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メルマガ 大前研一 ニュースの視点 有益な情報を得て、発想に結びつける No.005



メルマガ 大前研一 ニュースの視点 有益な情報を得て、発想に結びつける No.005

はじめに

私は30年ほど前から大前研一氏の著作を読み始め、読み続けています。
大前氏の著作や動画等から非常に有益な情報を得るだけでなく、考え方・発想法などを学んでいます。

大前氏のメルマガ購読を10年ほど前に開始し、今日も続けています。
ただし、すべての記事にきちんと目を通したわけではありません。
そこで、メルマガ購読の登録を開始した当時に遡って、読み直すことにしました。

そうすることで書籍との関連性によってより深く理解できたり、10年にわたる大前氏の考え方の変遷を感じ取ることができると考えました。

大前氏が頭脳明晰であることは異論がないと思います。
他にも頭が良い人たちは数多いますが、その人たちと大前氏が異なる点があります。

それは、大前氏は自分の考え方や発言に間違いがあった場合には、すぐに認め、訂正することです。他の頭が良いと言われる人たちは、プライドが高く、自分の間違いを認めたがらないだけではなく、訂正しようともしません。


🔶お知らせ

大前氏は私より年齢が一回り上です。大前氏は今年80歳になられました。
事情ははっきりしませんが、2023年6月29日に、BBT(ビジネス・ブレークスルー)の代表取締役を退任されました。

ビジネス・ブレークスルー大学の学長職に専念されるということです。社会人教育に対して情熱を注ぎ続ける姿に頭が下がります。
日本を再興するためには、社会人教育が不可欠であるという信念を持ち、今日でも社会人教育に励んでいます。

私は、他のところでも何度も書いていますが、30代の頃から大前氏に私淑しています。これからも変わりません。


KON469【日本の成長戦略とPFI事業~定量的な目標に基づいて施策を考える】 ~大前研一ニュースの視点~ 2013/06/07 8:26

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┏━■ ~大前研一ニュースの視点~
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛『日本の成長戦略とPFI事業~定量的な目標に基づいて施策を考える』
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成長戦略
 2017年度までに成長戦略の工程まとめ
 PFI
 運営権売却の概要発表

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 ▼ 成長戦略の意味を理解していない人が、絵空事を述べているだけ
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 政府は28日、2017年度末までの向こう5年間を緊急構造改革期間とする
 成長戦略の工程表をまとめました。

 国が運営するハローワークの求人情報を14年度からオンライン上で民間
 企業に開放することや、高度な技能を持つ外国人は3年で永住資格を取れ
 るようにすることが盛り込まれており、金融緩和と財政出動に続く第3の
 矢で日本経済を息の長い回復軌道に乗せる考えです。

 金融対策、財政出動に続いて、成長戦略はいわゆるアベノミクスの
 3本目の矢です。

 とは言うものの、その中身を見てみると、ほとんどインパクトが
 ないものばかりです。

 私に言わせれば、全く「国家の成長」をわかっていない人が作った
 としか思えません。

 例えば、「リースを使った投資支援」では自己資金による
 投資のリスクを減らすためにリースの活用を認めるものですが、
 値下がりリスクの一部を国が負担します。

 企業の無謀な投資に対してなぜ国民の税金を使うのでしょうか?

 「社外取締役の導入を原則化」をしても成長戦略に関係ないのは、
 ソニーの事例を見れば明らかです。

 「ハローワークの求人情報を民間開放」しても
 「子どもが3歳になるまでの育児休業」を認めても、
 やはり国家の成長戦略には寄与しないでしょう。

 子どもを生んだお母さんが3年間子育てに専念できるのは、
 社会政策としては正しいかもしれません。

 しかし、「成長戦略」ではないのです。

 「全ての一般薬品のネット販売」を認めても、国民が病気になって
 3倍薬を購入する量が増えるわけではありません。

 購入する場所が変わるだけです。

 そして「国家戦略特区の選定」などとありますが、基本的に
 「特区」というものは役人がやりたくない施策です。

 政治家に言われて渋々やらざるを得ないから、
 「特区」を設けるのであって、そうでなければ全国で展開すれば
 いいのです。

 これまでに「特区」で始まって全国に広がった施策など
 私は記憶にありません。

 小泉首相のときに限定的に導入された「株式会社立大学」も
 全く広がっていません。

 私たちのBBT大学など、片手の指で数えられるくらいしかありません。

 極めつけは、「対内直接投資」を35兆円にするということですが、
 果たしてどうやって実現するつもりでしょうか?

