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メルカリを卒業します

今日が4年弱働いたメルカリの最終出社日だった(在籍は7月末まで)。
タイミングやご縁なので、いずれは来るとどこかで思っていたものの、いざそのときになるとやっぱり寂しさを感じる。

諸々の返却や手続きをするためにオフィスを訪れたが、オフィスに人はほぼおらず。最後くらいはみんなで集まりたかったが叶わず・・・それでも数人には直接挨拶できたから良かった。

個人としても組織としても本当に目まぐるしく動き続け、他ではそう味わえないであろう濃厚な経験と学びを得させてもらえた。

携わったプロダクトが一つの国から撤退するといったとても辛いこともあった。

それでも、そんなGo Boldな挑戦を自分に与えてくれた会社やメンバーには感謝しかないし、次こそは成功させてやるという強いバネにもなっている。メルカリで得たあらゆることが血肉となって、今後に活きてくることは200%間違いないと断言できる。

そんなプロダクトとしても会社としても大好きなメルカリで働かせてもらってはや4年弱。振り返りに良いタイミングなので、個人的な回顧録を残しておく (長いし、そんなに綺麗にまとまっていない)。

入社のきっかけ

現JPのHead of Productのkeiさんに誘われたのがきっかけ。

keiさんとは、彼の前職のランサーズが主催したイベントで知り合った。そこから情報交換も兼ねてランチをするなど交流を続けているうちに、気づいたらkeiさんがメルカリにジョインしており『これから海外強めていくから』という話に惹かれ、あれよあれよと選考に進むことに。

前職と職種的に近いプロダクトマネージャー(以下PM)で応募する。2016年6月頃の話だったと思う。

※ メルカリでは、かつてPMのことをプロデューサーと呼んでいた。個人的な棲み分けとしては、プロデューサーは企画の比重が大きく、PMはより運用に責任範囲が及んだり技術理解も求められる。これまでの業務を考えると、メルカリの場合はPMのほうが適切な呼び方だと思っている。

選考は以下の順で進んだ。今思うと錚々たるメンバーと面接していたのだなと気付かされる。。

1. カジュアル面談:keiさん、濱田さん(現CINO)とご飯をご一緒し、USのプロダクトや分析周りのツールの話でひたすら盛り上がる。

2. 面接:伊豫さん(現メルペイCPO)。メルカリの改善案について根掘り葉掘り聞かれた記憶があるが、まともに答えられた気がしなかった + 終始謎のプレッシャーを感じていて、100%落ちたと思った。

3. 面接:進太郎さん。当時はPM選考の場合、最終面接は共通して進太郎さんだったらしい。伊豫さんと同じくメルカリの改善案についてや、前職で作っていたアプリの改善案についての話。もう一つ印象的だったのが『海外のメンバーをどうやってマネジメントしているのか&メルカリではどうすればいいと思うか』という質問だった。前職(今でいうHR Tech系ベンチャー)で、エンジニアの海外メンバー比率が半分を超えている中で仕事をしていたために質問されたものだと思う。模索していることをカジュアルに打ち明け、素直に受け止める進太郎さんのスタンスが印象的で惹かれた記憶がある。面接というよりも議論のような形式で楽しかった。

晴れてオファーをいただき、2016年10月に入社することに。

※ 小休憩に思い出話 - 高橋さん
入社時期について、もう少し待ってほしいという話をするために、高橋さん(現Yappli HR)が渋谷のBASE(メルカリの出資先)のオフィスまで来てくださったのが懐かしい・・・と同時に、そこまでしてくださることにただただ感謝でしたm(_ _)m

JP & US時代 (2016.10~)

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^ USに到着した日の夜 @ Market St.

入社後、最初に配属されたのはCXI(Customer Experience Improvement)というチーム。カスタマーサポート(CS)のメンバーが、お問い合わせ対応や商品監視のために利用する内製のツール(以下CS Tool)を改善するPMとして動くことになる。当時はこのチームがJPとUS両方のCS Toolを担当していた。

入社翌日、当時の上長だった苅田さんに『CSのヒアリングのために来週は仙台出張しましょう!』と言われていたのだが、その週の後半には『やっぱり来週からUS出張でお願いします!』というGo Boldなプランに変更される。

入社前にkeiさんから『メルカリでは来週からUS出張よろしく!というのはわりとある』と聞いていたのだが、まさか自分もその対象になるとは思ってもおらず、メルカリでの意思決定の速さと振り切り方が好きになった瞬間でもあった。

