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攻めの人権経営 強制労働、差別・・・リスクを強さに 2023.04.03 1/3




日経ビジネスの特集記事 88

攻めの人権経営 強制労働、差別・・・リスクを強さに 2023.04.03 1/3

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>

CONTENTS

PART 1 ミャンマー“現代奴隷”の実態に迫る 今そこにある人権リスク 企業脅かす経営の死角 

PART 2 脱・児童労働のカカオ豆、障害者が楽しめるゲーム タブーからチャンスに 攻める企業は先へ行く

PART 3 英国が現代奴隷法、ドイツは供給網の調査法 世界で進む人権法制化 日本はすでに周回遅れ

COLUMN あなたのアンコンシャス・バイアスをチェック 「無意識の思い込み」が差別を助長

PART 4 金の卵が志向する“倫理的な就活” Z世代は人権ネーティブ 問われる企業の包容力



第1回は

PART 1 ミャンマー“現代奴隷”の実態に迫る 今そこにある人権リスク 企業脅かす経営の死角


を取り上げます。


今週の特集記事のテーマは

取引先や供給網が複雑に入り組んだグローバル経済。企業は思わぬ人権侵害リスクに囲まれている。強制労働や児童労働、女性や性的少数者、障害の有無による差別や偏見──。配慮すべき権利を軽んじれば、企業は訴訟や不買運動など代償を支払う。欧州や米国では企業の人権侵害を防ごうと、法制化が進む。企業経営者はこの難題に萎縮するのか、奇貨とするのか。先進企業は多様性を重んじ、新ビジネスの起点にしようと奮闘している。

(『日経ビジネス』 2023.04.03 号 p. 009)

です。


世界のどこかに「奴隷」が実在するという現実を突きつけらえると、恐怖とともに本当なのかと目を疑いたくなります。

比喩的に、「〇〇奴隷」ということはあっても、「現代奴隷」という言葉に戦慄を覚えます。しかも、私たちに関係ないことではありません。

”奴隷制度” が存在する国や地域は衣料品や食料品の生産地であり、間接的とはいえ、関わりのある日本企業も損害賠償責任や刑事責任を問われかねない実態が白日の下に晒されます。

実際に損害賠償請求を突き付けられ、支払いに応じたケースがあります。その結果、取引を取りやめざるを得なかったケースがあります。

”奴隷制度” が存在する現地で取材した迫真のレポートです。


PART 1 ミャンマー“現代奴隷”の実態に迫る 今そこにある人権リスク 企業脅かす経営の死角


海外の強制労働、児童労働など企業活動には様々な人権侵害リスクが潜む。人権を軽視すれば信用は失墜して、訴訟や不買運動、株価下落などを招く。

攻めの人権経営 強制労働、差別・・・リスクを強さに 
2023.04.03 p. 010
 


ケース1 ミャンマー


メーソートにある縫製工場の実態

タイ西部に位置するミャンマーとの国境の街、メーソートで操業する縫製工場で2020年に発覚した強制労働が、調達元のグローバル小売りチェーンも巻き込んだ、大きな事件に発展している。

縫製工場では当時、200人ほどのミャンマー人が、当時の最低賃金である1日8時間当たり315バーツ(約1200円)を下回る賃金で働かされていた。毎日午前8時から午後11時までの長時間労働を強いられ、週の労働時間は100時間近くに及んだ。休みは月1回、給料日の翌日だけだったという。

工場側はミャンマー人作業員の入国許可証や労働許可証、通帳などを取り上げた上に、狭い5人1部屋に押し込め、寮費として1人当たり月800バーツを徴収していた。工場内にはエアコンがなく、扇風機があるばかり。照明は暗く、自前で作業用の照明を用意しなければならなかった。

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[1][2]ミャンマーとの国境に位置するタイ西部のメーソートの
縫製工場で発覚した強制労働は調達元の
英小売り大手を巻き込んで、
国際的な事件に発展している 
[3]元作業員のピョウピョウマーさん(左)や
キンマーエーさん(中)らの勇気ある告発と、
[4]ジラーラット・ムーンシリ弁護士の支援があって、
故国の政情不安も重なって、
立場の弱いミャンマー人労働者を食い物にする
不当労働の一端が明らかになっている
攻めの人権経営 強制労働、差別・・・リスクを強さに
2023.04.03