 去年は実質マイナスだったのに、全くその青写真は見えてきません。

 国家の成長指標はGDPです。

 すなわち、企業が生み出す付加価値の総計ですから、
 右から左に数字を動かしただけで、成長戦略などと言っても
 全く無意味です。

 絵空事ばかり並べ立てていないで、もう少し基本的な部分から
 理解して出直してほしいと思います。

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 ▼ 関空は2兆円をライトオフして、ゼロベースで始めるべき
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 国が100%出資する新関西国際空港会社が検討している
 運営権売却(コンセッション)の概要が28日明らかになりました。

 国内外の民間企業や投資ファンドを対象に年内に募集を始め、
 年明けにも1次入札を実施し、運営期間は
 40~45年程度とする方向で検討。

 調達額は6000億~8000億円程度とみられており、
 民間資金を活用したインフラ整備(PFI)の事業規模を今後10年間で
 現在の2.5倍の12兆円に拡大する方針も固めました。

 これも「PFI」の何たるかを理解しているのか
 疑問を持たざるをえません。

 日本のPFIというのは、オーストラリアのPPPのように
 完全に民間に委託するものではありません。

 予算の関係でお金は調達したいけど、
 コントロールから外したくないときに役人が使っている手立てです。

 日本の場合、実質的に役人のコントロールする範囲内でしか
 企業は動けません。

 運営権売却先として、オーストラリアの投資銀行マッコーリー銀行の
 名前が挙がっているそうですが、マッコーリー銀行が受けてくれるのか?
 私には疑問です。

 かつて羽田空港のターミナルビルを運営する日本空港ビルデングに、
 マッコーリー銀行が投資したいと手を挙げたとき、
 日本の国交省はNGを出しました。

 日本の国家機密とも言える空港の運営権を海外の企業に
 譲るわけにはいかない、という理由でした。

 英国、オーストラリアなどで最も実績を上げている企業に対して、
 よくぞ言ったものだと思っていましたが、今度は手のひらを返して
 関空の運営権売却先に考えているようです。

 余りにも虫が良すぎる話だと私は思います。

 関空の場合、国が2兆円をライトオフして、もう1度ゼロベースで話を
 進めるなら引き受けてくれる企業が出てくるかも知れません。

 マッコーリー銀行への応対といい、世界の事例を知らなすぎるとしか
 言えません。

 そのような人が、「●●競争力会議」などで発言しているのですから、
 もう少しまともになってもらいたいと思います。

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 この大前研一のメッセージは6月2日にBBT Chで放映された  
 大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
 再構成しております。
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✅KON469のキーワード・キーセンテンス

1「成長戦略」

国(官僚)はキャッチワードをつくるのはうまいですが、その内容を国民にわかり易い言葉で表現で説明することは下手と言いますが、難しい言葉を駆使してけむに巻くのが上手です。

メディアも官僚の言葉をそのまま受け入れるだけで、内容をかみ砕いて説明することを怠っているとしか思えません。国民はバカだから一々説明するのは煩わしいとでも思っているのでしょうか?

さて、成長戦略とは何か?