USには2週間ほど滞在し、CSメンバーから課題ヒアリングしたのち、Moderation(商品監視)ツールの機能追加を担当した。現場の声を整理して、スピード感持って実装を進め、オペレーションや体験が改善されるのをこの目で見るのはいつでも心地よい。

ちなみに当時はJPとUSでソースコードが共通だったため、USの要望を取り入れるとJP側にも影響が及ぶ。One sourceについては、以下のような印象を受けた記憶(めちゃザックリだが)。これはCS Tool限らずアプリプロダクトでも同様。

(+) 1リージョンで上手く行った施策を、他リージョンへ展開しやすい
(-) QAのコストがとにかく大きい / コードが肥大化しやすい (= 負債を生みやすい)

USでのひと仕事が終わり、さてJPに戻ろうというタイミングで、UK立ち上げの話が持ちかけられる。アプリは鋭意実装中だが、CS Toolを担当できる人が誰もいないとのこと。当時CXIのチームにはPMが自分含め3名おり、自分を除く2名でそれぞれJPとUSを見ていたので、UKは頼んだ!ということでUK CS Toolの立ち上げ担当になる。

そうと決まればJPへの帰国を待たず、UKのプロダクト責任者であったKazuyaさん(現メルペイ)やUKのCS責任者とコミュニケーションを取り始め、具体的な仕様や実行プランを練っていく。

ちなみにここまでで入社1ヶ月。

※ 小休憩に思い出話 - Kazuyaさん
Kazuyaさんとの1on1で『USからJPに帰国せずに、なんならそのままUKに来てほしい』と伝えられた(半分冗談だと思いますがw)。自分としてはそのままUKに行っても良かったのだが、ちょうど彼女(現妻)との同棲のための引っ越しを完了させる必要があり、日本に1週間だけ帰国し、引っ越しだけ済ませてUKに出張することとなる・・・

UK時代 - 赴任前 (2016.11~)

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^ アプリリリース時にオフィスの外でみんなで撮った写真 (よく見ると後ろで工事作業員の人もポーズとっているように見えるw)

現地に数回出張して、CS Toolの完成を急ぐ。

基本的な機能や構造は他リージョンと被るものが多かったので全てをfrom scratchで作る必要はなかったが、それでもお客さまの売上金を銀行に振り込むためのシステム連携はそれぞれで異なるなど、一部はUK独自のものを作る必要があった。その中で、お客さまの手元に売上金が着金するのが遅すぎるという課題に対し、入金スパンをシステム側でフレキシブルに変えられるようにし、入金までの時間を短縮する仕組みを導入できたのはこの時期の一つの成果だと言える。後にUSでもこの仕組みが活用/参考されたらしい(?)。

UK用にCS Toolをリリースした後、徐々に担当領域がアプリ本体に移っていく。

まずは日本でいうメルカリ便の現地版のリリース。このときは出張から戻ってきて日本からリモートでPMをしていたので、お客さまインタビューなどは当然物理的にできず(後にオンラインユーザーインタビューを実施するようになるが、この時期はまだ実施していなかった)、UIのドッグフーディングをGOT(Global Operation Team)のメンバーに聞きに行っていたのは懐かしい。

ちなみに、メルカリでの仕事を振り返るとこの頃は精神的にキツかった時期でもある。開発陣は全員UKにいるため、機能について何か不明点があったり、相談がある場合にどうしても自分がボトルネックになりやすく、進行が遅れてしまいがち。UKに合わせるために時間を遅めにシフトさせるも、自分の生活リズムには合わず。自分以外のPMは全員UKにいたため、あらゆるプロダクトの意思決定も現地でパパッと決まっていく(感覚があった)。。。結果として、当時の上長のKazuyaさんに赴任を打診して2017年夏からロンドンで仕事をすることが決まった。

UK時代 - 赴任後 (2017.8~)

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赴任してからは、JPにいた頃よりも目まぐるしくコトが進んでいった。全部詳細に書くと長すぎるので、以下にいくつか箇条書きで挙げる。

- 当時めちゃくちゃ高かった取引キャンセル率を、コミュニケーション施策や取引画面の内容の中で、キャンセルに繋がる"穴"を見つけてひたすら潰しに行った (結果、半減以上の効果を出せた)

- リテンションが課題だったため、ターゲット層が定着するようにホーム画面で商品をキュレーションする仕組み・運用体制を導入 (ターゲット絞りすぎたせいか、そこまで大きな効果出なかった)

