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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉】 第81回

大人の流儀

 伊集院 静氏の『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。

 時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院氏はこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。

 『大人の流儀3 別れる力』をご紹介します。

 ご存知のように、伊集院氏は小説家ですが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。



大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉 第81回

第3章 正義っぽいのを振りかざすな

「マーケティングという名の巧言令色」から

伊集院 静の言葉 1 (240)

 日本の調査会社というのは1970年代に”マーケッティング”という言葉が使われるようになり、マーケッティング、すなわち市場を調査するのに必要なため、市場調査というものがはじまり、そのノウハウがごっそりアメリカから入ってきた。それをしたのは広告代理店で、そこから調査会社なるものが生まれた。
 ただし、自分たちのデータに合わないものは平然と改竄かいざんした。データの改竄は市場調査がはじまった時からの伝統である。改竄ができなければ、そのデータを捨てた。   

   大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静                               



「マーケティングという名の巧言令色」から

伊集院 静の言葉 2 (241)

 やがて広告代理店の大きな仕事のひとつに選挙キャンペーンという仕事が生まれた。
 そこで政治家、政党の支持率なるものが生まれた。
 広告会社は”巧言令色”(言葉の意味はわかりますよね? わからない。論語、論語わかるよな? これもよくわからん。学校で何を習ったんだ。まあいい。その論語に巧言令色という言葉が初出し、”口先が上手うまく”顔色をやわらげて相手を喜ばせること”である)。
 広告マンは、すべてではないが、巧言令色の徒でなくてはいけない側面を持っていた。その巧言令色が、我社であなたの選挙を勝たせましょう、という裏付けに数字が必要になる。裏付けで強いのは、殺人事件でも一が物証であるように選挙とて裏付けで一番強いのは物、つまり金。同列で並ぶのが数字。  

   大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静                               

                       


「マーケティングという名の巧言令色」から

伊集院 静の言葉 3 (242)

 民主党は組合の基盤で成り立っていた。今、政治家面をしているのは組合のエリートだ。組合が政治を主導して国が富んだ歴史は一度もない。
 組合のエリートというのが、少し前の自民党の世襲議員の立場と似ている。どちらも向いているのは組合と地元で志などない。
 紙幅が尽きた。ほら、政治の話はつまらないだろう。
 その支持率おかしい、と一人くらい大臣が言え。 

   大人の流儀 3 別れる力 伊集院 静                               


⭐出典元

『大人の流儀 3 別れる力』
2012年12月10日第1刷発行
講談社

表紙カバーに書かれている言葉です。

人は別れる。
そして本物の大人になる。


✒ 編集後記

『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。
伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。
伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます


🔷「巧言令色」

この言葉で思い出すことは、私が高校生の時に「漢文」の授業で論語を学んだことです。「読み下し文」という日本独特の読み方がありました。

「読み下し文」

漢文を返り点、振り仮名、送り仮名などの訓点にしたがって、日本語に直訳した文章


手元に下記の本がありますので、参照してみましょう。
『全文完全対照版 論語コンプリート』野中根太郎 訳 誠文堂新光社 2016年12月17日 発行 

学而第一
003 口がうまく、つくり笑いをするような人間に本物は少ない

孔子先生は言われた。「人に媚びたことを言い、つくり笑いをするような人間に、私たちのめざす仁の人などいない」。
子曰、巧言令色、鮮矣仁、
子曰しいわく、巧言令色こうげんれいしょくにはすくなじん

読み下しの方法は複数あり、私が学んだ当時は「巧言令色鮮いかな仁」でした。

仁とは、「他人に対する親愛の情、優しさ」 (Wikipedia から)を意味しているそうです。


🔶『大人の流儀3 別れる力』について『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』の中で言及しています。

伊集院静と城山三郎
『別れる力 大人の流儀3』
私が伊集院静さんに興味を持ったのは、彼の先妻が女優の夏目雅子さんであったこともありますが、『いねむり先生』という題名の小説を読み、不思議な感覚を味わい、また『大人の流儀』という辛口のエッセーを読んだからです。 

由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い p.212


夏目雅子さんのプロフィール



🔶伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。


<著者略歴 『大人の流儀』から>

1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。
91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。
作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。


⭐ 原典のご紹介



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