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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉 Vol.19】

大人の流儀

 伊集院 静さんの『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。

 時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院さんはこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。

 帯に自筆で「ちゃんとした大人になりたければこの本を読みなさい」と記しています。

 ご存知のように、伊集院さんは小説家ですが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。



「愛する人との別れ~妻・夏目雅子と暮らした日々」から

伊集院 静の言葉 1 (55)

 
 二百九日間の入院でしたが、当人は本当によく治療に励んでくれました。生来の明るい性格もありましたが、泣きごとを口にしたのは一度しかなかったように思います。私も仕事を休んで病室に入りました。それが大人の男として取るべき手段だったかは今もよくわかりませんが、彼女の安堵になったのならば(勿論、私自身にとってもそうですが)それはそれでよかったのだろうと思っています。

大人の流儀 1 伊集院 静                




「愛する人との別れ~妻・夏目雅子と暮らした日々」から

伊集院 静の言葉 2 (56)

 
 現在と違って、二十五年前の血液癌の治療はずいぶんと遅れていました。日本での骨髄移植もほんの数例しかなく、その生存例も術後三年経過していませんでした。寛解かんかい治療を中心にして悪質な白血球細胞にアタックをかける治療が続けられました。若いということは厳しい治療に耐えられる体力を持っている利点もありますが、同時に悪質な白血球細胞の増殖が速いというマイナスもあるわけです。

大人の流儀 1 伊集院 静               



「愛する人との別れ~妻・夏目雅子と暮らした日々」から

伊集院 静の言葉 3 (57)

 
 血液癌に限らず、一般的に癌を患った方とその家族が、癌の知識、その治療法に詳しくなるのは当然で、私も血液癌に関して随分と勉強することになりました。
(中略)
 今は日本でも当時と比べものにならないほど進んでいるそうです。その時の習性か、今でも血液癌の医療雑誌を読むことがあります。詮方ないことですが、今日なら生還できたのではと考えることがあります。

大人の流儀 1 伊集院 静               



出典元

『大人の流儀 1』
2011年3月18日第1刷発行
2011年7月14日第11刷発行
講談社



✒ 編集後記

『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。

伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。

伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます。

🔷 前回に引き続き、『大人の流儀 1』の最後の章愛する人との別れ~妻・夏目雅子と暮らした日々についてお伝えします。

しばらく続きます。

妻が入院した時、癌はステージⅣでした。事実上の末期癌でした。
入院期間はわずか19日間でした。若かったので(享年52歳)、癌の進行が速かったのです。乳癌がリンパ節に転移し、癌細胞が全身に広がったのです。

当人はさぞ辛かったことでしょう。外科手術、放射線治療、抗癌剤投与、免疫療法のどれ一つでも行えませんでした。

主治医の一言が、今も心の底に残っています。

「手遅れです」

そうだとしても「今日なら生還できたのではと考えることがあります」というのは、まったく同じ心境です。



夏目雅子さん ガールズログから 






🔶 伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。


<著者略歴 『大人の流儀』から>

1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。

91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。

作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。





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藤巻 隆
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