Wikipediaによれば、次のような定義が書かれています。

成長戦略(せいちょうせんりゃく)とは経営学用語の一つ。大企業、外資系企業などといった組織が成長することを目標として経営していく場合、そのためにはどのような事柄をするべきかを明確にするということ。

日本では一企業や企業団体に留まらず、経済成長させるということを目指す場合にもこの言葉が用いられている。

成長戦略 Wikipedia


日本では成長戦略は経済成長をさせることと同義だということになります。

noteに定期的に投稿されている経済学者の野口悠紀雄氏の見解が紹介されています。

経済学者の野口悠紀雄は「多くの人は、『今後成長が期待される分野を政府が選び出し、それに補助を与えて育成することが成長戦略である』と考えている。実際、民間企業の経営者が『成長戦略が必要』という場合、それは『政府の補助が必要』というのとほぼ同義である。また、各省庁にとっては『成長戦略』とは、予算獲得のための手段である。しかし、こうした傾向の成長戦略には大きな問題がある。それは、どの分野が成長できるかは事後的にしか分からない場合が多いからである」と指摘している。

成長戦略 Wikipedia


2「ライトオフ」

ライトオフの意味が分からなかったので調べてみました。

「write off」は、会計用語として使われることが多く、資産の価値が減少したり、回収不能となった売掛金や在庫を償却することを指す。これにより、企業の損失を正確に計上し、財務状況を適切に反映させることができる。

write-off weblio辞典



KON470【西武ホールディングスと大阪主要百貨店~定性情報の重要性を考える】 ~大前研一ニュースの視点~ 2013/06/14 8:29

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┗━┛『西武ホールディングスと大阪主要百貨店~定性情報の重要性を考える』
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 西武HD
 持ち株比率35.48% 米サーベラス
 大阪主要百貨店
 阪急百貨店梅田本店 前年同月比63%増

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 ▼ 西武HDは悪しき前例を作ってしまうだろう
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 米投資ファンド、サーベラスは1日、西武ホールディングスに対する
 持ち株比率が35.48%になると発表しました。

 株式公開買い付け(TOB)の目標は下回りましたが、
 「3分の1超」で重要案件への拒否権を得ており、
 取締役を選ぶ株主総会などで攻防は続くとの見通しです。

 36%弱で止まってしまったのは、サーベラス陣営にとっては
 痛手でしょう。

 もし44%まで持ち株比率を高められていれば、万一、
 委任状争奪戦(プロキシファイト)に発展したとしても
 勝てたはずです。

 それどころか現在の持ち株比率だと、株主総会後に
 西武HDの現経営陣が第3者割当増資を実施することで、
 サーベラスの持ち株比率を簡単に薄めることができてしまいます。

 おそらく、30%を割り込むことになるでしょう。

 現経営陣はみずほ銀行出身の人達ですから、ぬかりなく
 実施してくると思います。

 私としては、この西武HDの対応を決してフェアだとは
 感じていません。

 一般的には「日本VSハゲタカ」の構図でとらえられがちですが、
 むしろ現西武HDの経営陣は怠慢であり、やるべきことを
 やっていないと思います。

 軽井沢、新宿、品川の開発など、西武HDのポテンシャルを
 活かすチャンスなど沢山あります。

 さらに言えば、私はJR東日本への売却も含め、
 西武HD改革のための提案書を西武HDにもサーベラスにも
 送ったことがあります。

 それでも西武HDは改革に着手しなかったのです。

 しかし今となっては、そのような前向きな戦略を語る
 フェーズは終了してしまったと言わざるを得ないでしょう。

今後の西武HDの対応次第ですが、怠慢経営のツケを払わず
 金融上のテクニックでお茶を濁してごまかすという、
 悪しき前例を残すことになるだろう
と思います。

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 ▼ 大阪梅田の百貨店戦争は、阪急梅田店の一人勝ち
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 大阪市内の主要百貨店が3日に発表した5月の売上高は、
 阪急百貨店梅田本店が前年同月比63.0%増となる一方、
 大丸梅田店とJR大阪三越伊勢丹はいずれも約7%減少しました。

