2023年秋M3振り返り&Pilgrim EPライナーノーツ

みなさんこんにちは。「インターネットやめないで」主宰のたこぴーです。本記事では2023年秋M3に向けて制作したMIXTUREの2曲、及びPilgrim EPについての総括を行っていきます。

Still Singing(False remix)

経緯

では楽曲制作会KMMの"MIXTURE"に提供した楽曲の方から。
あみるさんの"Still Singing"のリミックスを行いました。原曲は春M3の際に発表された"Rabbit Beat!"のうちの1曲です。
原曲はこちらから。

めっっっっっっっっっっっちゃ良い曲なんですよねこれ。アルバム買って。
春M3の際にデータを頂いていたため、アルバムを通しで聞かせてもらったのですが、特に刺さったのがこの曲でした。歌い上げるようなイントロや疾走感のあるサビのメロディー、ラスボス戦らしいどこか透明感のあるアレンジメント。何回もリピートするくらいにはこの曲が印象に残っていました。

MIXTUREの募集を始めたのが5月くらいだったかな?昨年に続いて第二弾を開催した訳ですが、アルバムのテーマは「リミックスor合作であること」です。そこでもともとリミックスしてみたいと思っていた"Still Singing"を選んで制作に取り掛かりました。

レファレンス・影響を受けた楽曲

moki - フロンティアブレーン戦BGM ギターアレンジ
EBIMAYO - VS​.​マ​ス​タ​ー​コ​ア (EBIMAYO Sprint Remix)


"Still Singing"をリミックスするにあたって念頭にあったのが「VS. マスターコア」のリミックスでした。原曲が軽やかで音数が少ない分、リミックスでは重心が低く音を詰め込んだ形にしてみたかったのです。そこで、同じく音ゲー調のチップチューンのリミックスであるこの曲をレファレンスにおいて作業にとりかかりました。
また、ギターを中心に据えたアレンジということでmokiさんのアレンジも参考にしました。このアレンジのような四つ打ち感を引き出すために、ドラムのミックスには力を入れています。

使用音源

ギター音源
・Metal GTX
アンシミュ
・Amplitube
ドラムサンプル
・FL付属のKick Basic、Spliceのサンプル、Kymograph knowledgeなど

無料の音源も活用して制作しました。FL付属のサンプル、なんだかんだ良いものは多いのでFLユーザーの方は試してみてね。

アレンジについて

"Rabbit Beat!"は架空のアクションゲームがテーマでした。じゃあその続編としてJRPGが出たら面白くないかと考えてアレンジを組み立てました。ちなみにイメージは「格闘王への道」のようなボスラッシュモード専用のBGMです。原曲より3度下げたスケールにしたからそれっぽい暗さが出てくれていると良いな。

https://soundcloud.com/takopi/practice3?si=0169cf32eeb64fd79b26cb6fdc0eb307&utm_source=clipboard&utm_medium=text&utm_campaign=social_sharing

今年の2月くらいに制作していたこの曲もアイデアを出すうえで役に立ちました。アレンジの構成はこの曲が元になっています。

イントロの部分でのディスクの読みとり音によって、ゲームの"Rabbit Beat!"をプレイしている様子をイメージさせたり、中盤でホワイトノイズの効果音を盛り込んだり…
ゲームという原曲のテーマに対して、メタ的な視点と続編のBGM(ゲーム中の効果音)という視点を持ち込むことで、色んな解釈が可能な作品に仕上がったと思います。

効果音的な部分以外にも音に意味を持たせた部分があるので暇な人は探してみてね。

緑空の劇場

レファレンス・影響を受けた楽曲

久石譲 - 驚異の小宇宙 人体の不思議
削除 - Distorted Fate



今回「踊りに付ける音楽を書いて欲しい」という依頼をいただいて合作した作品をMIXTUREに提供しました。依頼の際に
・10分以上の楽曲であること
・生と死をテーマにすること
・自然と都会の対比を用いること
以上が条件として提示されていたため、それに沿った形で制作に取り組んでいます。

僕が大枠を作った後に響くんにメロディーなどを補足してもらうというフローで制作しました。「人体の小宇宙」をイメージしたxpand!2のシンセをふんだんに使ったアレンジを組み立てるところから制作を開始しました。
また、都会(機械)なパートにはローテンポなpsy trance的な展開を盛り込んでおり、Distorted Fateのアレンジを参考にした部分があります。

使用音源

シンセ
・xpand!2
・serum
たこぴーがいつも使っている音源。今回の曲のたこぴーっぽい部分はだいたいこの2つのシンセから作られている。
ドラム
・kymograph knowledge
民族的なドラムはほとんどこれで作りました。ありがとう。癖は強いけど。

アレンジについて

アレンジ面ではシンセによる広がりを作ることを目標にしています。普段の楽曲でもアンビエント系のサンプルを使って奥行きを作っていますが、今回はローテンポの楽曲だったため、特に意識した部分です。
また、イントロに映画のブザーを盛り込むことで、踊りの場を周囲から浮かび上がらせるという効果を狙っています。生と死の物語が繰り広げられる劇場。恐ろしくもあり、どこかゴシップめいたものも感じさせるものなのかなと考えています(「生と死の劇場」には元ネタがあります。探してみてね)。

補足・謝辞

本楽曲は10/7よりさいたま市で行われている、さいたま国際芸術祭の一環である「野良の藝術2023 大地の鼓動」のパフォーマンス向けに制作された楽曲です。
楽曲を制作・公開する機会を下さった蒼浩人様をはじめ社会芸術の皆様、及び引き合わせてくださった慶應義塾大学の工藤先生に深く感謝申し上げます。
当日は見沼の蒼様の踊りに合わせて展開される世界観を楽しんでいただければ幸甚です。

Pilgrim EP

動機

もともとは秋M3で小説×音楽コンピレーション第2弾を開催する予定でしたが、就活や卒業研究で忙しく小説の執筆は難しくなってしまいました。しかし、サークルの主宰として何か作品を出さなくてはと思い、曲数の少ないEPをリリースするに至ったという形です。

余裕のあるうちにやりたいことはやっておいた方が良いです。研究と就活と創作を同時並行で進めるとキャパオーバーになるぞ!

