、この重要な問題に対する行動を促進する積極活動を続けている。2021年、英国は、欧州評議会の機関であり、オーディオビジュアル部門を管轄する欧州オーディオビジュアル観測所(European Audiovisual Observatory)の議長国を務めている。その一環として、政府はアルバート、英国映画協会、および様々な国際的な業界や政府のパートナーと協力し、環境の持続可能性に関する議論を促し、英国主導で「映画・テレビ制作における持続可能性」に関する会議を開催するまでに至った。英国のリーダーシップと国際的なパートナーとの議論を通じ、欧州オーディオビジュアル観測所は、この重要なテーマを今後の研究に取り入れることを確認した。これは、英国や他の国々に、この重要な問題で引き続き主導的な役割を果たすための貴重な証拠となるものである。
4.8. 責任ある広告の奨励
政府は、メディア市場、特に放送局の活力と強さに貢献する広告の重要性を認識している。我々は、広告業界による広範な自主規制アプローチを支持するが、必要と考える場合には、限定的な立法と規制にも価値を見出す。
このため、小児肥満への取り組みを支援するため、健康的でない飲食料品の広告に制限を設けている。我々の分析によると、2019年には、余り健康的でない飲食料品について、テレビで合計29億人の子供への影響があったと推定さている。こうした新しい措置は、英国で年間最大72億カロリーを子どもたちの食生活から取り除き、肥満の子どもの数を2万人減らす事が可能となる。
我々は、こうした新しい規制が放送局の将来の収入源に影響を与えると認識している。そのため、予想される健康上の利益とビジネスへの影響のバランスをとり、放送事業者が引き続き収入を得られる場を設けるべく、多くの免除や除外を導入している。例えば、ブランドは引き続き広告を出す事が認められ、大手食品・飲料会社は引き続きマーケティングを行う事が可能だ。我々は、放送事業者と協力し、新しい措置の効果を監視し続けていく。
また、より広い広告エコシステムにおいて起こりうる変化を通じ、英国の放送局を支援する他の方法を模索する。オンライン広告プログラムを通じて、我々は、説明責任と透明性を向上させるためにどのような措置を導入出来るかを検討しながら、プラットフォーム責任の問題を含め、放送とオンライン広告の間でより公平な競争の場を作る方法を検討する予定を立てたのは、その一例である。オンライン広告プログラムのコンサルテーションは、2022年3月9日に開始されている。
4.9.文化遺産の保護
テレビはその商業的価値だけでなく、映画やその他のスクリーン活動と共に、英国の文化的福利と遺産の重要な一部を形成している。テレビは意見を反映し、形成し、ある瞬間をとらえ、我々自身と自国をより良く理解するのを可能にする。故に、その文化とコンテンツを次の世代に残す事が我々にとって重要なのだ。
英国映画協会(BFI)は現在、BFIナショナル・アーカイブを運営しており、商業PSBはこのアーカイブに資金を拠出する事が義務付けられている。1990年の放送法に基づき、Ofcomがこうした貢献を監督し、チャンネル3、チャンネル4、チャンネル5のライセンス保有者がアーカイブの維持費として拠出する適切な金額を決定している。BFIはまた、BBCとそのアーカイブ活動とも密接に連携し、重複を避けるようにしている。
時間の経過と共に、英国文化を形成する関連するスクリーン・コンテンツは、PSBのエコシステムの外で作られる事が多くなっている。故に、アーカイブが英国の文化的アウトプットの変化に対応し続ける事が重要であり、PSB以外のコンテンツメーカーが、今後、英国の文化的に重要なコンテンツの保存にどのように貢献し、サポートするかについて、アーカイブとより積極的に関わる事を期待したい。今後、我々は、関連するパートナーと協力しながら、国の文化的な映像遺産を保護し、次の世代に理解されるようにする最善策を検討し、行動していく予定である。
4.10.グローバル・パートナーとの協働
