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弁護士/税理士/公認会計士協会準会員/元国税審判官 国税不服審判所の裁決について、感想…

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弁護士/税理士/公認会計士協会準会員/元国税審判官 国税不服審判所の裁決について、感想をいったり、ケチをつけたり、たまに解説をしたりもします。行政文書開示請求で入手した非公開裁決のファイルもアップします。アップした裁決書はご自由にお使いください。

最近の記事

非公表裁決/申告等で損金算入されていない欠損金が「所得の金額の計算上損金の額に算入されたもの」に該当するか?

法人税の申告や更正といった税額の確定手続においては損金の額に算入されていなかった欠損金額が、法人税法57条1項括弧書きの「当該各事業年度前の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されたもの」に該当し得るかが争われた事案の裁決です。 上記の説明では、どのような事案で何が問題となったのか分かりにくいと思うのですが、欠損金額を増減させる更正については、欠損金の繰越期間に合わせて更正の請求の期限と更正の除斥期間が伸長されている(通則法23条1項、同法70条2項)ため、例えば、以

    • 非公表裁決/ケイマンLPSに対する役務提供は「居住者」に対する役務提供に該当するか?

      英国ケイマン諸島(ケイマン)の特例有限責任パートナーシップ(本件LPS)の無限責任パートナーであった請求人による本件LPSの資産の管理業務の提供(本件役務提供)が、「居住者」(消費税法施行令1条2項1号)に対する役務提供に該当するかが争われた事案の裁決です。 本件役務提供が国内で行われていたことに争いはありませんので、それが「居住者」に対するものであるとすると課税取引として消費税が課税されることになるのに対して、「非居住者」に対するものであるとすると免税取引として消費税が課

      • 非公表裁決/社会福祉法人が生産活動に従事する者に支払った工賃が課税仕入れに係る支払対価に該当するか?

        社会福祉法人である請求人が障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)に基づく障害福祉サービスを利用して生産活動に従事する者に支払った工賃が、「課税仕入れ」(消費税法2条1項12号)に係る対価に該当するかが争われた事案の裁決です。 少し前に読売新聞の記事にもなっていましたので、ご存じの方も多いかもしれません。 具体的に争われたのは、社会福祉法人が生産活動に従事する者に支払った工賃が生産活動の従事の対価であるのか、福祉サービスの一環として利用

        • 非公表裁決/相続開始時点において消滅時効が完成している貸付債権の時価は?

          相続開始時点において消滅時効期間が経過している貸付債権が「その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれる」(評価通達205)ものに該当するかが争われた事案の裁決です。 少し事案は異なるのですが、過去の裁決には、①相続開始時点において所有権の取得時効期間が経過していた土地の「時価」を零円であると認めたもの(平成19年11月1日裁決)や、②相続開始時点において賃借権の取得時効期間が経過していた土地の「時価」の算定にあたり、相続人が支払った解決金相当額を控除することを認めたもの

        非公表裁決/申告等で損金算入されていない欠損金が「所得の金額の計算上損金の額に算入されたもの」に該当するか?

        • 非公表裁決/ケイマンLPSに対する役務提供は「居住者」に対する役務提供に該当するか?

        • 非公表裁決/社会福祉法人が生産活動に従事する者に支払った工賃が課税仕入れに係る支払対価に該当するか?

        • 非公表裁決/相続開始時点において消滅時効が完成している貸付債権の時価は?

          非公表裁決/20年前の同族会社への宅地の譲渡が不合理分割に該当するか?

          相続開始の18年~20年前に行われた同族会社への不動産の譲渡が著しく不合理な分割に該当するものとして、当該譲渡前の画地を「1画地の宅地」として評価をすべきかどうかが争われた事案です。 宅地は利用の単位となっている1区画の宅地(1画地の宅地)を評価単位とすることとされていて、所有者が異なる宅地は、原則として、別々に評価すべきことになるのですが、贈与、遺産分割等による宅地の分割が親族間等で行われ、その分割が著しく不合理であると認められる場合における宅地は、その分割前の画地を「1

          非公表裁決/20年前の同族会社への宅地の譲渡が不合理分割に該当するか?

          非公表裁決/帳簿に記載された日付が誤っていた場合に仕入税額控除は認められるか?

