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なんばの広場

難波の高島屋前にできた広場にようやく行けた。できる前の社会実験も記憶にあるし、人づてにその苦労も聞いていたし、御堂筋の歩行者空間化の一環でもあるんので、なかなか感慨深い。小さな頃から見てきたこの場所が歩行者専用の広場になっている。タバコ臭くティッシュ配りやら募金活動やらバンドやらでうるさく、いそいそと通り過ぎるか、落ち着かず色々な人を待っていた場所。どんな空間をめざし、どんな空間になったのか。
SNSで見ていた写真である程度わかっていたが、実際に行ってみると、うーんと首を捻り、そして納得感もあり、でも残念な気持ちになった。高島屋前から商店街に向かう動線空間となる東側のゾーンは、ただただ歩行者動線を拡げただけの舗装空間。たしかに、そうなるかも、という気もするが、やはり残念だ。ベンチを置くくらい出来ただろうし、たとえベンチを置くと邪魔だというのだとしても、街路樹くらい植えられただろう。あまりに殺風景。うめきた広場のように舗装のデザインで魅せるわけでもなく。これは中之島公会堂やこども本の森の前の歩行者空間と同じくらい残念な空間。
かつて喫煙所のあった御堂筋側には、段々のステージのような場所が設え、ここには街路樹とイベントとして四角い箱が置かれていた。四角い箱にはさまざまな模様の光が投影され、ビームを夜空に放っている。季節柄といえ、このようなアートはいいな。映えるというか、ちゃんと都市の遊びとして楽しませる気持ちがある。ただこの段々が視認性が低く、いかにもつまずきそうなデザインで、さらには街路樹の植栽桝の石が危ないのか街路樹ごとにその四隅に赤いコーンが立っていた。写真映え命じゃないの?せめて真っ白のコーン買ってこい!て言いたくなるが、そもそもだし。なんというか、ああ、「公共」の空間だなとガックリした。こういう広場空間に彩りを添えるテンポラリーな設えもない。動かせるもの、利用者に委ねられるインタラクティブなものが一切ない。
三宮のパイ山とか、地下道だけどサンポチカとか、ああいった文化やクリエイティブを感じるものが全くない、デザイナーではなく、それを頑なに許さなかったであろう市の土木行政にものすごく残念な気持ちになった。なぜ大阪は御堂筋の側道廃止や中之島公園の車道廃止やこの広場化など、政策、計画的には正しく真っ当に突き進め実現できるのに、最後のデザインのところで失敗を重ねるのだろう。(御堂筋の側道は自転車道になっているが少なくとも難波〜心斎橋間は機能しておらず、歩道の補完的機能として重用できているが、ベンチのデザインがややチープだ)
ただ、この広場に関しては、地元商店街がラジオ体操など小さな取組みを始めていることはとても頼もしい。たとえ大都市のシンボル空間だとしても、そういった人間的な営みで日々利用されていくことが重要だと思う。ハレの場でもあるかとは思うが、地域に愛されて丁寧に管理されているほうがいい。世界一美しいといわれるカンポ広場も、巨大なイベントのときが美しい、素晴らしいわけではなく、恋人たちや仲間たち、一人の人もゆったり寝そべったりして広場を通じて街と交わっているようなあの日常の風景が美しいのだろう。
これからに期待せざる得ない。

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