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女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ 2023.03.13 1/3


日経ビジネスの特集記事 79

女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ 2023.03.13 1/3

<このページでは、『日経ビジネス』の特集記事の概要紹介と、管理人のコメントを掲載しています>

CONTENTS

PART 1 賃金格差解消で消費13兆円増 非正規にも賃上げドミノ 女性なくして成長なし 

PART 2 女性の収入増を阻む昭和モデル 103万円の壁はいらない 性別役割分業と決別を

PART 3 コロナ禍が広げた雇用均等の地平 崩れる「出社=出世」女は実力主義で輝く

RANKING 商社・外資系が年収上位独占

PART 4 スタートアップも男性優位社会 資金調達に「出産の壁」 突き破れ、女性起業家



第1回は

PART 1 賃金格差解消で消費13兆円増 非正規にも賃上げドミノ 女性なくして成長なし 


を取り上げます。


今週の特集記事のテーマは

人手不足や物価高で、じり貧だった日本の賃金が上向いてきた。賃上げのうねりを起こすカギを握るのは女性だ。日本では男女間に歴然たる賃金格差が存在し、女性は“安い労働力”となってきた。だが、政府はその元凶とされる「年収の壁」の見直しに動く。柔軟な働き方で女性の昇進を促す企業も増えてきた。優秀な女性起業家を支援する輪も広がる。女性が日本を再成長に導く日も近い。

(『日経ビジネス』 2023.03.13 号 P. 010)
です。


PART 1 賃金格差解消で消費13兆円増 非正規にも賃上げドミノ 女性なくして成長なし


イオンなどの流通大手が相次ぎ、パート女性への大幅な賃上げを打ち出している。人手不足対策に加えて、彼女らの経験や知恵で厳しい競争に打ち勝つ狙いだ。世界有数の男女間の賃金格差を解消できれば、日本が再成長する原動力にもなる。

女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 012
 


長年言われ続けてきたことですが、OECD(経済協力開発機構)加盟国の中で、日本は男女の賃金格差が大きく、また取締役を含め役職者の比率が低いということが知られていました。

こうした課題に対し、国も企業もようやく重い腰を上げ、真摯に向き合い一歩ずつ前進する姿勢を見せ始めています。

今年2月、イオンが約40万人に上るパートの時給を平均7%引き上げる方針を明らかにし、流通業界に激震が走った。同社として過去最大の賃上げとなり、人件費は300億円ほど増加する見通し。年間に120万円程度を稼いでいたパートの年収は128万円に増える。この賃上げの恩恵を受ける約8割が女性だ。

女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 012
 


大幅な賃上げで話題になったのはユニクロやGUを運営するファーストリテイリング(ファーストリ)でした。

ファーストリは事業を世界展開しているため、海外で働く社員と国内で働く社員とで賃金格差が認められ、賃金格差の是正のため、平均で20%の賃上げを発表しました。海外社員が日本のユニクロで働くと賃金が安くなるという為替の問題がありました。

🔴イオンのケース

イオンが示した7%という賃上げ水準は、流通や外食、繊維などの労働組合が加盟するUAゼンセンが今年の春闘で示した6%を上回る。その背景を同社の渡邉廣之副社長はこう説明する。「パートの採用環境は厳しく、優秀な人は奪い合いになっている。競争力のある賃金体系を示せなければ生き残っていけない」

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2023.03.13 pp. 012-013
 


グループの人事戦略を統括する
イオンの渡邉廣之副社長。
働き方の見直しに取り組む
(写真=的野 弘路)
女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ
 2023.03.13


「優秀な人は奪い合いになっている」というのが現状です。

人手不足が問題視されてきたのは、少子高齢化が騒がれ始めてからです。深刻化が進んでいます。企業にとっては、パートタイマーやアルバイトなど非正規雇用者の雇用確保は死活問題になってきています。