          課税仕入れに係る取引について総勘定元帳に記載された日付が、その課税仕入れを行ったと認められる日と相違していた場合に、その課税仕入れに係る消費税額の控除(仕入税額控除)が認められるかが問題となった事案の裁決です。 ご存知のとおり、仕入税額控除をするためには、仕入税額控除に係る帳簿及び請求書等の保存が必要であり(消費税法30条7項)、その帳簿には、①課税仕入れの相手方の氏名又は名称、②課税仕入れを行った年月日、③課税仕入れに係る資産の内容、④課税仕入れに係る支払対価の額を記載す

          非公表裁決/帳簿に記載された日付が誤っていた場合に仕入税額控除は認められるか?

          非公表裁決/顧客の利用したポイント相当額が課税資産の譲渡等の対価の額に含まれるか?

          ポイントプログラムの加盟店が顧客からポイントの利用を受けた場合に、利用されたポイント相当額が課税資産の譲渡等の対価の額に含まれるかが争われた事案の裁決です。 ポイント制度の消費税法上の取扱いについては、税務弘報の2022年8月号でも特集が組まれていましたが、ポイントの法的性質が明確でないこともあって、悩ましい問題が多いですよね。 この裁決も、税務弘報の2022年8月号の特集記事で紹介されていましたので、御存知の方も少なくないかもしれません。 事案はシンプルで、第三者が運

          非公表裁決/顧客の利用したポイント相当額が課税資産の譲渡等の対価の額に含まれるか?

          非公表裁決/インド法人に支払った共同研究契約に基づく報酬が「技術上の役務に対する料金」に該当するか?

          新薬候補化合物の創出を目的とする共同研究契約に基づきインド法人に支払った報酬が「技術上の役務に対する料金」(日印租税条約12条4項)に該当するかが争われた事案の裁決です。 日印租税条約では、「技術上の役務に対する料金」について、いわゆる債務者主義がとられている(12条6項)ため、インド法人がインド国内で行った「技術上の役務」であっても、その料金の支払にあたり源泉徴収をしなければならないということは、よく知られた話ですよね。 ただ、実際に「技術上の役務に対する料金」に該当す

          非公表裁決/インド法人に支払った共同研究契約に基づく報酬が「技術上の役務に対する料金」に該当するか?

          非公表裁決/ドバイ法人である請求人が日唖租税条約の「一方の締結国の居住者」に該当するか?

          UAE(アラブ首長国連邦)のドバイ首長国内を本店所在地とする請求人が、日唖租税条約4条1項に規定する「一方の締結国の居住者」に該当するかが争われた事案の裁決です。 日唖租税条約が適用される「一方の締結国の居住者」とは、「一方の締結国の法令の下において、住所、居所、事業の管理その他これらに類する基準により当該一方の締結国において租税を課されるべきものとされる者」をいうと定義されているのですが、ドバイ首長国では、法人に対して課税をする旨の法令(ドバイ所得税命令及びドバイ所得税勅

          非公表裁決/ドバイ法人である請求人が日唖租税条約の「一方の締結国の居住者」に該当するか?

          非公表裁決/青果卸売会社が農協等に支払った「集荷対策費」は寄附金に該当するか?

          青果卸売会社である請求人が、仲卸業者等に対する委託販売において、実際の販売価格が委託者である農協等の希望価格を下回った場合に、その差額分を自ら負担して農協等に支払っていたところ、その差額分の支払いが寄附金に該当するかが争われた事案の裁決です。 事案の内容等から、少し前に報道された名古屋のセントライト青果に対する課税処分の事案だと思います。 委託販売ですので、請求人とすれば、法的には、農協等の希望価格に拘わらず、実際の販売価格から販売手数料を差し引いて農協等に支払えば足りる

          非公表裁決/青果卸売会社が農協等に支払った「集荷対策費」は寄附金に該当するか?

          非公表裁決/資産管理会社の株式を「S1+S2」方式により評価することが著しく不適当と認められるか?

