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映画とわたしたち

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映画及びドラマに関するエッセイ。(昔は批評めいてました)
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#映画感想文

『ナミビアの砂漠』

映画を観たあとに、YouTubeでみたナミビアの砂漠(ライブ配信)。オアシスには知らない同じ種類の動物がぞろぞろと集まっていて、調べると彼らは「オリックス」という動物らしかった。ナミビア国の国旗にも象られているという彼らはのそのそと、いっこうにそこから去る気配もなくオアシスの周りをうろついていた。しかし、その数時間後に再び配信を開いてみると、今度は知らない馬の群れが集まってきていて、オリックスはもういなくなっていた。その馬の名前を調べる気力は残っていなくて、しばらくそのまま配

『夜明けのすべて』

 自転車から見る光景は特別だ。サドルに跨ったゆえの視線の高さ、15km/h前後の独特のスピード、それゆえの絶妙な向かい風。マンションが木になって、電信柱になって、ネットフェンスがしばらく続いて、電車がわたしに目もくれずにゴオオと音をたてて追い抜いていってしまう。その電車を遠くに見やったところで坂を上り終えていて、ふと振り返ると富士山が見えていたりする東京の空。  坂はアップダウンを繰り返す。まるで彼らのままならない体や心の調子のように、上がったり下がったり。山添くん(演:松

『怪物』

 5月は1度しか映画館に行かなかった。多忙?森道に行ったりしてやたら土日が埋まっていたから?仕事ではやる気持ちがそうさせた?よくわからないが、まるでそのツケが回ってきたかのように、仕事で今までの自分からしてあり得ないようなミスを連発していた。映画を観る行為、否映画館に行くことそのものが、もはや自らのライフスタイルの中に埋め込まれているのではないか。意識的に映画館に足を運ぶ、そうすることで救われていた思いが多少なりともある。文字を読んでいて目が滑るように、映画を観ていて仕事のこ

『ドライブ・マイ・カー』

 車の運転ほど、腰が上がらないものはなかった。記憶が正しければ2017年の半ばに教習所を卒業したが、実際に免許を取りに行ったのはその年の暮れだった。同志社大学に在学していたので、あまり勉強しなくても最後の筆記試験に合格するだろうと思っていたら普通に落ちた。  そもそも教習所だって9か月くらい通った。人生で数名程度存在する、「こいつとは何話してもダメだ」と思う人物の一人が、教習所の担当教官だったからかもしれない。私はいつも担当教官以外を指名し予約していたが、時に教習所の都合で担