縫製工場の劣悪ぶりの実態が明るみになった経緯

違法な低賃金、長時間労働、移動の自由に対する制限……。元作業員らが地元でミャンマー人労働者の相談役になっている弁護士のジラーラット・ムーンシリ氏に、この縫製工場のあまりの劣悪ぶりを訴え出たことによって、事態は明るみに出た。

攻めの人権経営 強制労働、差別・・・リスクを強さに 
2023.04.03 p. 011
 


ただし、一挙に解決とはなりませんでした。一筋縄ではいかない事情がありました。

内部告発 ⇒ 悪弊は一掃されていない 

元作業員の勇気ある告発で一部の違法労働が明るみに出たとはいえ、地元経済に巣くった悪弊を一掃することは難しい。元作業員3人は20年の事件発覚以来、現在に至るまで定職に就けていない。ムーンシリ氏の推察によれば、「恐らくは周辺の工場に、告発に関わった作業員のブラックリストが出回っている」。

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ミャンマーはご存じのように軍事政権が復活し、全権を握っています。軍による独裁国家であるため不正が行われていても、自浄作用が働きません。

現代奴隷・・・強制労働、強制結婚 

国際労働機関(ILO)などは、強制労働と強制結婚の被害者を「現代奴隷」と呼んでいるが、その数は21年時点で世界に約5000万人としている。5年前よりも1000万人以上も増えているとの指摘だ。また、移民労働者は、そうでないケースと比べて、強制労働を課される可能性が3倍以上高いという。

軍事政権下で長く民主化運動の弾圧が続いてきたミャンマー。11年には民政へと移管したが、明るい時代も10年しか続かなかった。21年2月にクーデターで再び全権を握った国軍は市民の抗議デモを力で抑え込んだ。国内では軍の暴力におびえ、国外では故国に帰れない立場の弱さにつけ込まれる。少なくないミャンマー人が人権侵害の危機にさらされているが、これは日本企業にとって決して遠い世界の話ではない。

攻めの人権経営 強制労働、差別・・・リスクを強さに 
2023.04.03 p. 012
 


攻めの人権経営 強制労働、差別・・・
リスクを強さに 2023.04.03


攻めの人権経営 強制労働、差別・・・
リスクを強さに 2023.04.03


日本企業も他人事ではない ミキハウス

子供服ブランド「ミキハウス」を展開する三起商行(大阪府八尾市)は16年11月、国際人権団体「ヒューマンライツ・ナウ」から、子会社の委託先で、ミャンマー最大都市のヤンゴンにある縫製工場で人権侵害が起きている実態を指摘された。

攻めの人権経営 強制労働、差別・・・リスクを強さに 
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具体的にどのようなことが行われていたのでしょうか?

劣悪な労働環境

三起商行はこの工場に、カジュアルラインの製品をスポットで発注していたが、600人以上が働く現場は劣悪な環境に陥っていた。平野芳紀・企画本部統括部長は「繊維専門商社が仲介しており、2~3年前から始まっていたこの工場との取引自体を把握できていなかった」と悔やむ。

残業は平均で平日2.5時間、土曜日4時間に達し、ミャンマーの工場法で定められた労働時間の上限(週48時間)を超えるのが当たり前になっていた。工場には冷房設備がなく、大きな扇風機が6台設置されるのみ。最高気温が40度を超える夏場は、複数の作業員が暑さで倒れたが、工場内の病院には、応急処置に必要な医療器具や薬がなかった。

攻めの人権経営 強制労働、差別・・・リスクを強さに 
2023.04.03 p. 012
 


いわゆる "タコ部屋" 状態に近いものだったのです。
劣悪な環境下で、過重労働を強いられ、低賃金で働かされていたのです。
人権を無視したというよりも、人権そのものを認めない慣行が行われてきたのです。

民政移管後に、多くの日本企業が「アジア最後のフロンティア」を求めて進出したミャンマー。軍事クーデターが起こると、各社は国軍との関係を厳しく問われることになり、人権リスクに直面した。

