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マイレビュー 大阪

柴崎友香と岸政彦の共著の「大阪」を読了。

たまたま今日この日、久しぶりに心斎橋に行き、建て替わった大丸に初めて足を踏み入れ、改修の済んだ心斎橋駅のプラットフォームに降り立った。まさにこの本の最後のほう、柴崎さんが話題にしていた場所である。
GWに奈良の実家に帰ったときに、父親の本棚から借りてきた。たしか兄が読み、父に勧めた本だった。良かったよ、と父が言っていたのを思い出し、読み始め、持って帰ってきた。
柴崎さんは何冊か読んだことのある、割に好きな作家だ。小説はもちろんのこと、映画化された2作品は映画も好きだ。年齢は8歳も年上だったことをこの本で知ったが、ずっと同世代だと思っていたし、やはりこの本を読むとほとんど同じような体感の青春時代を過ごしている。
私と同じ大阪市内の海の近くに育ち、大阪のちょっと偏差値の高い自由な校風の高校を出て、同じ大阪の公立大学(府大と市大で違う、今は同じだけど)を卒業している。
私はアメリカ村のカンテに通ったり、ライブハウスに行きまくったり、小説家になったりはしなかったけど、高校生の頃には大正の工場や倉庫の並ぶ街を彼女と当てどなく自転車で通り抜けていたし、アメ村のヴィレッジヴァンガードに通ったり、大丸のあの壮麗な建築に憧れたり、シネ・ヌーヴォで訳の分からない映画を観たり、おそらく見てきた風景がよく似ている。そして、街に関わる仕事を今しているからゆえに、彼女と岸さんの街への眼差しはとても共感できるし、勉強になった。
そして、大阪という街、大阪人という人に対する見方や意見も。
失われつつあったり、変わっていく大阪の街。インバウンド以降めっきり足が遠のいてしまい、久しぶりに訪れた心斎橋筋商店街。だいぶ様相が変わっていたけど、たしかにここは今も大阪なんだろう。もしかしたら、あの頃と跡形もなく変わったのかもしれないけど、きっと誰かにとっては同じ大阪で、あるいは別のところが同じように、柴崎さんや岸さんや私やその他大勢の大阪人たちを救ったように、支えたように街は街なんだろう。

柴崎さんが文藝から連絡があった日に嬉しくて中村一義を歌って帰ったというくだりが、あまりにも共感できて、ちょっと恥ずかしいくらいだった。
中村一義は特別な日に歌いがち。


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