 阪急梅田店が大阪梅田の百貨店戦争に見事勝ち抜くだろうと
 私は思っていましたが、それでもこれほどの数字が出てくるとは
 想像していませんでした。

 大阪梅田駅周辺は日本一の百貨店激戦区です。

 全ての百貨店が揃ったとき、どこが勝ち組になるのか?
 色々な人が予測をしていました。

 しかし誰一人、ここまで阪急梅田店だけが一人勝ちするとは
 考えていませんでした。

 すべての人の予測を裏切った一人勝ちだと言えるでしょう。

 阪急梅田店が63%増加する一方、大丸心斎橋店はそこそこ、
 高島屋、大丸梅田店の売上高は減少しています。

 なぜ阪急梅田店が圧倒的に勝てたのか?
 様々な理由があると思います。

 駅からの動線が重要だという人もいるでしょう。

 ただ、それ以上に私はこれまでの百貨店にはなかった「物語性」
 「イベント性」を持っていることが、阪急梅田店の最大の
 強みであり、一人勝ちできた要因ではないかと感じています。

 一度、足を運んで自分自身で体験してみることをお勧めします。

 阪急梅田店がある阪急沿線は、芦屋を筆頭に日本で最も
 高齢化が進んでいる地域の1つですが、「物語性」「イベント性」
 があるおかげで高齢者も足を運ぶ理由になっていると思います。

 また阪急梅田店は外商が強いので、そちらで売上を伸ばしている
 という側面もあるでしょう。

 全ての人の予測を裏切った、大阪梅田の百貨店戦争における
 阪急梅田店の一人勝ちは見事としか言えません。

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 この大前研一のメッセージは6月9日にBBT Chで放映された  
 大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
 再構成しております。
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✅KON470のキーワード・キーセンテンス

1「今後の西武HDの対応次第ですが、怠慢経営のツケを払わず 金融上のテクニックでお茶を濁してごまかすという、悪しき前例を残すことになるだろう」

西武HDの歴史を辿ると、衆議院議員、衆議院議長を歴任した堤康次郎つつみ やすじろう氏が創業した西武グループに辿り着きます。堤清二氏と義明氏の2人の兄弟に流通系と鉄道系に分けて相続させました。2人は異母兄弟です。

主流は鉄道系でした。つまり、康次郎氏は2人の息子のうち、弟を後継者に指名しました。

義明氏は主にプリンスホテルと西武鉄道の経営をしていたのですが、法人税はほとんど払いませんでした。そのからくりは、非上場のグループ会社(コクド)から多額の借入を実行し、親会社を赤字することで法人税の納付を免れていたのでした。その手法で何十年もの間納税を逃れていたのです。

現在では、この手法は認められません。多額の借入れによって故意に赤字にするという手法は通用しませんし、株主に対する裏切り行為でもあり、何期にも渡って赤字となると上場基準を維持できず、上場廃止になります。

しかし、当時は康次郎氏の隠然たる圧力により黙認されていたと考えられます。今でいう忖度だったのかもしれません。

しかし、ついに捜査のメスが入りました。

グループ再編が行われるまでは、西武鉄道・国土計画の創業者である堤康次郎の後継者である堤義明が大半の株を保有するコクドにおいて、西武鉄道・西武建設と、首都圏外のプリンスホテル・ゴルフ・スキー場などの運営会社の株式の大数を有しており、コクドのオーナーである義明が西武鉄道グループの経営権を握っていた。しかし、2004年10月に上場会社であった西武鉄道と伊豆箱根鉄道が有価証券報告書上で、コクドの実質持株比率が上場廃止基準に触れるにもかかわらず、名義株で過小記載するといった虚偽記載を行っていたと公式に発表し、堤義明がコクドの会長職などを辞任し表舞台から退いた(堤は2005年に証券取引法違反容疑により逮捕)。これを受け東京証券取引所は双方に上場廃止処分を下した。

西武ホールディングス Wikipedia


そのような悪しき伝統が続いていたと推測できます。
独裁者による経営は遅かれ早かれ破綻するという典型例です。


KON471(人口減少問題・成長戦略・税制改正~現状を認識して解決策を考える) ~大前研一ニュースの視点~ 2013/06/21 8:28

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┏━■ ~大前研一ニュースの視点~
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┗━┛『人口減少問題・成長戦略・税制改正~現状を認識して解決策を考える』
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 人口減少問題 2040年の生産年齢人口 2010年比23%減
 成長戦略 経営者アンケート 「成長戦略を評価」88%
 税制改正 減価償却費の「即時償却」を要望