攻めの人権経営 強制労働、差別・・・リスクを強さに 
2023.04.03 p. 013
 


ケース2 新彊ウイグル自治区


日本国内の人権意識は希薄

取引網を世界に広げた現代の企業にとって、目の届きづらい人権リスクをどう把握するかは喫緊の経営課題だ。21年には中国による新疆ウイグル自治区の人権抑圧問題への対応が不十分だと投資家から見なされ、「ユニクロ」のファーストリテイリングや「無印良品」の良品計画の株価が急落するという局面もあった。

実際、日本国内の人権意識は高いとは言い難い。国連の調査でも、SDGs(持続可能な開発目標)の17項目のうち、日本人の関心は「気候変動」やリサイクルの推進や食品ロス削減などを目指す「つくる責任つかう責任」といった環境関連では高いものの、「貧困」や「ジェンダー」といった人権関連の課題への関心は国際比較で低い。人権という言葉にある種の青臭さや押し付けがましさを感じて、苦手意識を持っている読者も多いのではないだろうか。

攻めの人権経営 強制労働、差別・・・リスクを強さに 
2023.04.03 p. 013
 



人権リスク

人権リスクは日常の中に潜んでいる。取引先や社内との頻繁な飲み会は、パワハラやセクハラの温床になり得るし、広告のモデルに子供を起用していれば、児童労働の疑いはないか目を光らせなければならない。支店や製造拠点への転勤制度が、居住移転の自由を侵害していると批判される可能性も否定しきれない。

攻めの人権経営 強制労働、差別・・・リスクを強さに 
2023.04.03 p. 014
 


人権デューデリジェンス

日本の経済界で人権重視の機運が高まっている兆しと言えそうだが、各社が具体的な取り組みを進める上での第一歩となるのが、「人権デューデリジェンス」だ。デューデリジェンスは、投資やM&A(合併・買収)をする際に投資先の資産価値やリスクなどを査定することを指す。人権デューデリは文字通り、その人権面の取り組みを評価することだ。

攻めの人権経営 強制労働、差別・・・リスクを強さに 
2023.04.03 p. 014
 


人権に関する問題に対し、経営者層が積極的に取り組む姿勢を示すことはあまりないと推測されます。現場の担当者に丸投げし、責任を取らせるというケースが多いと思われます。

日本における外国人労働者の労働環境

直近の重要なテーマに挙がったのは「日本における外国人労働者の労働環境」。地上ハンドリング業務に就いているネパール人やフィリピン人らに聞き取りをすると、「休憩や仮眠ができるスペースを充実させてほしい。特に深夜勤務の時間帯に必要だ」という声が上がった。こうした声を受けて、20年には羽田空港に100人が休憩できるスタンバイエリアを設けた。また、業務委託しているパートナー企業を含む同社で働く外国人労働者の雇用状況をタイムリーに把握できるシステムも稼働させ、現場の実態把握に努めている。

攻めの人権経営 強制労働、差別・・・リスクを強さに 
2023.04.03 p. 014
 


経営陣の責任は重い

訴訟、不買運動、罰金、株価下落──。人権に真剣に向き合わない企業には大きなツケが回る。経営陣には、取引先も含めて事業全般を総点検し、人権侵害を防ぐ重い責任が課せられている。
ただ、社会的責任の重さとリスクにおびえているばかりでは、経営は力強さを失ってしまう。ならば、人権重視という潮流を奇貨としてはどうだろうか。そこには新たな事業機会が広がっているはずだ。

攻めの人権経営 強制労働、差別・・・リスクを強さに 
2023.04.03 p. 015
 


次回は

PART 2 脱・児童労働のカカオ豆、障害者が楽しめるゲーム タブーからチャンスに 攻める企業は先へ行く

PART 3 英国が現代奴隷法、ドイツは供給網の調査法 世界で進む人権法制化 日本はすでに周回遅れ


をお伝えします。



🔷 編集後記

「人権経営」という言葉には、労使双方ともに守らなくてはならないルールが根底にあることを十分に理解する必要があります。

現場で働いているのは人間であり、人間であるからこそ人権を遵守し、労使ともに、社会との関わりを大切にすることが不可欠であるということです。

決して自己完結するものではありません。
ESG経営も時々テーマになることがありますが(E=環境、S=社会、G=企業統治)、あることを推進していくと環境保護に逆行することになるケースがあります。

