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脱デフレで勝つ 高く売るための経営七策 2014.04.07 Vol.65 1/2 2014-05-21 21:42:46

日経ビジネスの特集記事 Vol.65

脱デフレで勝つ 高く売るための経営七策 2014.04.07 Vol.65 1/2 2014-05-21 21:42:46

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>


デフレ型から脱デフレへ経営モデルを転換することは、中長期的にも、日本企業が生き残るための重要な条件
が主要テーマです。

安く作り、安く売る、という薄利多売のビジネスモデルを20年近く志向してきた日本企業は、疲弊しきっていました。

ここにきて、高品質の商品を高く売るため企業がちらほら出てきました。

びっくりするようなケースが紹介されていました。
「3斤3000円以上する食パン」や「本体価格7万9000円の家庭用ミキサー」「本格的な高級惣菜を販売するスーパー」などなど...。

こうした商品が、一定の支持を受け、売れているそうです。

購入している人たちの高級志向ということだけでなく、価値が認められるものに対してはお金を出す、ということなのでしょう。

私には真似することはできませんが。

あなたは、「高いけれどコレにはお金を出す」という、モノやサービスはありますか?


PART1 苦渋の値上げ 最前線

タカラトミーという社名を聞いたことはありますか?

そうです!

ミニカーブランドの「トミカ」が有名ですね。
このトミカを2014年2月1日に値上げしたそうです。

ミニカーの人気は根強いもので、子供から大人までファンがいます。

経済評論家の森永卓郎さんは、ミニカーのコレクターとしても有名ですね。

「トミカ」を23年ぶりに値上げ

タカラトミーは今年2月1日、ミニカーブランド「トミカ」を値上げした。値上げ幅は25%で、1台360円だった定価は450円となった(主要120車種、税抜き)。

価格変更は1991年以来、23年ぶりという。 

脱デフレで勝つ 高く売るための経営七策 2014.04.07
p.024


値上げの理由

「トミカ」は子供にも人気のある商品だけに、値上げすることに対し、社内でも反対意見があったそうです。

それでも値上げすることにした理由は3つありました。

「資源価格の高騰」「新興国の人件費の上昇」「円安によるコストアップ」です。

一つは、新興国の需要拡大や投機資金の流入などが引き起こした「資源価格の高騰」だ。

トミカの主原料は2つある。車体に使われる亜鉛合金と、シャーシーや内装などに利用されるABS樹脂だ。

亜鉛の価格は「直近で1.5倍」(ビークル事業部でトミカを担当する竹内俊介グループリーダー)になった。

脱デフレで勝つ 高く売るための経営七策 2014.04.07
p.024


生産拠点である「新興国の人件費負担」も大きなコスト上昇要因だ。

脱デフレで勝つ 高く売るための経営七策 2014.04.07
p.024


輸入品である以上、アベノミクスで進んだ約20%の円安もコストアップ要因となる。

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pp.024-5


以上のような、コストアップの要因はあったものの、だから値上げするという安易な方針は採りませんでした。

プロジェクトチームを立ち上げ、全国約2000件に上る顧客調査を実施し、営業や製造部門とも協議を重ねたそうです。

最終的に「定番120車種を25%値上げする」という案にまとまったといいます。

その後は、どう推移したでしょう? 気になりますね?

値上げは消費者に受け入れられている

「今年投入した新製品効果もあって、数字を見る限り、今のところ値上げは消費者に受け入れられている。

『いかに安く作るか』を長年優先事項にしてきた玩具作りだが、そんな考え方を転換する時が来ているのかもしれない」。

竹内グループリーダーはこう話す。

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トミカのファンは、値上げに対して拒絶反応は示しませんでした。熱狂的なファンを抱えている企業だから受け入れられたのでしょう。

脱デフレで勝つ 高く売るための経営七策 2014.04.07


安売り戦術の見直し

安売り戦術を見直すべき時期に来ていると、価格戦略が専門の学習院大学の上田隆穂教授をはじめ専門家は考えています。そしてその背景は3つあるそうです。

「コストの上昇」「国内市場の縮小」「国際競争力の低下」
だそうです。

問題は、値上げすれば、すべてが解決するわけではない、と日経ビジネスは指摘しています。

それはなぜでしょうか?

製品の価値を変えずに価格だけ上げても、早晩消費者に見放されてしまうからだ。

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p.027


結局、次のような体制や考え方へ転換しなければならないことが分かります。

船井総合研究所の小野達郎・取締役会常務執行役員は、「高くても売れる付加価値を持つ商品やサービスを生み出せる体制へ、経営の考え方を転換することが欠かせない」と指摘する。

脱デフレで勝つ 高く売るための経営七策 2014.04.07
p.027


始まった値上げラッシュ
●2013年9月以降値上げした主な製品・サービス
10年前の値上げの例
脱デフレで勝つ 高く売るための経営七策 2014.04.07



PART2 7つの発想転換がカギ

脱デフレで勝つ 高く売るための経営七策 2014.04.07


初回はこれのうちの1~4を取り上げます。


製造編 1 付加価値の原点は手作り

ダイソンといえば、高価な掃除機の代名詞です。

高くても売れるのは、付加価値があるからです。
「いつまでも衰えない吸引力」と「吸引したゴミの扱いが簡単」であることが、私が考える理由です。

それにしても、高機能掃除機の価格が2~3万円であるのに、約9万円という価格には驚くというよりも、呆れますね。

しかし、なぜこの価格になるのか、その理由が今ひとつ分かりませんでした。

今特集の記事を読んで、なるほどと思いました。

ダイソンの掃除機の形状は独特であるだけでなく、各部品が複雑に絡み合い、精密なマシーンというイメージを抱かせます。

本当に機械で大量生産できるのだろうか、という疑問がいつもあり、解決できないでいました。

この記事を読んで、疑問が氷解しました。

「昔ながらの手作業」

ダイソンの高価格戦略の原動力が、「昔ながらの手作業」にあることはあまり知られていない。実際、ダイソン製掃除機の武器とされる革新的機能と高いデザイン性は、手作業工程なしには実現し得ないのだ。