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 ▼ 人口減に対する施策なしに、日本経済の見通しは明るくならない
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 国土交通省は11日に発表した「首都圏白書」で、2040年時点の
 東京圏の生産年齢人口(15~64歳)が2010年に比べて23%(550万人)
 減少し、高齢者人口は5割増になる見通しを明らかにしました。

 これについて、空き家の増加や介護保険施設の不足が
 深刻になると指摘。

 鉄道など公共交通網の維持も課題になると指摘しています。

 ここにアベノミクスの最大の問題が指摘されています。

 アベノミクスは日本の人口減への対処策は何も示していません。

 1000兆円の借金を抱えている国家財政を考えたとき、
 誰がこの借金を返すことができるのか?

 この点について言及しない限り、アベノミクス第2の矢である
 「財政出動」は片付きませんし、第3の矢「成長戦略」を
 実現することも当然のことながら不可能です。

 6月10日号のBusinessWeek誌には、ピンクの漫画に彩られた
 安倍総理の写真が掲載されていました。

 タイトルは「MIRACLE WORKER(=奇跡を起こす男)」でした。

 イタリアや米国などを大きく上回り、日本の借金は
 世界各国の中でも飛び抜けており、GDP比200%を超えていると指摘。

 また人口減によって、世界に占めるGDP比率も2010年の7%から
 2030年には4%、2060年には3%になると予測を掲載。

 結果、成長戦略どころか借金を返す財政戦略すらないと
 批判しています。

 この状況を打破するためには、「奇跡を起こさなければ無理」
 だろうという論調でした。

 アベノミクスの化けの皮が剥がれ、世界は日本経済に対して
 大きな危機感を抱いています。

 これを反転させるためには、かなり大胆な政策が必要でしょう。

 例えば、毎年70万人の移民を受け入れて人口減の問題に対処する、
 あるいは建築基準法を改正し規制で伸び悩んでいた建築業界を
 一気に開放する、というくらい大胆で具体的な施策です。

 しかし現状を見ていると、非常に難しいだろうと私は思います。

 というのは、この成長戦略を考えた人たちには、
 根本的な危機感が欠如しているからです。

 日本の現状について、正しく認識し危機感を持つことすら
 できていなければ、大胆な政策を打ち出すことは
 絶対にないでしょう。

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 ▼ 減価償却期間を短くすることは、かなり経済効果がある
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 経済産業省は2014年度の税制改正で、企業が新規設備を
 導入した場合に法人税負担を圧縮できる仕組みを要望する方針を
 固めました。

 これは、非常に期待できる具体的な良い施策だと思います。

 安倍総理は企業の設備投資を促す減税について
 「秋には思い切った減税を決定したい」と述べていたそうですが、
 私は以前からそれなら「減価償却期間を短くする以外に方法はない」
 と指摘していました。

 今回、有難いことに経済産業省がその施策を打ち出してくれました。

 「単年度償却」は税収が減るため、財務省は反対すると思いますが、
 この効果は絶大です。

 例えば、現在8年の償却になっているものを2年に圧縮するだけで、
 「税金に持っていかれるくらいなら、投資しておこう」と
 考える企業は多いはずです。

 企業経営者にしてみると、非常に有難い施策になると思います。

 日本の企業経営者と言えば、先日、日本経済新聞による
 経営者緊急アンケートが行われました。

 それによると、安倍総理の成長戦略について主要企業で
 一定の評価をする割合は計88%に達したとのことです。

 BusinessWeek誌で指摘されているようなことを少しでも
 日本の企業経営者が懸念していれば、
 このような結果にはならないでしょう。

 さらには、安倍総理が秋にも検討する追加策に
 盛り込むべき政策では、「思い切った法人減税」を挙げる企業が
 95.4%だったそうです。

 要するに、自社が払う税金を減らしてもらいたいだけ
 ということです。

 おそらく、日本の成長戦略として何をするべきか?
 自分の意見を明確に持っている企業経営者は
 ごく一部だけだと思います。

 日経新聞がこのようなアンケート結果に対して、
 何の批判もなく掲載したことも私には不思議です。

 日本の財政問題、成長戦略について、もっと現実を見つめて
 危機感を持つことが大切ではないかと思います。

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 この大前研一のメッセージは6月16日にBBT Chで放映された  
 大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
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✅KON471のキーワード・キーセンテンス

