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『た子の足跡日記』ー有料老人ホームにてー

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有料老人ホームで10年間に出会った入居者様に感謝。 皆様お元気ですか?地上でも天国でも・・・
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2020年10月の記事一覧

夢は続くよどこまでも・・・(2)

『た子の足跡日記』ー有料老人ホームにてー 夢が大きくて悩みが尽きないユメコさん。 そのユメコさんの悩みを解決すべく、リハビリの先生が立ち上がった。 『歌会始めに出席するにはお金が掛かる!』 と、言う悩みだ。 「もしも、もしも、ユメコさんの歌が選ばれたなら、僕が街頭に立って募金を集めてあげましょう」 「でもね~私は車椅子でしょ~私一人じゃ行けないから・・・誰か付き添いがいるでしょ?」 「それじゃあ、付き添いの方の分も集めて・・・何だったら僕が付き添いますよ」 「天

夢は続くよどこまでも・・・⑴

『た子の足跡日記』ー有料老人ホームにてー ユメコさんは夢見る夢子さんなんです。 とにかく夢が大きいので悩みが絶えません。 今の夢は小説を書いて芥川賞を狙うこと! 「ねえ~、小説を書くって難しいわね。書きたいことは決まってるんだけど文章にならないわ」 「どんなことを書くんですか?」 「娘のこと・・・題名は『ひまわり』・・・私って、若い頃モテたのよ」 「じゃあユメコさんの娘時代の事ですか?」 「いいえ、娘のことよ。あの子はいい子だから・・ それでね。私が若い頃、質

🎶東京のガスガール

『た子の足跡日記』ー有料老人ホームにてー 介護業界に入って昔の歌をいくつか覚えた。 カラオケはレクリエーションの定番だからね。 ランコさんはとっても陽気なおばあちゃんだ。 シルバーカーを押している。 片足が悪いからシルバーカーを押して一歩前に出ては、もう一方の足を引きずるように前に進む。 歌が大好きでいつも楽しそうに歌を歌っている。 その歌い方には特徴がある。 強弱があって、へんなところで突然ボリュームアップする。 例えば『リンゴの唄』 ”♪リンゴは何にも いわないけ

トメさんの家族!

『た子の足跡日記』ー有料老人ホームにてー! トメさん百歳、小さいおばあちゃん。 居室には孫や曾孫から届いた手紙や写真が沢山飾ってある。 トメさんから広がる家族が、とっても温かく感じてうらやましい。 トメさんにはトメさんそっくりな娘さんが三人いて、娘さん達はとても仲が良い。 週に一回は二人、または三人で面会に来ている。 娘さん達が面会に来ると居室からはいつも 「ガハハハ・・ガハハアハハ・・」と、楽しそうな笑い声が聞こえて来る。 確かにトメさんは可愛くて居るだけで和むけれ

名調査員の足元

『たこの足跡日記』ー有料老人ホームにてー ミツエさんは電動車椅子に乗っている。 正義感が強く、社会的に弱い立場に立って色々な活動をして来た。 その経験を生かして、施設の内外に何か不具合は無いかと見回りに余念がない。 「今、カーテンを調べているの」 と、他人様の居室に遠慮なしに入って行って、レールは曲がっていないか?留め金はちゃんと付いているか?等々をチェック。 チェックはするだけで、だからどうって訳でもない。 床にきしみがないかチェック。 床にきしみがなくても、ある

カメラを向けるな!

『た子の足跡日記』ー有料老人ホームにてー 老人ホームでの楽しいエピソードを綴っています。 マツさんは写真を撮られるのが大嫌いだ。 理由は知らない。 大抵の方は「写真撮りますよ~」と言うと、にっこり笑ってくださるのだが、マツさんは逆に怒ってしまう。 なのでマツさんには「写真撮りますよ~」とは言わない。 「マツさん、ちょっとこっち向いてくださ~い」と言って振り向いたところをササッと撮るのが精一杯。 それでもカメラを見ると「止めて~」と言って怒ってしまう。 元々マツさん

あなたはタイムトラベラー

『た子の足跡日記』ー有料老人ホームにてー 老人ホームの楽しいエピソードを綴ってます。 ぬり絵を楽しんで貰おうと思い、今日届いたばかりの雑誌『月刊デイ』の、ぬり絵コーナーをコピーして、 「これに色を付けてくださいね」 と、言ってお渡しした。 「わし、昨日これ塗ったから・・・」 と、お断りがある。 「ええ~、今コピーして来たばかりですよ。昨日塗るはずないと思いますけど」 「塗った、塗った、散々やらされたよ」 「それじゃあ〇〇さん、色付けお願いします」 「あ~これね、

「ベットの下に猫居ます」

『た子の足跡日記』ー有料老人ホームにてー とってもおちゃめなおじいちゃんがいた。 『とんがりコーン』というお菓子が大好きでよく食べていた。 【明太マヨ】【バター醤油】など、色々な味があることを教えてくれた。 『とんがりコーン』を食べるとき、わざわざ人差し指にはめていた。 昔そんなCMを見たような気がする。 ある時『とんがりコーン』がベットの下に4,5個転がっていた。 最初は落としたのかと思い(あら、勿体ない)と、拾って捨てた。 次の日も同じようように落ちていたので(