- 広告からCVしてきても一定数が登録前離脱しており、かつ一定数『パッと見、どんなサービスかイマイチ分からない』というインサイトも得られたため、オンボーディングでのサービスコンセプト訴求強化 (結果、Day0登録率ギネス)

- リブランディング。お客さまインタビューの一部実施や仕様設計、リリース後運用まで。外部のデザイン会社も入れて実施していたリサーチでは、地方にも行って"都市部のバイアス"を切り離す工夫をしていたのは目からウロコだった (JPでもやっている時期があった)。リブランディングについては以下のメルカンもどうぞ

- GDPRのプロダクト側対応。登録率を下げない形でオンボーディングで同意フローを設けたり、設定画面の機能改修したり。当時はまだGDPRの対応例もあまり無かったので、リリース後も問題がないかヒヤヒヤしていた。

- etc

メンバーとタイムラグのないコミュニケーションを取りながらクイックに進められることや、オフィスにお客さまを呼んで実施するUXリサーチや街頭インタビューなど、現地にいるからこそ為せる・学べることは数多く存在し "Act locally"の重要性に気づけた。

一方で、この"Act locally"をもっと早くから始めておけばという大きな反省点がある (物理的にUKにいなかったので難しい面もあったが)。定量情報はどこからでもアクセスできる時代だが、定性の一次情報は未だローカルでないと得るのが難しい。結果として、仮説構築の精度が上がらずに回り道を繰り返す危険性を孕んでいる (し、実際一部そうなってしまっていたと思う)。

現地でPMと携わり始めて1年少々、2018年夏にUKの事業縮小を受けてJPに帰任することが決まる。このタイミングでは撤退についてはまだ一切知らなかったのだが、思い返すとこの時点で撤退については大方は決まっていたのかもしれない。

携わってきたサービスが縮小して、かつそれに関われなくなる無念さはもちろん、なにより現地で一緒に働いてきた素晴らしいメンバーたちが会社を去らなければならないということが本当に辛かった。どんな会社でも同じようなことが起こる可能性はある。同僚が自分の意志で去っていく転職の寂しさ・辛さとは比べ物にならない、ということだけはここで伝えておきたい。

とはいえ、撤退の意思決定が間違っていたとか、それを恨んでいるといったことは全くない。事業である以上、撤退ラインを設けないことのほうがリスクだし、情を捨てて実行すべきだと思っている。

多くの失敗から学び、次に繋がっていれば、"Go Boldなチャレンジだった!"と励まされるのがメルカリの良いところであり、実際にUKでの経験がいまのメルカリやメルペイに活きていることは言うまでもない。PMとしてひよっ子だった自分をUKに携わらせてくれたメルカリには本当に感謝している。

ちなみに上記の話は以下の記事にまとまっているのでご興味ある方はぜひ (なつきえふえむさんの神まとめに感謝!)。

JP時代 (2018.10~退職まで)

JPに戻ってきてから退職までは主に出品画面、特にカタログ(SKU)連携周りの施策に携わってきた。カタログ連携については、以下の事業戦略発表会の概要(商品データ連携の箇所)を読むと理解しやすい。

直近は一次流通から取得しづらいカタログ情報を、メルカリの既存の出品データから作るための機能展開に注力しており、現在ではごく一部の商品群で利用可能な状態になっている。

その他、カタログ周りの機能をお客さまにより使っていただくための機能改善を実施して如実に数字が伸びるなど、ホームランこそ打たないが毎期で継続してヒットを出し続けることができた。最近ではこのヒット率の高さは、実は自分の強みなのではないかと思っている。

ちなみに上で触れた機能改善は、UK時代の訴求改善の学びをそのまま転用したものだったのだが、期待通り再現性があった。お客さまのプロダクトや機能に対する理解度は、自分が期待しているレベルからはほど遠いことを肝に銘じてプロダクト改善すると良い。

また、専門メンバーの協力を得つつスクラムの運用やUXリサーチも積極的に導入し、定性面から施策を作りにいくことを試してみたり、UKで試して良かったものを輸入する動きもできた。

メルカリで働いていた期間、色んな人の力を借りて経験を積んで、それを別のところで再現して新しい学びを得る、といったサイクルができていたため常に働き甲斐のある会社だった。