1「アベノミクス」

結局、アベノミクスとは何だったのだろうか、ということに行きつきます。
アベノミクスを象徴することは、三本の矢で示すことができます。

1 金融政策
2 財政出動
3 成長戦略

この三つの矢のうち、1 金融政策と2 財政出動の2つは一定の成果を上げたというのが識者による共通認識になっています。

しかし、3 成長戦略は残念ながら成果を上げられなかったという評価をされています。

志半ばで凶弾に倒れたという不幸があったという事情を考慮しても、その点は免れそうにありません。

2013年6月14日発表の「日本再興戦略」で全体像が明示されたアベノミクスは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略(規制緩和などによって資本市場や労働市場をより流動的にして、競争を活発にさせることで生産性を向上させる構造改革)の「三本の矢」を経済成長を目的とした政策運営の柱に掲げた。
アベノミクスに対する肯定的意見には、金融政策によって歴代政権の中で最も雇用を創出したことが挙げられる。完全失業率や有効求人倍率が著しい改善を見せたこと、2014年から2018年まで5年連続で名目賃金が上昇した ほか、雇用環境改善に伴う自殺者数の減少、現役世代を中心とした生活保護受給者の減少、名目と実質値のGDP・GNIの上昇なども挙げられる。
アベノミクスに対する批判的意見には、金融政策偏重で、構造改革も重視したが財政政策については政府支出を抑制し、消費税の税率を二度にわたって引き上げたことなどが挙げられる。

アベノミクス Wikipedia



KON472(日米関係・日ロ関係・G8首脳会談~客観的事実を理解する情報収集法) ~大前研一ニュース視点~ 2013/06/28 8:26

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┏━■ ~大前研一ニュースの視点~
┃1┃ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
┗━┛『日米関係・日ロ関係・G8首脳会談~客観的事実を理解する情報収集法』
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 日米関係 オバマ大統領が日米首脳会談をキャンセル
 米ロ関係 G8会場内首脳会談
 G8首脳会談 首脳宣言を採択し閉幕

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 ▼ 米国にとって日本の重要性は大きく下がっている
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 英国・北アイルランドで開かれていた主要国(G8)首脳会議での
 日米首脳会談が「オバマ大統領からキャンセルされた」ことが
 わかりました。

 米中首脳会談の終了直後であることから、安倍首相は
 オバマ大統領と日米首脳会談を開き、強固な同盟関係を
 示す考えでしたが、オバマ大統領は
 「他国首脳との会談を優先させたい考え」だったということです。

 当初、安倍首相は2月にオバマ大統領と電話会談をした
 ばかりだったので、日本側からオバマ大統領との会談を
 断ったという趣旨の発言をしていました。

 しかし実際にはオバマ大統領から断られていたということです。

 米国の国務省は、安倍首相、石原前都知事、橋下大阪市長などが
 台頭し、日本の中枢が極右化しつつあると懸念していると聞きます。

 そのような背景もあって優先順位を下げられたとも思えます。

 TIME誌では、今回の習近平国家主席とオバマ大統領の
 米中首脳会談を高く評価しています。

 かつて中国との国交を開いたニクソン元大統領に匹敵する功績だと
 称えるほどです。

 太平洋の2代勢力として、米中が新しい時代を切り開く
 第一歩になったという論調でした。

 完全に日本はサイドラインに追いやられてしまい、
 米国の眼中にはないという事実を受け止めるべきだと思います。

 また米国とロシアの関係を見ると、オバマ大統領と
 ロシアのプーチン大統領が17日、主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)
 の会場内で約2時間会談しました。

