禁断の代償 第一巻: 「告発の影」
プロローグ
この世界では、愛することさえも許されない。
それが、この国に住むすべての人々が知る厳然たる現実だった。不倫や浮気は単なる道徳的な逸脱ではなく、法によって裁かれる犯罪行為とされた。家庭は国家の基礎であり、その基盤を揺るがす行為は社会全体の安定を脅かすとされていた。
高層ビルが立ち並ぶ都市の片隅に、小さなアパートの一室があった。夜の帳が降りる中、その部屋からは薄暗い光が漏れていた。光の中で、ひとりの女性が窓際に佇んでいた。彼女の名前は佐藤真希。35歳、専業主婦。