例えば、EVは電気で動くクルマですが、クルマ自体は搭載しているバッテリーで動きますが、バッテリーを充電する電力はどこから得ているかと言えば、火力発電であったりします。石油あるいは石炭という化石燃料であり、脱炭素のクリーンエネルギーではありません。

中国は国内のEVの販売台数でBYDがテスラを抜きました。その一方で、中東から原油を輸入しています。本末転倒ですね。しかし、それが現実です。

ドイツは脱原発を実現(2023年4月15日)し、再生可能エネルギーへの移行を推進しています。

ところが、ドイツ国内では今でも「国民の意見は分かれている」という記事がありました。ただし、約1年前の記事なので、現状は変わっていないとは言えません。

ドイツが脱原発を実現 国民の意見は今も割れている 2023年4月18日
BBC NEWS JAPAN

原発支持派も反対派も、相手が不合理なイデオロギーを掲げていると非難している。

保守派の政治家や評論家は、ドイツが緑の党の信念にとらわれてしまっており、ロシアからのエネルギー供給が減り、エネルギー価格が値上がりしている時に国内の原発を停止したと指摘。また、政府が温室効果ガスの排出量の少ない原子力を使わず、化石燃料への依存を高めていると批判した。

ドイツが脱原発を実現 国民の意見は今も割れている 
2023年4月18日 BBC NEWS JAPAN
 


ドイツは現在、電力のほぼ半分を再生可能エネルギーでまかなっている。連邦統計局によると、2022年には44%が再生可能エネルギー由来で、原発が占める割合はわずか6%だった。緑の党所属のロベルト・ハベック経済相は、2030年までにはドイツの電力の80%が再生可能エネルギーでまかなわれると予測。太陽光や風力発電所の建設を迅速化・容易化させるための法律を後押ししている。

ドイツが脱原発を実現 国民の意見は今も割れている 
2023年4月18日 BBC NEWS JAPAN
 


ドイツが脱原発を実現 国民の意見は今も割れている 
2023年4月18日 BBC NEWS JAPAN
 


保守派のマルクス・ゼーダー・バイエルン州首相は13日、イザール2を訪問し、残りの3原発の運転継続だけでなく、すでに停止した古い原発の再稼働を呼びかけた。これには、同州でゼーダー氏が停止を命じた原発も含まれている。

ドイツが脱原発を実現 国民の意見は今も割れている 
2023年4月18日 BBC NEWS JAPAN
 


一筋縄ではいかない現実があります。



日経ビジネスはビジネス週刊誌です。日経ビジネスを発行しているのは日経BP社です。日本経済新聞社の子会社です。

日経ビジネスは、日経BP社の記者が独自の取材を敢行し、記事にしています。親会社の日本経済新聞ではしがらみがあり、そこまで書けない事実でも取り上げることがしばしばあります。

私論ですが、日経ビジネスは日本経済新聞をライバル視しているのではないかとさえ思っています。

もちろん、雑誌と新聞とでは、同一のテーマでも取り扱い方が異なるという点はあるかもしれません。

新聞と比べ、雑誌では一つのテーマを深掘りし、ページを割くことが出来るという点で優位性があると考えています。


🔴情報源はできるだけ多く持つ

海外情報を入手しようとすると、英語力が必須であったり、膨大な情報がクラウドサービスを利用すれば手に入りますが、それでも非公開情報はいくらでもあります。まず信頼性の高い文献に当たってみることが必要になります。

日本の国立国会図書館のウェブサイトや米国の議会図書館のウェブサイトに当たってみるのも良いかもしれません。

もちろん、ロイターブルームバーグなどの報道機関の日本版(PCやアプリ)がありますから、これらを利活用すればある程度の情報を収集することは可能です。これらのLINEアプリもありますので、情報を収集することはできます。

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あとは自分で、関心のあることに絞って検索したり、ChatGPTBardに質問してみて、知見を広めるのが良いでしょう。

ロイター

ブルームバーグ

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(7,092文字)


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