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「想像上の妻と娘にケーキを買って帰る」感想

 寺田健人さんの展示を見てきた。ファミリースナップの再生産と、そのズレの中で生きる妻と娘。散らかる玩具や衣服からも、立ち上がる彼女ら。デコ額が良かった。ピンクの多幸感。
 先日、私はドラマ「俺の家の話」を見た。ドラマの中で、能の演目「隅田川」について語られる箇所があった。下記の解説にある通りの議論について、主人公とその父が意見を交わしていた。

 終曲の、幻に会う場面は、子方を出さず、幻を母の演技だけで表現しようとする世阿弥と、子方を出そうとする作者元雅の間で意見が分かれ、当初から二通りの演出があったといわれています。(上記サイトから引用)

 ジョークっぽく言うと、「寺田君、世阿弥じゃーん」と言うことだけど、ここにこの作品の真面目が箇所がある気がする。もし写真の中に妻や娘が写っていたら、僕らは寺田さんの本当の家族なのかなと勘違いしてしまう。妻や娘が写っていないことで、何なんだろう?という揺さぶりをかけられる。これは能「隅田川」において、子方を出すか出さないかの議論に相似しているように思える。演劇や写真を信じる度合いを、試されているような展示で、面白かった。それはつまり家族の役割、家族写真を信じる度合い試されているということだ。



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