 その中で、シリアのアサド政権存続の是非や欧米による反体制派への
 軍事支援をめぐって意見交換が行われましたが、
 議論は平行線に終わったということです。

 G7には参加していなかったプーチン大統領は、今回のG8では
 特にシリア問題について一人で総攻撃を受ける形になりました。

 見ているだけでも、プーチン大統領が相当イライラしていたのが
 分かります。

 あの延長線上でオバマ大統領と議論をしても、
 上手くいかないだろうと思います。

 シリア問題については完全に議論がかみ合わないまま終わりました。

 さらにプーチン大統領としては、戦略・核兵器の削減に関する
 オバマ大統領の提案に対して、前回の約束を半分も果たしていない
 米国に言われたくない、という思いもあったことと思います。

 この点も、プーチン大統領の気分が荒れる原因になったのでしょう。

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 ▼ 日本のメディアを見ていても、事実を客観的に理解できない
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 主要8カ国(G8)首脳会議(サミット)は18日、多国籍企業の
 課税逃れを防止するルール作りなどを盛り込んだ
 首脳宣言を採択して閉幕しました。

 安倍総理大臣はサミット終了後の記者会見で
 「アベノミクスについて賛同を引き出し、北朝鮮の核と拉致問題
 について明確な立場を主張する狙いを達成し、大きな成果を
 あげることができた」と述べました。

 このニュースが日本で報道されたとき、
 私は日本のメディアのレベルはこんなにも低いものなのか、
 と呆れてしまいました。

 日本では「アベノミクスが一定の評価を得た」とされていますが、
 実態は全く違います。

 G8で安倍首相によるアベノミクスの説明を聞いた各国の首脳は、
 キョトンとしていました。

 金融、財政、成長戦略という3つは、わざわざアベノミクスなどと
 名前をつけなくても、世界の常識だからです。

 なぜ目新しい要素は何もないのに「アベノミクス」などと
 言っているのか、不思議に思ったことでしょう。

 アベノミクスが評価を受けたと報じられましたが、
 実際にはタガをはめられたと言っても良いと私は思います。

 第1の「金融緩和」については出口戦略で世界に迷惑をかけない
 ように注意を促され、第2の財政については「財政出動」ではなく
 「財政規律」をしっかりやることを約束させられています。

 日本の記者はG8の現場に行っていても、しっかりと内容を
 捉える常識がなく、またそれを吟味するスキルもないのでしょう。

 現地で配布されたブリーフィングの資料を、大本営発表
 そのままに記事にしているだけです。

 日本中の新聞で「アベノミクスが評価を受けた」と
 報じられたのですから、恐ろしい限りです。

 こうした事態は例を挙げれば枚挙にいとまがありません。

 先に紹介した安倍首相がオバマ大統領から首脳会談を断られていた
 というニュースも、海外のメディアを見れば、欧州も韓国も中国も、
 すべてオバマ大統領側から日米首脳会談を断ったと
 発表しているのに、日本だけが安倍首相から断ったと報じていました。

 日本の記者はいわゆる政治部の記者であり、ぶら下がり記者です。

 政治的な配慮や圧力もあって事実を書けないのかも知れませんが、
 それ自体が大きな問題です。

 あるいは事実を自分で入手することができないか、
 それを正しく認識することができないのかも知れませんが、
 それもまた致命的です。

日本で流れるニュースを鵜呑みにしてしまうと、
 客観的な事実として正しく理解することはできません。


 自分自身でニュースを正しく読み解くスキルを身につけることが
 大切だと思います。

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 この大前研一のメッセージは6月23日にBBT Chで放映された  
 大前研一ライブの内容を抜粋・編集し、本メールマガジン向けに
 再構成しております。
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✅KON472のキーワード・キーセンテンス

1「日本の中枢が極右化しつつある」

安倍首相は憲法改正を強く打ち出していました。憲法改正と一言で言っても
第九条と第九十六条の2つの改正が中心でした。

第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

e-gov 法令検索


第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。

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安倍元首相は、第九条において、自衛隊を軍隊と明示し定義し直すことと、第九十六条において、憲法改正手続きをしやすくすることを中心にしばしば国会内外で発言していました。


