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大胆予測 2023 「有事」に備えよ 2022.12.26 2023.01.02 2/3

日経ビジネスの特集記事 50

大胆予測 2023 「有事」に備えよ 2022.12.26 2023.01.02 2/3

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>

今号は、年末・年始の2週合併号となります。
2023年はどんな年になるでしょうか。
東アジアで厄介な問題と言えば、「台湾有事」です。
中国にとって台湾は邪魔な存在です。
どんな手を使ってでも掌中に収めようと躍起になっています。

「台湾有事」は対岸の火事ではありません。日本も大いに関わっています。


PART 2 円安、消費低迷、テックバブル崩壊…… 日本経済を取り巻くリスクを見過ごすな

日経ビジネスは2023年を悲観的に見ています。

2023年の日本経済はお世辞にも明るいとは言えない。為替の円安、インフレと消費停滞、テックバブルの崩壊……。

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リスクシナリオ① 円安が再進行 為替、1ドル=150円が日常に

円安のほうが企業にとって良いという考え方は、現在では否定的に見られることのほうが多いですね。なぜなら、日本はもはや貿易立国ではないからです。輸出額よりも輸入額のほうが多くなってきているからです。

日本国内で生産するより、海外で生産し輸入するほうが多いからです。
昔は、産業の空洞化(地域経済を支える製造業の工場が域外に移転することで、その地域の産業が衰退する現象=日経ビジネス 2022.2.14)が起こると言われました。

 今では、一部の企業が国内回帰をしていますが、その理由は進出している国々(主にアジア)の成長が著しく、賃金が上昇し製造原価の高騰を引き起こしているからです。

日本国内のほうが(ドル換算すると)賃金が安いという状況になっています。

約30年間、賃金の伸びが抑えられてきました。横ばいが続いていました。

足元(12月15日時点)では135円台と一服したようにもみえるが、23年に向けて再び円安が進み「1ドル=150円時代」が訪れる可能性はなお残る。

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ちなみに、今日のドル円レートは 135.74 円 (5月14日 9:51) です。

「従来1ドル=100~120円だった円相場の変動域が、120~140円や130~150円にスライドしている可能性は高い」。みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは指摘する。唐鎌氏が背景として挙げるのは「貿易黒字の消滅と対外直接投資の急拡大」だ。

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もう少し為替変動について見ていくことにしましょう。

為替を取り巻く環境が以前とは大きく変わってきている

かつてはいったん円安が進んでも、それを機に輸出が拡大したり、海外に蓄えられていた金融資産が国内に回帰したりして、円高が進むという修正メカニズムが働いた。時には円高要因が注目され1ドル=75円台のような水準を付けた。
今やその修正メカニズムが機能しにくい。大和証券によると、対ドルで1円円安が進んだ場合の主要企業(約200社)の経常利益の押し上げ効果は、直近で0.4%。約20年で半減した。構造変化によって円安のプラスの効果が薄れているというわけだ。

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少子高齢化も円安に振れる要因になりうる

そもそも日本は少子高齢化で経済のパイを増やしにくい。数少ない外貨の獲得手段であるインバウンド(新型コロナウイルス禍前には旅行収支で約2兆6000億円の黒字)についても、一部の宿泊施設では働き手が確保できず稼働率を上げられない。
サービス業でさえ人手が確保できないなら、工場の国内回帰も見込み薄だ。その上、電力インフラは価格も安定性も不透明で台風や地震など災害リスクもある。

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本来、国力が強ければ自国通貨は高くなります。

ドル円の歴史を振り返ると、分かるかもしれません。
戦後、ドル円レートは 360円 に固定されました(固定相場制)。日本は国内で製造し輸出に励みました。そのかいあって世界が驚くような戦後復興を成し遂げたのです。ある意味、米国の協力によって貿易立国ができたのです。輸出すれば1ドル当り360円が入ってきたのですから。

