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盛田昭夫 『21世紀へ』(024) 第3章 マーケットの創造 「あくまでSONYを貫く」(1976年)から



盛田昭夫 『21世紀へ』(024) 第3章 マーケットの創造 「あくまでSONYを貫く」(1976年)から


『日経ビジネス』(2014.05.12)によれば、「ソニー、不動産参入の迷走」という見出しで、

深刻なのが、不動産事業参入によって「ソニーが迷走している」との印象を社内外に植え付けてしまったことだ。

日経ビジネス 2014.05.12 p. 015 

  

「テレビ事業を分社化する上パソコン事業も売却し、自社保有の不動産まで売り払う中で、不動産業を始めるとは。迷走というか、何をやるべきか分からない状態なのでは」。ソニーが不動産業に参入するとの報道が全国を駆け巡った4月下旬、同社の元幹部は、辛辣なコメントを発した。

日経ビジネス 「時事深層」 2014.05.12 p. 015 

と伝えています。


テレビ事業分社化やパソコン事業の
売却を発表した平井一夫社長
(写真=ロイター/アフロ)
日経ビジネス 「時事深層」 2014.05.12


2014年2月には「VAIO」ブランドのパソコン事業を売却し、テレビ事業を分社化し、国内外で5000人規模の売却を発表しています。

21世紀の幕開けを見ずに、この世を去った盛田さんが、『21世紀へ』に全身全霊をかけて著した熱い想いは、現在のソニーに届いているでしょうか?

この本を読む返してみるにつけ、疑問符がつくことばかりと感じるのは、私の偏見でしょうか?


『21世紀へ』 盛田昭夫
2000年11月21日 初版発行
ワック


目次

はじめに

第1章 経営の原則

第2章 人材の条件

第3章 マーケットの創造

第4章 国際化への試練

第5章 経済活性化の原理

第6章 日米関係への提言

第7章 変革への勇気

第8章 日本国家への期待

第9章 新世界経済秩序の構築

あとがき




第3章 マーケットの創造

「あくまでSONYを貫く」(1976年)から

一番大切なことをひと言でいえば「信用を勝ちとること」だ

 私はアメリカでのマーケットづくりに専念したのだが、そこで一番大切な
ことをひと言でいえば「信用を勝ちとること」だ。しかし、これは容易なことではなかった。たとえば、一対一で販売するような商品であれば、その人から信用を得ればよいのだが、市販商品をつくっている以上は、不特定多数の顧客が対象になるからだ。  

21世紀へ 盛田昭夫 070 pp. 126-127 


「あくまでSONYを貫く」(1976年)から

信用とは、製品の品質が優れていることと、アフター・サービスが行き届いていることにつきる

 安定したマーケットとは、結局、大衆の間に確立された信用によって裏付けされていなければならないのである。

 その信用とは、製品の品質が優れていることと、アフター・サービスが行き届いていることにつきる。この当然のことを実行するのに、私は10年かかった。また逆にいえば、10年ぐらいかけて地道に積み上げていかなければ、本当の信用は勝ち取れないということにもなろう。

21世紀へ 盛田昭夫 071 p. 127 


「あくまでSONYを貫く」(1976年)から

時価発行に踏み切ったときの哲学は「よい会社は、有利な条件で資本調達ができるはずである」というものであった。そして、その哲学が通用する市場で資金を調達しようという目標を設定した

 世界のリーディング・ボードへの株式上場は、20年も前に私たちが考えた目標の1つであった。商品の面で世界市場を相手にするからには、資本の面でも世界市場を考えるのは当然の帰結である。そして、ソニー商品のマーケットのある国でパブリック・カンパニーになろう。こういう思想で、資本調達の国際化を目指してきたのである。
 もちろん、このためには長い準備期間が必要であった。私はアメリカに行くたびに、次第にアメリカで行われている時価発行に関心を持つようになった。
 周知のように、アメリカの会社は、自分の株価を世に問う姿勢で株式を発行する。好業績は正確に株価に反映される。株価が高ければ、それだけ資本調達のコストは下がる。応募してくれた投資家には、責任をもって応えていく。この時価発行こそ、本来の資本調達のあり方ではないか、と思うようになった。そして、ソニーはその道を選ぼうという決心をしたのである。
 時価発行に踏み切ったときの哲学は「よい会社は、有利な条件で資本調達ができるはずである」というものであった。そして、その哲学が通用する市場で資金を調達しようという目標を設定した。

21世紀へ 盛田昭夫 072 p. 132 



盛田昭夫公式ウェブサイト



➳ 編集後記

『21世紀へ』を読み返して感じたこと

『21世紀へ』は、20世紀を全力で走り抜けてきた盛田さんが、このままでは日本がダメになるという危機感に、すべての日本人が気付いてほしいという悲痛な気持ちが伝わってくる本です。

