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昼休みに食う菓子

オフィスで菓子を食べている人は意外に多い。

夕方に差し掛かりそろそろ集中力が切れてきたなと思うとき、手元に菓子があると心強い。

糖分が脳に効く、噛む動作が眠気を覚ます等々、理由は色々ある。

ともかく、節度さえ保っていれば勤務時間中であっても菓子を食うことはさして咎められることではない。

私は、昼休みに菓子を食っている。弁当を食べた後に、である。

私の弁当箱は小さい。小さいので中身があまり入らず、少し足りない。菓子はその足りない分である。

ツッコミどころが無数にあって説明無しでは歯がゆいかもしれないが、昼休みに菓子を食っている理由を書くと長くなるので想像にお任せしたい。分かっているのは、日本のどこかに昼休みになると毎日菓子を食っているサラリーマンがいるという厳然たる事実である。

菓子は袖机へ大量にストックしている。もちろん袖机には文房具や書類も入っているが、菓子がかなりの面積を占めている。入れ過ぎてたまに閉まらなくなる。「何でこんなに菓子あるんだよ……」と自分でもたまにうんざりするが、ストックが減ってくると不安になってくるので常に満杯をキープしている。

持ち込む菓子には条件がある。

手を汚さずに食べられること。個包装であること。基本的にはこの2つが条件である。

菓子の商品形態としては割安で買えるファミリーパックがメインとなる。

そして、様々な種類の菓子を揃えておく必要がある。マンネリ化すると、業務の遂行能力減退につながる。

弁当を食べながら、スタメンの菓子3種を決める。

スタメンは先鋒・中堅・大将の順を定めておく。

先鋒には、食べてすぐに味がするチョコ系を選ぶことが多い。

中堅は先鋒の勢いを引き継ぎ、且つ大将への繋ぎとして、オールマイティーな味と食感が求められる。ブルボンの菓子が主な担い手である。

大将はその日の締めとして、先鋒と中堅の試合運びも意識した菓子を据える。きっぱりとその日の勝負を決めてくれる菓子が望ましい。 

スタメン、発表


たまに星型がある


先鋒は明治「アポロ」。弁当を食べた直後は口の中がまだ「昼飯」である。チョコ系の菓子で昼飯の感覚を一掃し、試合の流れを作る。

贅沢ルマンドもうまい

中堅のブルボン「ルマンド」で今は菓子を食う時間だと確定させる。ルマンドの上品な佇まいは空間を制圧する力がある。チョコ系でありながらサクサクとした食感を持ち、どのポジションにいても自分の仕事をする。

1922年生まれ

今日の大将はHARIBO「ゴールドベア」を選んだ。コストコにはバケツ状の容器に小分けのゴールドベアが大量に入ったタイプが売っていて、私が持ち込んでいるのはそれである。グミは良い。少ないのに食べ応えがある。

「勝ったな」。HARIBOのパッケージを開けた時点で勝利は約束されていたが、最後まで油断してはいけない。ゴールドベアには6種類のフルーツ味(パイナップル、レモン、オレンジ、ラズベリー、ストロベリー、りんご)があり、再び采配を迫られる。考え無しに収穫すれば、同じ味が連続したり、色合いのグラデーションを損なったりして無様な闘いとなる可能性がある。慎重に歩を進め、最後の1個は黄金に輝くパイナップル味にした。「失礼、収穫が遅れた」私はパイナップル味にわざとらしく挨拶した。パイナップル味も焦らされたことに軽く拗ねたのか、指から一度滑り落ちた。HARIBOという果樹園での無邪気な戯れ。パイナップル味は舌の上に微かな酸味を残して、果てた。

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