ところが、1971年8月15日に世にいう「ニクソン・ショック」が起き、1ドル360円から308円に切り下げられました。変動相場制のスタートでした。


その後、日本の国力の増大に伴い、円高が進行しました。

ドルは世界の基軸通貨ですから、米国は世界中でドルで取引できます。
一方、日本はドル建て取引となれば、為替の変動によって増えることもあれば、減ることもあります。必ず、ドルを円に変えなけばならないからです(円転)。ドルで取引できる米国と、ドルを円に変えなければならない日本との差があります。

ちなみに、歴史上最も円高になったのは、1995年4月19日の1ドル=79.75円でした。

1995年4月19日、1973年に変動相場制が導入されて以来、円の最高値となる1ドル79.75円を記録しました。

トウシル 東京外国為替市場で
1ドル79.75円を記録。
当時として史上最高値
【1995(平成7)年4月19日】


日経ビジネスは2022年の急激な円安になった主因(米国の利上げ)

もちろん、22年の急激な円安のもう一つの主因は米国での利上げだ。金融政策をつかさどる米連邦準備理事会(FRB)は政策金利を急ピッチで引き上げてきた。「高金利通貨は買われる」の原則通りドルが急騰し、ドルの総合的な強さを示すドル指数は9月下旬には114と20年ぶりの高水準に達した。これが23年には一服するとの期待から、足元の円高・ドル安につながっている面はある。

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中国が米国のインフレ圧力を高める可能性

足元では「伏兵」も現れた。中国がいわゆる「ゼロコロナ政策」を緩和し、経済再開を進めていることだ。中国経済の活性化が、急な需給の逼迫という形で巡り巡って米国経済のインフレ圧力を高める可能性もある。為替相場にとっては円安圧力になる。

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リスクシナリオ② 踊らぬ消費 続く物価高、伸びぬインバウンド

5月に入り食料品の値上げが相次いでいます。

総務省が公表している資料をご覧ください。(pdf)
2020年基準 消 費 者 物価指数
に2023年3月の数値が示されています。https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

その一部を下記に掲載します。

総務省統計局の資料を元に作成


消費者物価指数が上昇していることは、この資料からも読み取れます。
私たち一般消費者はモノの値段がもっと上昇していると感じています。
私は、食料品のみならず、水道光熱費(電気・ガス・水道料金)の中でとりわけ電気料金が上昇したと実感しています。


物価上昇に賃上げは追い付かない

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物価上昇に賃上げは追い付かない。CPIと実質賃金指数の推移をグラフにすると、この傾向が鮮明に浮かび上がる(上のグラフ)。

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値上げラッシュ

帝国データバンクの調査によると、23年に予定される食品の値上げは、主要105社だけで既に4000品目を突破。23年2月に再び「値上げラッシュ」が起きる(下グラフ)。

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食品スーパーのヤオコーのケース

水道光熱費の上昇は、消費者だけでなく、企業にも重荷になっています。

食品スーパーでは既に消費の変調が表れ始めている。埼玉県を地盤とするヤオコーでは、前年比で来店客の買い上げ点数の減少が続く。物価高で消費者の財布のひもが固くなり、買い控えが広がっているからだ。

一方、同社では電気代の高騰により水道光熱費が年30億円増える見通しで、22年4~9月期は12年ぶりの減益となった。ヤオコーだけではない。スーパー各社は軒並み同様の理由で減益決算を強いられている。

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ニッセイ基礎研究所の調査

ニッセイ基礎研究所は、政府による物価高対策もあり、CPI(生鮮食品を除く)の伸び率は23年中に2%台へ低下するとみるが、依然高水準には変わりない。賃金が増えなければ、家計の購買力は低下する一方だ。

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頼みの綱はインバウンド需要の回復?