自由貿易は進化しており、英国はより多くの貿易と異なる貿易を行う重要な機会を有する。我々は、未来の市場と革新的で世界をリードする自由貿易協定を交渉し、貿易関係の新時代に乗り出そうとしている。貿易協定と関係を英国の優先事項に合わせることで、全英の地域に有効な輸出の機会を作り出しているのだ。
政府は、世界クラスのコンテンツを制作し、世界中から投資を集める英国の強力なオーディオビジュアル部門を誇りにしている。英国の才能とインフラにより、スター・ウォーズやロード・オブ・ザ・リングなどの大作映画やテレビシリーズの撮影地として選ばれてきた。政府は、英国のインディペンデント・コンテンツがより広く見られるよう支援する活動も行っており、最近の歳出レビューで発表された約5000万ポンドの幅広いクリエイティブ産業パッケージの一環として、英国グローバルスクリーン基金に2100万ポンドを追加投資出来たのは喜ばしい。この基金は、国際的なパートナーシップを築き、英国のストーリーを世界と共有する機会を増やすものであり、特に、絶賛された英国のインディペンデント映画のコンテンツが世界の観客に届くようにすることに重点を置いている。
オーディオビジュアル部門は複雑な生態系であり、その成功は一連の公共政策の介入によって支えられている。政府は、国際貿易のアジェンダを通じて、この部門の強さを維持し、発展させる事を約束する。
特に、英国の貿易政策が英国の視聴覚公共政策の枠組みを補完し、保護していく。これには、欧州評議会の「国境を越えるテレビジョンに関する条約」への加盟と、それに伴う欧州作品の地位の維持が含まれる。英国が国家間の重要な文化的充実に貢献し続け、欧州の近隣諸国と効果的に協力し、文化的に重要な作品を欧州全域に配給できるようにするものである。例えば、欧州の視聴者に絶大な人気を誇る英国のコンテンツに欧州全域の放送局がアクセス出来るようになり、選択肢とエンゲージメントが高まると同時に、英国の視聴者が最高の欧州コンテンツにアクセス可能とする事を意味する。また、英国と欧州のプロデューサーが協力して欧州全域のコンテンツを制作する事を支援し、欧州各国が独自の活気ある放送システムを維持出来るようにするものである。
4.11.デジタル市場での競争促進
第1章で説明したように、技術、視聴習慣の急速な変化、グローバルプレイヤーの参入は、英国の放送局に新たな課題をもたらしている。
他の分野では、世界的なハイテク企業の出現と、それらが促した統合の波が、競争への影響と、消費者が利用可能な潜在的な視点の幅へのリスクについての疑問を投げかけている。
政府は2021年7月の公開協議で、デジタル市場のための新しい競争促進体制に関する提案を示した。我々はその回答を順次発表する予定である。この制度は、英国全体でより活発で革新的なデジタル経済を推進し、既存の競争制度とOfcomなどの分野別規制当局が利用できる規制権限を補完する事となる。
この制度は、競争市場庁に新設されるデジタル市場部門が監督し、消費者と企業が公平に扱われ、新しい革新的なハイテク企業が活躍できるように、公平な競争環境を整えるための新しい規則を含むことになろう。この新しい規則は、少数の最も強力なハイテク企業にのみ適用され、市場における当該企業の行動を形成し、依存する人々(状況によっては放送局やプラットフォーム事業者も含まれる)を保護するものとなる。デジタル市場部門は、行動要件と競争促進的介入の導入を通じて、市場権力の根源とその影響の両方に対処する権限を与えられる。例えば、最も強力なハイテク企業が第三者と公正かつ合理的な条件で取引することを保証する様々なツールを装備する事となる。
政府は、議会の時間が許す限り、この新しい競争促進体制を法制化する予定である。そして、独立した規制機関であるデジタル市場部門が、その新しい権限をどのように活用するかを決定する事になる。
長期的には、放送部門が進化し続ける中で、デジタル市場が放送にどのような影響を与えるのか、また、更なる市場への介入が必要なのか、引き続き検討していく。

第5章:新技術と台頭中の技術

技術の進歩は、今日の視聴者とリスナーが、何をどのように見るかという点で膨大な選択肢を持ち、それを活用している事を意味する。生放送のテレビとラジオに加え、視聴者はますます多くのプロバイダーとデバイスに時間を配分するようになった。