具体的な数字で確認しましょう。

厚生労働省によると、新型コロナウイルス禍で低下していた全国のパート有効求人倍率は2021年5月の1.00倍を底に反転し、22年12月には1.48倍まで上昇した。人手不足を主因とした倒産が増加していた18年や19年の水準(それぞれ1.82倍と1.76倍、年平均)にじわりと近づいている。「実感としては、コロナ禍前よりも人材の確保は難しくなっている」と多くの関係者は口をそろえる。

女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 013
 


今年の春闘では、トヨタ自動車が賃上げと一時金についての労組の要求に満額回答するなど、賃上げのうねりが産業界全体に広がっている。だが、そうした動きに先駆けて昨年から大幅な賃上げに動いているのが、国内で大量の労働力を必要とする第3次産業だ。パートやアルバイトなど非正規雇用の比率が高く、その大半を女性が占める。

女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 013
 


大企業においては賃金を上げることはそれほど難しいことではないかもしれませんが、多くの中小零細企業においては困難が伴います。現在働いているパートやアルバイトの人たちの賃金を上げるだけでなく、新規で採用する人たちに対しても他社に見劣りするような賃金では来てもらえません。


非正規の女性で賃上げが相次ぐ

●パート・アルバイトの時給を引き上げた主な企業
出所:各社発表、公表資料などを基に作成。
しまむらの女性比率は厚生労働省
「女性の活躍推進企業データベース」
女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ
2023.03.13


🔴ライフコーポレーションのケース

同社(ライフコーポレーション 註:藤巻隆)を取り巻く環境は厳しい。取引先は相次ぎ納入価格の値上げを迫るが、価格転嫁は途上にある。高騰する光熱費については全く転嫁できていないという。電気代だけでも、そのコストは21年度の80億円から22年度は120億円に跳ね上がる見通し。苦しい状況の中でも賃上げを断行する背景には、少子化が進む将来への強い危機感がある。同社の岩崎高治社長は「少子化の影響は既に顕在化している。日本の胃袋も小さくなっていく」と指摘する。

女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 013
 

処方箋はあるか?

競合するスーパーと同じものを同じように売るだけでは消耗戦になるだけ。これを避けるには売り場の魅力を高め、消費者を引き付けなければならない。そのためには、「女性を中心とした優秀なパートナー(パート)の方々の力が必要となる」(岩崎社長)。

日本を代表する流通大手が相次ぎ賃上げに踏み切るのは人手不足対策だけが理由ではない。現場で女性たちが担ってきた仕事を評価し直し、これに正しく報いることで危機を乗り越えようとする狙いも透ける。

女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 013
 


ライフコーポレーションの岩崎高治社長。
賃上げを進め現場の競争力向上を図る
(写真=的野 弘路)
女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ
2023.03.13


店舗内のシステム化も重要です。パート社員の負荷を軽減し、働きやすい環境づくりは欠かせません。と同時に、高付加価値化も重要になってきます。

店舗ではセルフレジの導入など業務の効率化が進む。これに伴いパートに求められる仕事も変わりつつある。豊富な商品知識や丁寧な接客で売り場の付加価値を高めなければ、物価高騰で堅く閉じた消費者の財布をこじ開けることはできない。現場の主力として長年働いてきたパートの経験と知恵を生かさない手はない。

女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 014
 

こうした傾向はパート社員にとってどのような意味を持つのでしょうか?

パートの立場から見れば、待遇改善に向け、これまでにない追い風が吹いている局面と言える。イオンスタイル幕張新都心で農産品の売り場を担当する渡辺三佳さん(65)は「楽な仕事ではないけれど、時給が上がれば若い人もやりがいを持ってくれるかもしれない」と歓迎する。2人の子どもを育てながらパートとして家計も支えてきた、渡辺さんのような女性が日本には数多くいる。

女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 014
 


賃金格差は成長の伸びしろ?