頼みの綱はインバウンド(訪日外国人)需要の回復である。コロナ禍による入国制限でほぼゼロになったインバウンドが、制限の緩和によって、ようやく戻り始めている。
(中略)
全体を見渡すと、まだまだ完全復活には程遠い。日本政府観光局の推計値では、22年10月のインバウンド客数は49万8600人。19年10月(249万6568人)と比べると、5分の1程度にとどまる。

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インバウンド需要は、期待するほどには回復していないようです。
特に中国からのインバウンド旅行者が増えていないことが、業界関係者の先の見通しに不透明感を与えていると考えられます。

中国のゼロコロナ政策の緩和による効果は?

中国はゼロコロナ政策を緩和する方針だが、諸外国との往来を解禁する“開国”はまだ見通せない。岸田文雄首相は22年10月の所信表明演説で、インバウンド旅行消費額を年間5兆円超まで増やすと表明したが、目標達成への視界は開けていない。

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リスクシナリオ③ テック業界浮上せず バブル崩壊、株価「二番底」も

半導体関連企業のレーザーテック(6920)の株価は、2022年1月の大発会に36,090円(場中)の最高値を記録しました。2023年5月15日の株価は18,340円でした。ほぼ半値になってしまいました。

非常に期待されていただけに、当社にとっても株主にとっても大きなショックとなりました。

世界のテック企業に投資しているソフトバンクグループ(9984)<SBG>にとっても、テック企業の株価が軒並み下落したため、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの評価損は莫大です。もちろん、テック業界が急浮上すれば一気に回復することが可能ではありますが。

ソフトバンクグループの業績悪化の要因

スタートアップの価値急落のあおりで業績が悪化したSBGは、新規投資の事実上の停止を宣言せざるを得なくなった。伊藤忠商事の佐藤浩毅シリコンバレー事務所長によると、「米国で長くスタートアップ投資を続けてきた投資ファンドは、(SBGなどの)『ツーリスト(一部の投資家を、旅先で大枚をはたく観光客に批判的にたとえて呼ぶ言葉)』は去り、スタートアップの企業価値は適正になると話している」という。

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テック株下落の背景

テック株の下落の背景には、大手の「高成長神話」に陰りが見えたこともある。動画配信の米ネットフリックスは会員の減少に直面した。四半期ごとに比較可能な12年以降で減少は初めてだ。米アルファベット(米グーグルの親会社)は22年7~9月期、動画共有サービス「ユーチューブ」の広告売上高が前年割れに。メタ(旧フェイスブック)とアマゾン・ドット・コムの営業利益は前年同期のほぼ半分になった。

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テック業界は回復できるのか

23年はテックバブル崩壊から回復できるのか。気掛かりなのは、「22年の株価の動きがリーマン・ショックに似ている」(三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩氏)という指摘だ。BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「米国の消費は耐久消費財からサービスに向かっている。金利が上がっても、サービス価格は落ちづらい」とみる。

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日本のスタートアップ市場
(noteに関する記述があります)

日本はどうか。22年の国内のスタートアップ市場は米国同様に冷え込んだ。英語学習のプログリットや、投稿プラットフォームのnoteは、上場前に算定された企業価値よりも、上場時の時価総額が低い「ダウンラウンド上場」になってしまった。投資家の意欲も減退し、資金調達に苦労するスタートアップも出てきている。

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*「ダウンラウンド」に関連する記事を投稿しています。そこでも note に関連する記述があります。

宇宙ベンチャー上場 IPO時の企業評価に課題あり?

ダウンラウンドとは?

前回の資金調達における株価よりも低い株価で資金調達することを「ダウンラウンド」と呼ぶが、22年以降、アイスペースのような「ダウンラウンドIPO」が増加している。

日経ビジネス IPO時の企業評価に課題あり? 2023.04.24 p.097  


note (5243) にも言及

例えば22年12月に上場した、メディアプラットフォーム運営のnote(ノート)は、直近22年4月の資金調達(第三者割当)時の発行価格が2062円だったが公募価格は340円だった。
米国の利上げやウクライナ危機を背景に、株式市場が調整局面に入り、投資家のリスク許容度が低下。スタートアップの資金調達環境は「冬の時代」に突入している。

