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非公表裁決/側溝及び縁石は私道の一部としてではなく、宅地の一部として評価されるべきか?

側溝及び縁石が、不特定多数の者の通行の用に供されている私道として評価すべき部分に含まれるのか、それとも宅地として評価すべき部分に含まれるのかが争われた事案の裁決です。

他にも色々と争われているようなのですが、個人的にはあまり興味をそそられなかったので、この争点だけ取り上げることにします。

具体的には、以下のような土地の「本件側溝」(水色部分)と「本件東側縁石」(桃色部分)について、不特定多数の者の通行の用に供されている私道に含まれるのか、宅地に含まれるのかが問題となりました。

本件土地の位置関係

この点について、審判所は、以下のように、「本件側溝」と「本件東側縁石」のいずれについても、宅地に含まれると判断をしました。

 この点、雨水等の排出設備である側溝は、建築物の敷地内に雨水等の排出等のための施設を設置しなければならない旨規定した建築基準法第19条《敷地の衛生及び安全》第3項の規定に基づいて宅地内に設置されるもので、宅地としての利用を実現するために普遍的に必要な施設の一つであるから、社会通念上、建物敷地部分と一体として宅地とみるのが相当である(このことは、上記イの(c)のとおり、道路位置指定がされている範囲が、本件隣地境界線から本件西側緑石の東端までであり、本件側溝を含んでいないことからも明らかである。)。
 したがって、本件側溝及び本件東側緑石は、宅地とみるべきであり、評価通達24の後段に定める不特定多数の者の通行の用に供されている私道には含まれないものと認められる・・・。

うーん、建築基準法等の道路法制にはあまり詳しくないのですが、この判断には違和感がありますね。

この事案で問題となった私道というのは、建築基準法42条1項5号の道路(いわゆる位置指定道路)なのですが、位置指定道路として指定を受けるためには、「道及びこれに接する敷地内の排水に必要な側溝、街渠その他の施設を設けたものであること」という基準に適合することが必要とされている(建築基準法施行令144条の4第1項5号)ので、「本件側溝」(及び「本件東側縁石」)というのは、位置指定道路として指定を受けるために必要なものとして設けられたものではないかと思うのですよね。

位置指定道路に側溝を設ける必要があることについては、各地方自治体が定める道路位置指定基準にも、記載されていて、例えば、大阪市の道路位置指定基準には、「指定道路には、(14-5)による側溝、縁石、中心杭、及び表示板を設け、他の土地と区画しなければならない。」などと記載されていたりします。

審判所は、側溝が「建築物の敷地内に雨水等の排出等のための施設を設置しなければならない旨規定した建築基準法第19条《敷地の衛生及び安全》第3項の規定に基づいて宅地内に設置されるもの」であると判断しているのですが、建築基準法19条3項は、正確には、「雨水及び汚水を排出し、又は処理するための適当な下水管、下水溝又はためますその他これらに類する施設」を設置しなければならないと規定していて、側溝というのは、「下水管、下水溝又はためます」とは用途が違いますので、それらに「類する施設」ではないようにも思えます。

そもそも、一般的な宅地では、宅地内に側溝なんて設置されていない訳ですから、建築基準法が側溝を宅地内に設置することを求めているというのも変ですよね。

なお、「本件側溝」については、道路位置指定されている範囲に含まれていなかったようですが、これも、蓋のないU字側溝は位置指定道路の有効幅員に含まれないことにされているからではないかとも思われます。

いずれにしても、一般に側溝が「社会通念上、建物敷地部分と一体として宅地とみるのが相当である」という判断は、寧ろ「社会通念」に反しているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

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