本章では、これらの技術を規制するための政府のアプローチを示す。参加者にとって公平な競争条件を維持しつつ、イノベーションを奨励するものである。
5.1.ビデオ・オン・デマンド・サービスに関するコンテンツ規制
ネットフリックスやアマゾンプライムビデオなどのビデオ・オン・デマンド・サービスは、英国の視聴者に大きな価値を提供した。多くの場合、英国経済への貢献は大きく、そして増大している。現在、視聴者は、数百の異なるビデオ・オン・デマンド・サービスに於いて、ボタンひとつで数千時間のオンデマンド番組にアクセスする事が可能である。それぞれの規模や意欲、視聴者層は異なっている。
しかし、BBCのiPlayer以外のこれらのオンデマンドサービスは、有害もしくは不快なもの、正確性、公平性、プライバシーを含むコンテンツに関する適切な基準を定めたOfcomの放送コードの対象外である。つまり、視聴するテレビのようなコンテンツは、その視聴方法によって規制が異なるのである。一方で、この業界では大きな革新と成長を遂げている分野の一つである。消費者は幅広いオンデマンドサービスを楽しんでおり、規制によってこの体験が妨げられたり、英国がビデオオンデマンドサービスを運営する上で魅力的な市場で無くなる事を望んでいない。
そのため、従来の放送事業者と大手ビデオ・オン・デマンド・サービスのルールを統一する必要があるかどうかを検討するためのコンサルテーションを開始した。
このコンサルテーションに対する完全な回答は、本白書とともに発表された。その中で、政府は、視聴者がどのように視聴するかを問わず、テレビのようなコンテンツが同様の基準に従う事を保証するべく、放送コードに似た新しいビデオオンデマンドコードを起草し執行する権限をOcomに与え、ライトタッチで立法する積もりであると概説されている。これらの変更により、英国の視聴者は有害なものからより良く保護され、気になるものを見たらOfcomに苦情を言えるようになる。
この世界最先端の制度は、大規模で最もTV的なビデオ・オン・デマンド・サービスを対象とし、英国の視聴者を大規模に巻き込む主要サービスが、英国の放送局と同じか類似の義務を負うことを保証する。また、現在英国では規制されていないが、英国の視聴者をターゲットにして利益を得ている大規模なTV的オンデマンド・プロバイダーは、当然ながらOfcomの管轄下に置かれる。新たな規制の対象となる具体的なサービスは、Ofcomによる審査を経て、国務長官が決定する。
これにより、大規模なオンデマンドストリーミングサービスは、苦情の効果的な処理など、従来の放送事業者と同じか類似の義務を負う。情報収集や執行権限など、ビデオ・オン・デマンドを規制するためのOfcomのツールも、既存の放送規制と一致させる事となる。
ライトタッチの体制では、年齢制限、PINコード、警告などの保護手段や対策に関する適合性の向上は義務化されない。代わりに、Ofcomはオンデマンドプロバイダーの視聴者保護策を評価する継続的な義務を与えられる。これにより、ビデオ・オン・デマンドのプロバイダーが導入しているシステムが効果的で目的に適っていることを確認し、必要であればOfcomが変更を確保することができるようになる。
言論の自由と比例性の問題を尊重し、英国における小規模でリスクの低いオンデマンドサービスは既存の規則の下で継続し、小規模なサービスが不当または不必要に罰せられる事が無いようにする。
5.2.全ての視聴者がビデオ・オン・デマンド・サービスにアクセス可能なようにしていく
現在、4分の3以上の世帯がビデオ・オン・デマンド・サービスを利用しているが、これらのサービスにおける字幕、手話、音声ガイドの提供は、放送用テレビに比べ遅れている。テレビ放送のアクセスサービス(字幕、手話、音声ガイド)には法的な目標があるが、オンデマンドサービスにはそれが無い。このため、英国のかなりの割合の人達が、自分の都合でテレビを楽しむ事が出来ていない。
