当事者性にあふれた議論――赤坂憲雄・小熊英二編『「辺境」からはじまる:東京/東北論』(明石書店、2012年)評
3.11により私たちの意識は大きく変わった。自然災害への感度は明らかに上昇したし、原発や放射性物質に対する関心も増した。だが、私たち東北人にとっては、東北が近代日本(とその象徴たる東京)を稼働させるための植民地であった/であるという事実への気づきが最も大きい。
この論点は、震災直前まで東北芸術工科大学(山形市)を拠点に「東北学」を唱導してきた民俗学者・赤坂憲雄、近代日本精神史の大胆な書き換えに挑む社会学者・小熊英二などが災後各所で提唱してきたものである。しかし、残念ながらそ