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「セッターにはイケメンを選ぶ」

8年前の今日2月2日、北九州で講習会に招かれて、元オリンピアンの若き指導者の方とご一緒したときの至福の思い出。

会場に向かう電車の中でお目にかかり、初対面でしたが、ミーハー全開でいろいろ聞かせていただきました。

朝長孝介先生、本当に「ナイスガイ」でした。

2008年の北京オリンピックにセッターとして出場、男子バレーボールの16年ぶりのオリンピック参加への立役者で、その年度のVプレミアリーグを最後に引退、4月から長崎県の高校教員となり、現在は母校の大村工業高校で監督をされています。

FBに書いたものを読み返し、あらためて偉大なセッターだったなと思います。日本が低迷した大きな理由に「ミドル(センター攻撃、主にクイック)が使えない」ということがあり、朝長選手によって一時的に改善したけど、その後また「ミドルを使えないコンセプトのバレー」になってしまいました。

最近になって、日本の男子バレーも「ミドルの使い方」に改善が見え始めていますが、海外からはまだまだ遅れているのが現状だと思いますし、朝長選手が実現していたコンセプトは今もとても重要なものだと思っています。

以下は8年前に書いたものです。

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自分のことも、他のプレーヤーのことも、バレーもよく分かっていて、ストイックに努力を続けてこられた、そんな感じです。

全日本に選ばれたのも、6名ほどノミネートされていたセッターが軒並みケガで離脱し、紅白戦ができないので、「こいつなら邪魔しないだろう」という理由で合宿に呼ばれ、アジア選手権に出ることになり、そこでまたメインセッターがケガで離脱、セッターが一人しかいない状況で何年かぶりにアジア選手権優勝(ちょっとうろ覚えですが)といった感じでチャンスをつかみ、OQTのメンバーにもなってしまったとか。

そこでも「サブ」だったんだけど、最終的にはメインセッターとして北京の出場権を取ってしまった。確かに「強運」の持ち主なのかもしれないけど、朝長選手が(順当に)選ばれていなかったら日本男子の16年ぶり五輪出場もなかったんじゃないかとも思います。

なぜ朝長選手だったのか、朝長選手のウリは何だったのかという質問の答は「トス回し」でしたが、その中身は「一人一人のアタッカーが、どのポジションからどうやってスパイクを決めるのかというのを全部知っていて、試合展開の各場面で相手の守備がどう対応してきてそれに対してどう決めていくか、それがイメージできる」というようなものでした。
だから、「アタッカーが自分の決め方をできるようなトス」を上げることになる。

単に「打ちやすいトス」というレベルではなく、アタッカーのことをよく知っていて、相手の対応もよく知っていて、それらを何回もシミュレーションして試合に臨んでいたということなので、「セッターが合わせる」というコンセプトの理想型だったんじゃないかと思いました。

もう一つ強調されていたのが、「常に(試合の最初から最後まで)センターを腐らせない」

センター(MB)が「自分にはトスが上がらない」と思ったら、それは相手にも伝わり、サイドに完全に対応されてしまう。だから、センターを使える状況を維持する(どこからでも、まずセンターに上げる体勢をちゃんと作ってから攻撃を選択する)。使えるところでちゃんと使っていく(序盤・中盤で使わないで終盤で使えるわけがない)。そういうことを大切にしてきた。
今はそれができていないんじゃないか、だから攻撃がほとんどWSばかり、レセプションだって(悪いといわれているけど)そんなに悪くない。
そんなお話しでした。

講演で司会者から「人に対する観察眼」についての質問がありましたが、「相手の、プレーヤーとしての特性をしっかり捉える」というお答えでした。バレーボールの専門的な力の重要性は、人とのコミュニケーションにおいて相手のことをよく知ることが基本というのと同じだなと思いました。

後、記憶に残っているのは、「セッターはイケメン(顔のいいやつ)を選ぶ」。「私みたいに」と言って笑いを誘っていらっしゃいましたが、もうほんとにイケメンなのでとても笑うことはできませんでした。
(いつもチームメイトに顔を見せていなければならないポジションなので、いつもいい顔を見せているのが大事だというお話)

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実は朝長選手が大学4年の時のインカレの会場で、今は亡き都澤先生から「とてもいいセッターなんだけど、Vのチームで取ってくれるところを探してるんだよな」というようなことを伺っていて、全日本に選ばれたときとても嬉しかったんですよね。

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