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非公表裁決/キャラクターのローカライズ業務を行う法人は「著作権の提供」を主たる事業とする法人に該当するか?

2017年12月にサンリオがタックスヘイブン対策税制に基づく更正処分を受けて審査請求をしたことがニュースになっていましたが、上記はその事案の裁決のようです。

「サンリオ、タックスヘイブン対策税制に基づく更正通知の受領と当社の対応について発表」

サンリオの適時開示によると2019年6月11日に取消訴訟を提起したとのことですが、その直前の同月20日に裁決が出されていますので、審査請求が棄却されることを見越して訴訟を提起したということかもしれませんね。

「タックスヘイブン対策税制に基づく更正処分に対する取消訴訟の提起について」 

主な争点は、特定外国子会社等に該当する外国法人(A社)の主たる事業が措置法66条の6第3項に規定する「著作権の提供」に該当するかということで、請求人は、A社は「現地顧客による商品化に向けて、市場ニーズや顧客ニーズ等を取り込んだデザインや商品等の企画、開発及び提供を含め、経済合理性のある様々な事業活動を現地で積極的に行って」おり、そのような事業は「著作権の提供」には該当しない旨を主張していました。

デンソー事件の最高裁判決の判示を意識した主張のようです。

平成29年10月24日最高裁第3小法廷判決

これに対し、審判所は、A社の業務が、「単に著作権に係る権利の利用に関する再許諾だけでなく、請求人又は■■から利用許諾を受けた著作物のキャラクターに翻案等を加えて二次的著作物を創作するなど、キャラクターの■■■■■■■■■■の開発等を行うことも前提とされている」ことを認めつつ、A社が「単に本件利用権の再許諾のみならず、二次的著作物を含むキャラクターの■■■■■■■■■■の開発等による業務を行っているとしても、当該開発等により生ずると認められる二次的著作物の権利は、■■■■■■■■(A社)に帰属することはなく、その一切が制作と同時に請求人に帰属した上で、最終的に、■■■■■■■■(A社)とサブライセンシーとの関係で■■■■■■■■■■■■又は■■■■■■■■■■■■がなされ、その対価として■■■■■■■■(A社)は各ロイヤリティ収入を得ているものと認められる」ことや、A社が「サブライセンシーに対して二次的著作物の制作等に係るデザイン料又は監修料を別途請求することなく、■■■■■■■■■■■■■及び■■■■■■■■■■■■■で定められたロイヤリティ料率等に基づき、各ロイヤリティ料を収入しているものと認められる」ことからすると、A社がキャラクター等を利用する権利について、「サブライセンサーとしての地位に基づき、サブライセンシーとの間で本件各サブライセンスによる著作権の提供に係る事業を行っていることは明らかである」と判断して、請求人の主張を排斥しました。

黒塗りにされている部分が少なくないこともあるのでしょうが、いまいち趣旨が分かりにくいですね。

キャラクターに翻案等を加えて二次的著作物を創作したりしていても、それはサブライセンシーからロイヤリティ収入を得るための補助的な活動に過ぎないという趣旨のようにも思えるのですが、そのような判断をするには、その前提となる事実の認定が不足しているようにも思えます。

あと、「『主たる事業』の判定・・・・は、現実の当該事業の経済活動としての実質・実体がどのようなものであるかという観点から、事業実態の具体的な事実関係に即した客観的な観察によって、当該事業の目的、内容、態様等の諸般の事情(関係当事者との間で作成されている契約書の記載内容を含む。)を社会通念に照らして総合的に考慮して個別具体的に行われるべき」(東京地裁平成21年5月28日判決)などと解されていることからすると、A社の具体的な事業実態の認定が必要であったはずなのですが、認定事実が殆ど契約書の記載を引用しているだけというのも物足りない気がします。判決ではもう少し突っ込んで判断をしてほしいですね。

ところで、上記の争点とは別に、A社が納付した外国法人税について外国税額控除を適用しなかったことの是非が争点となっているのですが、これは少し気になりますね。

外国税額控除の適用には、確定申告書、修正申告書又は更正の請求書に外国税額明細書の添付が必要とされているので、原処分庁は、外国税額控除の適用がないものとして更正処分をしていたのですが、請求人はそれがおかしいと争ったようです。

タックスヘイブン対策税制を適用した更正処分を争いつつ、タックスヘイブン対策税制の適用を前提として外国税額控除の適用を求める更正の請求をすることは矛盾するようにも思えるので、請求人の気持ちもよく分かるのですが、そこは割り切って更正の請求をしなければなりませんよね。

適時開示によると2013年3月期から2016年3月期が更正処分の対象となっていたようですので、一部については裁決が出た時点で更正の請求の期限が過ぎてしまっているのですが、大丈夫だったのでしょうか?

どのように争うかというのを間違えると代理人の賠償責任にも繋がりかねないので怖いですよね((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル

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