筋トレ開始

 職場にいるハタチくらいのアルバイトの女の子。
 いつもオーバーサイズのTシャツにダボっとしたパンツを履いているのだが、この間、ピタッとしたTシャツをパンツにインしていた。パンツはスキニーパンツで、そして驚いたのだ。

 ウエストの、脚の、細いこと。

 こんなに細い子だったんだ。

 細い太ももを遠くから少しの間、凝視してしまった。

 そして思った。

 「全然筋肉ないんだろうな」と。

 今は「スタイルが良い」で済むが、年を取ったら今以上に筋肉がなくなってしまう。この子は自力歩行寿命が短いのではないかと思った。

 否、自分こそどうなのだ。怠けた生活で体が緩み筋肉の多くが脂肪に変わってしまった私も自力歩行寿命が短いのではないか。

 アルバイトの子の細い太ももを見た日の夜から筋トレを始めた。
 寝る前に太ももと、ついでに腹筋も鍛えることに。
筋トレをするなんて、少し前の怠けた自分からは考えつかない。

 数日すると筋トレ量を増やしたくなり、寝る前の筋トレだけでなく、自転車に乗るときは一番重いギアで走るようにした。坂道でもだ。
 今までは軽いギアで通勤の往復1時間ずっとタラタラ漕いでいた自分からは信じられない。

 一番重いギアのまま往復1時間漕いだ翌日はお尻と股が筋肉痛になった。
 歩くたびに痛みがあるが、ちゃんと効いているんだ、とその痛みが嬉しかった。

 数日すると太ももは少し太く、お尻は今までよりも硬く、そしてヒップアップというやつだろうか、プリンと出っ張った。私は人一倍脂肪が付きやすいが、人一倍筋肉が付きやすい体質でもある。

 昨日は足首に巻く重りを買ってきた。寝る前の筋トレ時に取り付けて、より負荷をかけてみた。

 自力歩行寿命が伸びてきているはずだ。老後が少し安心になってきた。

 ありがとう、アルバイトの女の子。
 でも君も鍛えたほうがいいよ。

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