盛田さんの「予言」はいみじくも当たってしまいました。
少なくとも現状においてですが。

この警世の書に書かれていることの多くが当たっています。

盛田さんの慧眼は本当に素晴らしいと思いました。

本書をアマゾンや楽天でなくても、ブックオフ等で目にしたら、ぜひ手に入れてください。なかなか見つからないかもしれませんが。

その内容の濃さと経験に裏打ちされた説得力のある文章に惹きつけられることでしょう。

⭐盛田昭夫さんの言葉の数々は、時として大言壮語と感じることがあるかもしれません。しかし、盛田さんはそれだけ、ソニーの行方が気がかりだっただけでなく、21世紀において世界の中の日本がどのように変貌していくのか、気になって仕方がなかったのだろうと推測します。

21世紀のソニーと日本を自分の五感を通じて確かめたかったに違いありません。しかし、その願望は叶いませんでした。1999年に亡くなられました。


🔴「世界のリーディング・ボードへの株式上場は、20年も前に私たちが考えた目標の1つであった」

日本企業をはじめ、米国以外の企業が米国市場(ニューヨーク証券取引所、ナスダック市場等)に上場するには、それらの国内の株式をそのまま上場することはできないので、ADR(米国預託証券=外国企業・外国政府あるいは米国企業の外国法人子会社などが発行する有価証券に対する所有権を示す、米ドル建て記名式譲渡可能預り証書)で上場します。

ADRで上場している日本企業を見てみましょう。

日本株 ADR銘柄 一覧

Money Box  日本株 ADR銘柄 一覧 


では、ソニーグループの現状のADRはいくらでしょうか?

Money Box  日本株 ADR銘柄 一覧


日本企業でニューヨーク証券取引所に最初に上場した企業は、ソニーでした。

日本企業では1970年にソニーが上場して以来、2021年4月現在10社が上場している。

 Wikipedia から

ただし、2024年1月9日現在、ニューヨーク証券取引所に上場している日本企業は17社ということになります。

ニューヨーク証券取引所 Wikipedia




盛田さんは、一点の曇りもなく、自分に正直で、言行一致した行動派の経営者でした。また、今ではなかなか見つからないダンディなジェントルマンでもありました。表現がダサい? 古い?



⭐ソニーの現状 (ソニーグループの子会社)


ソニーを日本企業とは知らない人たちがいることに驚きました。

ここ数十年で業態を変えてきたことは、世の中の変化に素早く対応できることを示しています。

ソニーは「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野」を扱う企業ということになりますが、半導体も生産していますし、得意な映像技術を深掘りしています。映画部門も持っていますね。

極論すれば、音と映像を2本柱にして、これらに関わる技術を開発し、横展開していると言えます。

ただし、ウォークマンが大ヒットしたあと、アップルの iPhone のようなスマートフォンがなぜ作れなかったのかと悔やまれます。技術力はあったはずです。目利きが及ばなかったのでしょう。

スマホがここまで世界中に受け入れられるとは想像していなかったのかもしれません。


⭐『21世紀へ』について

『21世紀へ』に関するこのブログを最初に投稿したのは、アメブロで9年前(2014-08-03 21:54:34)のことでした。

note に再投稿するにあたって、大幅に加筆修正しました。

『21世紀へ』の「はじめに」の1行目から2行目にワック編集部による
この本の説明が書かれています。

本書は、井深大と並ぶソニー株式会社のファウンダー(創業者)盛田昭夫によって、1960年代から90年代にかけて執筆された論文の集大成である。

21世紀へ 盛田昭夫 p. 1  


ソニーは日本を代表する世界的企業であることに異論はありません。



✑ 盛田昭夫氏の略歴

巻末の「著者紹介」から

盛田昭夫(もりた あきお)
ソニー創業者。1921年生まれ。大阪大学理学部卒業。
海軍技術中尉に任官し、井深大と出会う。
46年、井深とともにソニーの前身、東京通信工業を設立。
ソニー社長、会長を経て、ファウンダー・名誉会長。
この間、日米賢人会議メンバー、経団連副会長等を歴任。
海外の政財界にも幅広い人脈をもち、日本の顔として活躍した。
98年米タイム誌の「20世紀の20人」に日本人として唯一選ばれる。
99年死去、享年78。
著書に『学歴無用論』(朝日文庫)『新実力主義』(文藝春秋)
『MADE IN JAPAN』(共著、朝日文庫)『「NO」と言える日本』
(共著、光文社)等がある。



(3,936 文字)


⭐出典元



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