何よりもミッションやバリューといったカルチャーの浸透が凄まじく、一緒に働く人と基本的には価値観が合わないということはまずなかった。企業の成功にカルチャーが必須とは言い切れないが、少なくともこれまで中の人として見てきたユニコーンレベル以上の企業(Facebook, メルカリ)では、共通してカルチャーの浸透が高いことから十分条件ではあると考えている (かといってカルチャーは一朝一夕で作れず、かつ鶴の一声で作れるものでもないためとても難しい)。

プロダクトとしても大好きで、いまや生活になくてはならない存在とさえ言える。退職した後も、いち利用者としてメルカリのGMVに貢献していきたい。

※ 小休憩に思い出話 - 育休
実はUK赴任中に妻が妊娠し、JPに帰ってきてしばらくして待望の娘が生まれた (今思うと、妻の負担を考えると帰任しておいて良かったとも思える)。出産後2ヶ月の育休を取得させていただいたが、子育てのハードさを痛感できる良い機会となった。その後も育児参戦する姿勢が身につくので、産後の育休はとにかくオススメ。奥さんと負担をちゃんとシェアしましょう。
メルカリには産休・育休・介護休業や妊活の支援といった『merci box』と呼ばれる福利厚生があり、育休は育児休業給付金で賄われない分も会社が負担してくれるという手厚さ。会社としてダウンサイドを支援するという、一貫したスタンスもメルカリの大好きなところ。

これから

なぜいま退職なのか。

たまたまこのタイミングで気になる企業に声をかけていただけたということに尽きるが、加えて個人的なキャリア観点で2つの理由が挙げられる。

1. 再び海外の市場で戦いたい (特にヨーロッパ圏での再チャレンジ)
2. がっつりプロダクトというよりは、もう少しビジネスサイドで戦略を引いたり売上を直接生み出すようなことを一気通貫で経験しておきたい

1について。メルカリに転職してきた理由である『日本発のプロダクトで海外と勝負する』がそのまま今回の転職理由にもなった形である (なぜ"日本発のプロダクトで海外と勝負する"のかについては次の会社に入社するときにでも記事を書こうと思うので、そこで改めて記載する)。

メルカリUSは?メルカリでもUS事業は大きな柱として継続しており、直近の決算でも発表のとおり数字としても着実に積み上がっている魅力的なプロダクトである。メルカリUSでもやれることはあるのではないかと思う一方、理由2に記載した担当領域やそれをやらせてもらえる事業フェーズを考えると、今のメルカリではないという判断をした。また、一度UKで撤退しただけでは諦めがつかないという理由もあり、ヨーロッパ圏で再チャレンジができる場所であることがベターだった。

2について。自身のキャリアを顧みたときの不安から来ている。20代後半にしてプロダクト一筋で、メルカリは良くも悪くも利益構造がシンプルなので、あまり売上や利益といったビジネスについて考えを巡らせたことがなく(もちろんプロダクト開発においては数字はとことん見るが、自分でお金を生み出している感覚は薄い)、今後自分で何かやりたいと思ったときに少し心許ないと感じていた。海外やプロジェクトマネジメントといった武器は引き続き携えつつ、プロダクト開発とはまた少し違った領域で武器を手に入れたい。向いていないと分かったらPMに戻ってくるかもしれないが。

次の会社については、まだ正式に入社したわけではないので、日を改めて中での動きも含めて別の記事で書く予定だ。

最後に

メルカリで過ごした4年弱、上手くいったこと・いかなかったことのすべてが貴重な経験でした。ここまで触れていませんでしたが、上場という会社の大きな節目をいちメンバーとして目の当たりにできたも良い思い出です。

メルカリを通じて自分と関わってくださった皆さんに、改めてここで感謝の気持ちを伝えさせてください。

本当にありがとうございました。
皆さんと一緒に仕事できて良かったです!!!
これからもよろしくお願いします!!!

※ ヘッダー画像は、つい最近オフィスのエントランスに飾られるようになったロゴアート。最終出社とタイミングが合ってお目にかかれました。エントランスにもともとあった椅子と、メルカリで購入して集めた素材が、こんなにも素敵な作品になる。詳細は以下の記事にて。

「循環型社会の実現」含め、実現したい世界を掲げたら、お世辞抜きに凄い量の行動とアウトプットでそれを実現しようとするのがメルカリ。しかもそれが自然発生するからスゴいんです。そんな素敵な組織で素敵な仲間と働けた自分はとんでもない幸せものだと、このロゴを見ながら胸がアツくなりました。


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