日経ビジネス IPO時の企業評価に課題あり? 2023.04.24 p.097          

2023年4月21日の note (5243) の終値は 587円 前日比 -19円 -3.14% でした。


ただし、デジタル化の実需は底堅いと日経ビジネスは述べています。

デジタル化の実需底堅く

日本はコロナ禍でデジタル化の遅れを指摘された。逆に言えば、デジタル投資の余地が大きい。投資ファンド、ワン・キャピタル(東京・港)の浅田慎二CEO(最高経営責任者)は、「投資家の熱は冷めても、日本企業のSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を導入したいという実需は去っていない」と話す。デジタルを得意とするスタートアップに成長余地があるとみている。

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岸田政権はスタートアップ育成に1兆円計上

岸田政権は22年度の第2次補正予算で、スタートアップ育成向けに1兆円を計上した。歴代政権と比べてケタ違いの規模だ。デロイトトーマツベンチャーサポート(東京・千代田)の斎藤祐馬氏は、「お金だけでなく優秀な人材がスタートアップに流れれば、成長する余地はある」と指摘する。日本にとって好機であり、正念場でもある。

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お金さえ出せばスタートアップ育成に寄与するとは言えませんが、少なくとも今までは全くと言っていいほどに、スタートアップ企業の育成のために資金を出してこなかったのですから、大きな前進と言えます。


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この壮大な目標実現に対しては、私は懐疑的です。


次回は、

PART 3 記者が展望、主要業種の2023年 高まるコスト、滞る消費 逆境が革新迫る


をお伝えします。


🔷編集後記

第2回は3つのリスクシナリオを中心にお伝えしました。
シナリオは、未来を想定することですから当たることもあれば、当たらないこともあります。ですから起こる可能性の高い事態を想定して策定します。

シナリオプランニングという手法があります。

シナリオプランニングとは

シナリオプランニングとは、将来起こるかもしれない複数のシナリオを描いたうえで、自社の事業や経営方針、想定される出来事への対処法を導きだす手法です。
(中略)
シナリオプランニングは「こうなったらいいな」といった楽しい未来を予想する「戦略的楽観主義」に基づいたものではありません。最悪の事態を考えておくことで、悪い状況に陥ることを回避する「防衛的悲観主義」であることが前提です。そのため、予想する未来は実際に起こりうる可能性のあるリアリスティックな内容であることが必要です。

シナリオプランニングとは?進め方やシナリオ作成のポイント
Sofia 2022.04.22


「備えあれば憂いなし」という諺は使い古されたものではなく、現代においても重要で役に立つものとなっています。


日経ビジネスはビジネス週刊誌です。日経ビジネスを発行しているのは日経BP社です。日本経済新聞社の子会社です。

日経ビジネスは、日経BP社の記者が独自の取材を敢行し、記事にしています。親会社の日本経済新聞ではしがらみがあり、そこまで書けない事実でも取り上げることが、しばしばあります。

日経ビジネスは日本経済新聞をライバル視しているのではないかとさえ思っています。

もちろん、雑誌と新聞とでは、同一のテーマでも取り扱い方が異なるという点はあるかもしれません。

新聞と比べ、雑誌では一つのテーマを深掘りし、ページを割くことが出来るという点で優位性があると考えています。


【『日経ビジネス』の特集記事 】 No.50

⭐『日経ビジネス』の特集記事から、私が特に関心を持った個所重要と考えた個所を抜粋しました。
Ameba(アメブロ)に投稿していた記事は再編集し、加筆修正し、新たな情報を加味し、再投稿した記事は他の「バックナンバー」というマガジンにまとめています。

⭐原則として特集記事を3回に分けて投稿します。
「私にとって、noteは大切なアーカイブ(記録保管場所)です。人生の一部と言い換えても良いもの」です。
プロフィールから)


日経ビジネス電子版セット(雑誌+電子版)「らくらく購読コース」で、2022年9月12日号から定期購読を開始しました。


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