ではそれぞれの楽曲とEP全体のストーリーについて。

Track01 - In a dense fog

経緯

この楽曲はサークルの夏合宿で制作したものです。

KMMでは昨年から合宿を復活させて年2回、某所でDTM合宿を行っています。
内容としては
・覆面DTM
・DTMリレー
の2つが主なコンテンツでした。
覆面DTMはDyingSuitcaseさんが主催されている企画とルールは異なりますが、大本となるアイデアはお借りしています。この場を借りてお礼申し上げます。
DTMリレーは部員のYakumoくんのアイデアで始めたものでした。リレーで制作した楽曲はMIXTUREの会場特典として頒布した作品です。

覆面DTM向けに制作したのが"In a dense fog"でした。全然覆面出来てないが?
この企画では良いと思った作品に点を投じ、順位をつけるというルールで行っています。これまでの曲全てで正体がバレていたので、今回は楽曲自体の面白さで勝負しようと思い映像をつけて提出しました。MVは後日公開する予定です。
MV向けに制作した世界観がEPの根幹を構成しています。

レファレンス・影響を受けた楽曲

Silentroom - 驟雨の狭間
Silentroom - X7124

随所に見えるかと思いますが、footwworkとdrum'n'bassを融合させる展開やメロディーメイクなどの部分で影響を受けています。drum'n'bassで上げたあとにfootworkで落としていく展開、めちゃくちゃ良いので皆やってみてくれ。

使用音源

serumとAddictive keys、サンプルのみなので割愛。

アレンジについて

たこぴーの手癖+レファレンスの展開という形で制作しています。僕は完全4度を行き来させるメロディーを好んで使っていますが、この曲でも4度の持つ色彩感を盛り込んでいます。イントロ~Aパートの部分ではFドリアンを用いつつ、コード部分では4度を強調することでファンタジックな世界観を形成しました。
ドラムスはpsy trance向けのキックや軽めのスネア等を使い、重心のある響きとスネアから生まれるグルーヴが特徴です。普段はもっと軽いキックを使っているので新しい試みになったんじゃないかなと思います。
サビの展開は純度100%自分の手癖ですね。リードはspliceで購入できるvirtual riotのsid leadです。ばちゃーらいつもありがとう!

Track02 - for

"In a dense fog"を拡張してEPとして整えるにあたり、2番目に作ったのがこの曲です。霧の世界をさまよう旅人が何かを探してさまよう心情を表現してみました。

アレンジについて

レファレンスは特にないですが、コードやパッドは大音量で鳴らしたときの気持ちよさを意識して制作しています。途中のアンビエントを刻む部分やサンプルを用いて淡々と広げていく展開は私の"Esophagus"でも用いた展開です。

アウトロでは次の"Anser"へ繋がるイメージを構築しています。3曲通しで聞くことで「彼」の旅路を追憶できることでしょう。

Track03 - Anser

アレンジについて

最後に作られた作品です。
本楽曲もレファレンスを置かずに制作しました。前2曲のアレンジを意識しつつ、"for"よりもメロディアスで、"In a dense fog"よりも穏やかな展開を目指した作品です。
この曲はメロの動かし方に特徴があり、普段の曲よりは横揺れ感が強いゆったりとした曲になったんじゃないかなと思います。また、途中の四つ打ちの展開はいわゆる四つ打ちDrum'n'bassではなく、テクノっぽいストイックなイメージのものです。最後の展開では意図的にメジャー感を強め、物語の終わりをイメージさせるような雰囲気に仕立てました。完全音程とメジャー/マイナーの使い分けによって楽曲の物語性を組み上げるという試みは以前から挑戦してみたかったことだったので、この曲は結構気に入っています。

音源はこれもだいたいserum!以上!

EP全体について

"In a dense fog"で示した「祈り」についての思索・探求がEPのテーマです。ジャケットは豊饒の象徴であるオレンジを選びました。オレンジは壊血病対策として18~19世紀の船乗りとともにあり、旅路を想起させるものです。 また、繁栄の象徴として洋の東西を問わず食されてきたものであり、これを食べることには(その汁を啜ることも含めて)生を齎すようなモチーフだと考えています。生きるために歩み、歩むために祈る。生と祈りは密接に結びついているのです。

霧の最中に旅人は歩みを進める
霧を裂く笛の音は苦悩を呼び覚ます
しかし、甘美な感覚を振り払いながら彼は言う、
今、悦びの中に居ると。

かつて私は言った。苦悩の中に悦びがあると。
霧が晴れれば虹が架かり、乗り越えた者を祝福するのだと。
虹は見えなくとも祝福の雨粒を感じる。
我が両目に映る霧は深い愛なのだから。

たこぴー - In a dense fog(prose poem)

今後の展望

今後は「インターネットやめないで」の活動を活発にしていけるように、リリースの支援やサークルとしての作品の発表などを行っていければ良いなと思います。春M3ではコンピレーションをリリースしたいな。12月までには何らかのお知らせをできればと思います。

それでは、また次回のイベントでお会いしましょう!

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