政府は、デジタル包括的な社会の実現を目指しており、コンテンツにアクセスする際に選択するプラットフォームに関係無く、英国のすべての視聴者がテレビコンテンツにアクセスできるようにする必要がある。2003年通信法(2017年デジタル経済法で改正)に基づき、国務長官は、オンデマンドサービスが障害者にとってアクセス可能である事を保証する目的で、サービスプロバイダーに対して要件を課す権限を有している。これには、字幕、音声説明、手話に関連する要件が含まれる。
これらの新しい要件を実施するプロセスの一環として、政府は、オンデマンドサービスをよりアクセシブルにするための法整備に関する勧告を行うよう、Ofcomに要請した。Ofcomは2018年12月に最初の報告書を発表した。その後、英国デジタル・文化・メディア・スポーツ省からの要請を受け、新しい要件が実際にどのように機能するかに関して更なる勧告を知らせるべく、対象を絞った追加的なコンサルテーションを実施した。こうした提案は2021年7月に発表され、我々はOfcomと協力しながら、放送とオンデマンドサービスの間のアクセスサービスの提供の乖離に対処するための立法案を策定している。我々は、関連するステークホルダーを巻き込んで、法律が明確で、適切で、目的に適ったものになるようにする。
5.3.地上デジタルテレビ
地上デジタルテレビ(DTT)は、Freeviewプラットフォームとして視聴者に良く知られており、英国の放送システムの人気かつ重要な部分である。英国全土をほぼ99%カバーしているため、プラットフォームのコンテンツが普遍的に利用出来るよう、DTTに十分な周波数(特定の電波)が割り当てられている。
2020年12月、政府は2022年と2026年に期限切れとなるDTTプラットフォームの全国マルチプレックスライセンス5件の更新について意見を求めるコンサルテーションを実施した。協議は2021年2月に終了し、政府は2021年8月17日に回答を発表した。その中で、我々は、2034年まで5つの国内マルチプレックスすべての更新を実施する権限をOfcomに与える法律を整備し、2030年末までに失効出来ない場合は新たな失効権限を含める事により、適切な規制上の柔軟性を持たせる方針を確認した。
この法律は現在施行されており、長期の更新はDTTプラットフォームに対する当社のコミットメントを示すものである。英国のあらゆる地域の世帯でDTTが高い水準で利用されている事から、少なくとも2020年代の残り、おそらく2030年代初頭まで、重要なコンテンツ配信チャネルであり続けるだろうと我々は考えている。
DTTプラットフォームとその将来は、引き続き業界にとって関心の高い分野であり、現在DTTに割り当てられている周波数の将来の割り当てが実質的な議題となる2023年の次の国際電気通信連合世界無線会議に向けて英国の立場を確立する上で、この分野が重要であると認識している。DTTプラットフォームの将来に対する投資と信頼の維持は重要であり、そのために政府は 2034年までの長期的な免許の更新を可能にしたのである。更に、政府はOfcomに対し、DTT視聴の変化を引き続き追跡し、2025年末までにコンテンツ配信の将来に影響を与える可能性のある市場の変化について、早期レビューを行うよう要請する予定である。
5.4.インターネット配信テレビ
英国ではビデオ・オン・デマンド・サービスが登場し、その利便性が高まっているが、ニュースや娯楽、新しいものを求める何百万もの世帯にとって、生放送のテレビは依然として有力な選択肢である。
インターネット配信テレビ(IPTV)は、最新のインターネット対応プラットフォームが提供する利便性と選択肢に、既存テレビの親しみやすさとセレンディピティを組み合わせた、両者にとって最高の選択肢となる可能性を秘めている。
英国は、96%の超高速ブロードバンド普及率と、1750万世帯以上へのギガビットブロードバンドの世界有数の展開により、こうしたイノベーションの最前線に立ち続けている。政府は、2025年までに少なくとも85%の世帯がギガビット対応ネットワークにアクセス可能とする事を約束しており、可能な限り100%に近づけるべく、更なる普及を加速させる予定である。同時に、スカイ、バージン、BTなどのプラットフォームからの新製品発売や、Freeview Play対応機器の開発により、IPTVサービスの利用がこれまで以上に多くの世帯に拡大しつつある。