2「日本で流れるニュースを鵜呑みにしてしまうと、客観的な事実として正しく理解することはできません」

しばしば指摘されることですが、日本記者クラブで発せられる「政府見解」を鵜呑みにして、突っ込んだ質問もせずに記事にすることが慣例化しています。忖度記事が書かれることは驚くに値しません。

スクープが滅多に出てこなくなった背景にはこうした事情があります。記者が独自取材をしなくなり、共通の元ネタを材料にして記事にしているので、記事内容にほとんど違いが出てこないと指摘されています。

週刊誌の記者は日本記者クラブに所属していませんから、独自取材を重視し、時にスクープ記事を公表することがあります。

旧統一教会への信者の多額の寄付や、安倍元首相を含む主に自民党議員の旧統一教会との深い関係や、ジャニーズ事務所のジャニー喜多川氏による性加害報道を見れば理解できるでしょう。

BBCが報道したら堰を切ったように日本のメディアが報道し始めました。

忖度という一言で片づけるのは、問題の本質の根深さを考慮するとあまりにも軽すぎます。


✒ 編集後記

「メルマガ 大前研一 ニュースの視点」を読み返してみると、当時のことが断片的に思い出されてきました。10年という歳月が流れましたが、ところどころ記憶に残っていた個所があり、またその後の経過を確認することができています。

栄枯盛衰は世の常です。
それは、企業においても、個人においてもしかりです。

以前であれば、一流企業は安泰で、そこに勤務していれば定年まで安心して働けるという共通認識がありましたが、現在では「一瞬先は闇」です。

大前研一氏の先を見通す力や発想力、構想力、分析力、発信力、その他にも多数ありますが、私には何一つ追いつけるものはありません。

それでも、大前氏をグル(「指導者」「教師」「尊敬すべき人物」「師匠」)と仰ぎ、書籍や動画などを通じて、これからも間接的に指導を受けたいと思っています。

今回は15,000文字を超えました(15,806文字)。


✑ 大前研一氏の略歴

大前 研一(おおまえ けんいち、1943年2月21日 - )は、日本経営コンサルタント起業家マサチューセッツ工科大学博士マッキンゼー日本支社長を経て、カリフォルニア大学ロサンゼルス校公共政策大学院教授やスタンフォード大学経営大学院客員教授を歴任。
現在、ビジネス・ブレークスルー大学学長、韓国梨花女子大学国際大学院名誉教授、高麗大学名誉客員教授、(株)大前・アンド・アソシエーツ創業者兼取締役、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長等を務める。 (Wikipedia から)

大前研一氏の略歴補足

大前氏は日立製作所に勤務時、高速増殖炉もんじゅの設計を担当していましたが、原発の危険性を強く感じていたそうです。
MITで原子力工学の博士号を授与されています。原子力の専門家でもあり、世界的に著名な経営コンサルタントでもあります。

世界一の経営コンサルティングファームのマッキンゼーに転職。
マッキンゼー本社の常務、マッキンゼー・ジャパン代表を歴任。

都知事選に出馬しましたが、まったく選挙活動をしなかった青島幸男氏に敗れたことを機に、政治の世界で活躍することをキッパリ諦め、社会人のための教育機関を立ち上げました。BBT(ビジネス・ブレークスルー)を東京証券取引所に上場させました。

大前氏の書籍は、日本語と英語で出版されていて、米国の大学でテキストとして使われている書籍もあるそうです。


「大前研一 ニュースの視点」というメルマガに登録したのは10年前のことです。毎週金曜日に配信されています。
2013/03/03 0:28
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大前研一 ニュースの視点の通し番号にKON・・・となっています。
KO は Kenichi Ohmae です。N はナンバーです。


さて、私に最初に配信されたメルマガのタイトルは下記のようになっていました。

KON456【北方領土問題と韓国の新大統領~長期的な時間の流れで考える】 ~大前研一ニュースの視点~

通算で456件目だったのです。そのため、1~455のメルマガを読むことはできません。

ところが、調べてみたところ、2006年3月24日(当時は#106)以降であれば読めることがわかりました。


いずれの日にか、バックナンバーも取り上げます。



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