          上場企業の創業家の資産管理会社の株式について、評価基本通達189‐3但書において選択が認められている「S1+S2」方式ではなく、純資産価額方式により評価すべきであるかが争われた事案の裁決です。 上場企業の創業家の資産管理会社の株式の評価といえば、以下のように、旧トステムの創業家、HOYAの創業家、キーエンスの創業家の資産保有会社の株式について、いずれも評価通達による評価が認められずに課税されたという報道もありましたが、この裁決の事案は、それらとは別の事案のようです。 「旧

          非公表裁決/資産管理会社の株式を「S1+S2」方式により評価することが著しく不適当と認められるか?

          非公表裁決/外国法人に対する係争中の金銭債権が国外財産調書に記載すべき「国外財産」に該当するか?

          請求人が韓国の銀行を被告とする訴訟で請求していた金銭債権が、国外財産調書に記載すべき「国外財産」であるかが争われた事案の裁決です。 メインの争点は別にあって、上記の争点は、税額への影響も限定的な付随的な争点に過ぎないのですが、審判所の判断に疑問があったので取り上げさせて頂きました。 事案の概要は、以下のとおりです。 そして、本件加算特例の適用について、請求人は、民事訴訟において本件銀行に対する預金返還請求権の存否が争われており、平成25年12月31日時点では確定していな

          非公表裁決/外国法人に対する係争中の金銭債権が国外財産調書に記載すべき「国外財産」に該当するか?

          非公表裁決/取引先の接待や従業員の慰労のために支出した飲食費が必要経費に該当するか?

          医師である請求人が、取引先等の接待のために支出した飲食費や従業員の慰労・親睦を図るために支出した飲食費が必要経費に該当するかが争われた事案の裁決です。 いずれも感覚的には必要経費として認められてもおかしくないような費用だと思うのですが、審判所は、以下のように必要経費には該当しないと判断しました。 うーん、厳しいですね。 この事案では、上記の判断の対象となった「本件費用B」や「本件費用C」とは別に、医療法人を設立しなければ分院を開設できないはずであるのに、分院長をスカウト

          非公表裁決/取引先の接待や従業員の慰労のために支出した飲食費が必要経費に該当するか?

          非公表裁決/LBOを目的とした借入れに係るアレンジメントフィーは繰延資産に該当するか?

          LBOを目的とする資金の借入れを行うために金融機関に支払ったアレンジメントフィーを繰延資産として計上すべきか、支出した事業年度の損金に算入すべきかが問題となった事案の裁決です。 いわゆるアレンジメントフィーの税務上の取扱いについては、TAINSにも掲載されている東京国税局の「法人税及び消費税等の処理における誤り易い事例とそのチェックポイント」に以下のように記載されています。 ネット上で確認できるものとしては、国税速報の「シンジケートローンに係る手数料の損金算入時期について

          非公表裁決/LBOを目的とした借入れに係るアレンジメントフィーは繰延資産に該当するか?

          非公表裁決/台湾の土地増値税は外国税額控除の対象となる外国所得税に該当するか?

          請求人が台湾の土地の譲渡により台湾で納付した土地増値税が外国税額控除の対象となる外国所得税に該当するかが争われた事案の裁決です。 実は、平成14年に全く同じ論点について判断した公表裁決がありますので、非公表裁決としてご紹介する意味はあまりないのですが、論点としては面白そうでしたので、この機会に取り上げさせて頂きました。 外国税額控除の対象となる外国所得税の範囲については、所得税法施行令221条で以下のように定められています。 他方で、台湾の土地増値税の課税標準は、実際の

          非公表裁決/台湾の土地増値税は外国税額控除の対象となる外国所得税に該当するか?

          非公表裁決/DCF法による株式価値の算定にあたり非事業用資産とすべき現預金の範囲は?

          請求人が国外関連者に譲渡した外国子会社の株式の譲渡価額が適正な価額に比して低廉であったかどうかが争われた事案の裁決です。 これは、4年くらい前に報道されたパナソニックに対する課税処分の事案ですね。パナソニックからもプレスリリースが出されています。 裁決についても、昨年の9月に税務通信で紹介されていましたので、ご存じの方もいるのではないかと思います。 具体的に問題となったのは、譲渡した外国子会社(PNA社)の株式をDCF法により評価するにあたって非事業用資産とすべき現預金

          非公表裁決/DCF法による株式価値の算定にあたり非事業用資産とすべき現預金の範囲は?