昨年、政府は今後何年にもわたってDTTをライブテレビの主要な配信プラットフォームとすることを明確に約束したが、DTTが従来のアナログテレビに取って代わるように、IPTVもいずれDTTに取って代わるだろうと考える人は多い。アナログ放送の廃止が4G携帯電話サービスの展開を促進したように、やがて電波が他の用途に解放されるかもしれない。一方、テレビ配信のためのインターネット帯域への依存が高まれば、固定ネットワークに圧力がかかる可能性がある。DTTからの切り替えを検討する場合、テレビ受信料を払えばDTTの受信と視聴は「無料」となっているが、IPTVの受信と視聴には現在、消費者が十分に高速なブロードバンド接続にアクセスする必要があるなど、より広範な問題を調整する事が求められる。配信の将来は不透明であり、IPTVについて今すぐ決定する必要はないが、いずれこうした問題について広く国民的な議論が必要だろう。これらは、Ofcomの2025年のDTTの見直しが検討を始めると思われる種類の問題でもある。
また、IPTVサービスのプロバイダーと従来の放送事業者の間には公平な競争条件が必要だ。最初のステップとして、規制対象の電子番組ガイドを追加指定する事により、規制対象外のIPTVサービスが英国のテレビに登場するのを可能にする抜け穴を塞ぐ事にしている。これにより、こうしたガイドに掲載されたIPTVサービスはOfcomの規制範囲に入る事となる。また、この分野でOfcomが利用できる情報収集と執行の権限についても、引き続き検討していく。
5.5.家庭や自動車で使用される接続オーディオ機器
最初のコネクテッド・オーディオ機器である「スマート・スピーカー」が英国市場に登場して以来、過去5年間に人々のラジオの聴き方に急速な変化が起きている。
スマートスピーカーでの聴取は、既にラジオ聴取全体の5分の1近くを占めており、英国の家庭でのコネクテッドスピーカーの普及が進むにつれて、今後数年間でさらに増加すると推察される。
スマートスピーカーの急速な普及は、サードパーティの技術によって多くの愛聴盤へのアクセスを管理(および制限)出来るようになった。これにより、ラジオはこれまでに無い立場に置かれる事になる。
デジタルラジオとオーディオのレビューは、技術的変化に直面して、ラジオとそれが提供する巨大な公共的価値を保護するための措置を講じるための強力な事例を示している。我々は、視聴者が新しいデバイスでラジオサービスに不当な干渉やアクセス料無しにアクセス出来る事を保証するには、新しい措置が必要かもしれないというレビューの結論に同意するものである。
しかし、簡単では無いだろう。この分野での重要な介入は、特にデジタル市場とデータ保護改革に関連して、我々が実施している他の作業とのより広い文脈で検討していく必要がある。また、ラジオが将来にわたってリスナーに届き続ける事が出来るような最良の体制を整えるべく、ラジオ業界と更に関わり、スマートスピーカープラットフォームの政策や慣行をより深く理解する必要があるだろう。
謝辞
政府は、本文書に記載された政策提案の形成に協力された、以下の組織や個人の方々に感謝したい。

  • Ofcom、およびその公共放送の最近のレビューに貢献した方々

  • 公共放送諮問委員会のメンバー

  • デジタルラジオとオーディオのレビューへの寄稿者

  • ビデオ・オン・デマンド・サービスの視聴者保護基準やチャンネル4の所有権変更の可能性などに関する政府の協議への回答者

  • この分野に於けるこれまでの活動に関する英国上院通信・デジタル委員会およびデジタル・文化・メディア・スポーツ委員会のメンバー

脚注1:FMまたはAMで運用されるコミュニティラジオ局の免許は5年間。法律は更に3回の更新を認めている(合計20年)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?