脱デフレで勝つ 高く売るための経営七策 2014.04.07
p.028


ダイソンの秘密を知らなかったのは、私だけではなかったのですね。

「ダイソンは、一般掃除機の約3倍の回転力を持つ強力なモーターを採用」(p.028)しているそうです。

「モーターのパワーの多くがサイクロンに使われるため普通のモーターでは吸引力低くなる」(p.028)からです。

「斬新と言われるデザインも、手作業組み立てによって支えられている」(p.029)

コストを削減するのではなく、コストをカバーする商品の高付加価値化を「基本哲学」に据え、モノ作りを行っていることが理解出来ました。


マーケティング編 2 顧客はコストをかけて創る

ネスプレッソの用のコーヒーマシンが好調に売れているそうです。

マシンは5種類あり、定価は約1万3000円~5万円弱です。
「高い!」と思います。

マシンと合わせて使うコーヒー豆が詰められたカプセルは1個当たり70~80円します。これもかなり高いですね。

それでも購入する人たちがいる、ということは何か秘密があるはずです。

マーケティングの基本は、「集客」「教育」「販売」です。

見込み客を集め、教育し、販売するという流れを作ることです。


ネスレもこのマーケティングの基本を忠実に守っています。

「ネスプレッソブティック表参道店」。

ネスプレッソ事業の直営店である。

高級な内装に加え、表参道の平均賃料は1㎡当たり数万円とされる。パートやアルバイトではなく専門の研修を受けた正社員を常時10人程度、配置している。

最大の狙いは、ネスレのコンセプトを理解し、高品質な商品を高額でも購入してくれるファンを増やすことだ。

脱デフレで勝つ 高く売るための経営七策 2014.04.07
p.030


顧客の創造

ピーター・F・ドラッカーは「重要なことは、顧客を創造すること」と述べました。

顧客はコストを掛けて創る。

そんな考えが、ネスプレッソ事業の高収益を根底で支えている。

脱デフレで勝つ 高く売るための経営七策 2014.04.07
p.031


開発編 3 コスパでなくバリューを追う

「本体価格7万9000円(税抜き)という高額な家庭用ミキサー」があります。

通なあなたなら、知っているかもしれません。

米バイタミックス製の家庭用ミキサーです。
産業用ミキサーなら理解できますが、家庭用とは!

このミキサーの特徴を一言で言えば、

「どんなものでも確実に砕けること」

です。

この「ブレードは食材を切るのではなく高速で砕く」ために開発され、「モーターは、普通のミキサーが毎分1万回転程度なのに対し、最大3万7000回転する」性能で、「パワーも2馬力と日本製ミキサーの3倍はあり、刃は粉砕力を最優先したステンレス製の特殊な形状」をしています。

ブレードの写真が掲載されていました。
ステンレス製の4枚刃です。

手裏剣のような形状をしています。

米バイタミックス製の家庭用ミキサー
脱デフレで勝つ 高く売るための経営七策 2014.04.07



高性能・高価格商品を販売するためのポイントは、以下のようになるでしょう。

コスト上昇をはじめとする環境変化に対応するには、開発においてコスパではなくバリューを追うことが重要になる。

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p.033



次回は、

「人事戦略編 4 売上高人件費率は気にしない」


他をお伝えします。


🔷編集後記

この特集記事(元記事)が公開されたのは、9年前のことで、アメブロでも9年前(2014-05-21 21:42:46)のものです。加筆修正してあります。

日本のデフレは数十年続いていました。外国がインフレでモノの値段が上がり、大騒ぎをしていた時、我が国はデフレ下でモノが安く手に入りましたが、賃金の上昇も抑えられてきました。

企業は内部留保に血道を上げ、従業員の昇給を抑え、株主にはわずかな配当金でお茶を濁してきたという歴史があります。

2022年後半辺りから昇給を真剣に考える経営者が出てきて、先鞭をつけました。日本の労働者と海外の労働者との賃金格差が乖離していたからです。
同じ企業に勤めながら、海外勤務と国内勤務でドル建てで大きな差が出ていたという実態が明らかになりました。

海外勤務だった従業員が国内に異動になった時、給与が減るということがあったのです。昇給はその是正の意味もありました。

今回は主にモノの値上げについて取り上げました。

9年前には脱デフレができなかった訳ですが、今は物価高が激しく、食品・電気料金やガス料金、水道料金などの水道光熱費、公共交通機関の料金などの値上げが相次いでいます。明らかなインフレとなっています。

黒田東彦前日銀総裁の下では、デフレ経済を続けてきました。
消費者物価指数の上昇率を2%に引き上げようとしていましたが、在任中には実現しませんでした。

ところが、2023年3月に前年同期比で3.2%となっていました。

2023年3月の消費者物価指数(総務省)

出所:総務省作成の消費者物価指数(pdf)
2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)3月分及び2022年度(令和4年度)平均 (stat.go.jp)


電気料金は数ヵ月前に上がりましたが、再度値上げが取り沙汰されています。

私たち庶民は生活防衛のために、節電などに取り組まなくてはなりません。
ロシア・ウクライナ紛争がさらに長引くようですと、原発再稼働が現実味を帯びてきます。


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