総務省や厚労省の統計によれば、パートで働く女性は全国で約897万人(22年平均)。このパート女性の9割は35歳以上(同)で、7割超が配偶者、つまり夫を持つ妻となっている。
(中略)
景気が上昇する局面では人手不足を埋める存在として、後退局面では正社員に比べ低コストで活用でき、雇用調整もしやすい労働力として重宝され、一貫して増加した。
ただ待遇改善はなかなか進まなかった。
(中略)
主婦パートの待遇に関しては長く、家事や育児との両立をどう図るかが優先され、賃金の低さや雇用の不安定さなどの問題は後回しにされがちだった。
(中略)
国税庁の調査によれば、パートを中心に、非正社員として働く女性の賃金水準は男性正社員と比較すると3割程度に抑えられている。経済協力開発機構(OECD)の統計を見ても、日本の賃金格差は22.1%と主要7カ国で最大だ。

女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 pp. 014-015 


以下の図表をご覧ください。男女間賃金格差の現状を知ることができます。


男女の賃金格差は主要7カ国で最大

●主要国の男女間賃金格差 
出所:経済協力開発機構(OECD)
(写真= PIXTA)
女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ
2023.03.13


給与は男性正社員の7割以下の水準

●雇用形態別、性別の平均年収 
注:国税庁が抽出した企業(株式会社)に
1年を通じて勤務した役員以外の給与所得者
出所:国税庁「令和3年分民間給与実態統計調査」
(写真= PIXTA)
女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ
2023.03.13


女性の非正規労働者が増加してきた

●男女の雇用形態別の就業者数の推移 
注:2001年までは2月調査、
2002年以降は1~3月平均
出所:総務省「労働力調査」
(写真= PIXTA)
女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ
2023.03.13


女性役職者は増加傾向もまだ低位

●階級別役職者に占める女性の割合 
出所:2020年までは内閣府男女共同参画局
「男女共同参画白書 令和3年版」、
21年は厚生労働省
「令和3年賃金構造基本統計調査」
(写真= PIXTA)
女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ
2023.03.13


驚くべき試算があります。男女間の賃金格差を「完全に」解消できた暁には、日本の消費は13兆円以上も増加するというのです。俄かには信じがたいですが……。

男女間の賃金格差が完全に解消した場合、日本の消費は13兆円以上も増加する

内閣府経済社会総合研究所(ESRI)の林伴子次長によると、男女間の賃金格差が完全に解消した場合、日本の消費は13兆円以上も増加する。さらに女性の15歳以上の人口に占める労働力人口の比率(54%)が男性と同じ水準(同71%)まで高まった場合、国際通貨基金(IMF)の分析を機械的に当てはめると15~20%もGDPが増加する可能性があるという。

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2023.03.13 p. 015
 

問題は非正規に限らないことです。正規でも女性の場合、子育て中の場合には労働時間の短縮を余儀なくされることがあります。家庭内に被介護者がいる場合にも同様です。


🔴パソナのケース

人材大手パソナによれば、転職を機に収入がアップした子育て中の女性の比率は17~19年で全体の50%未満だったが、コロナ禍の20~22年では65%以上に上昇した。「転職市場で女性の積極採用を打ち出す企業は増えている」(坪野可奈部長)。女性をつなぎ留められない会社は、採用面でじり貧になるのは明らかだ。

女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 016
 


建設業界では

建設業界は深刻な人手不足に直面している。「多様な人材に活躍してもらわなければ立ち行かない」。こう語る同社の南達哉代表は女性トイレや更衣所を整備し、子育てと両立しやすいように、会社敷地内に企業主導型の保育園も誘致した。

女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 016
 


今までのケースを見てきますと、賃上げは当然のこととして、その他には労働環境の整備や、スキル向上のための施策が欠かせなくなってきていることが理解できます。

企業の本気度が問われています。

女性活躍に積極的な企業の利益率は高い

●「なでしこ銘柄」と東証1部(現東証プライム)
上場企業の平均売上高営業利益率
 注:「なでしこ銘柄」は経済産業省と
東京証券取引所が選定する
「女性活躍推進」に優れた上場企業
 出所:経済産業省、東京証券取引所
「令和3年度なでしこ銘柄」レポート
女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ
2023.03.13


コスト削減型経営は限界

世界では地政学リスクの高まりを背景に経済安全保障への意識が強まり、従来のグローバル化には急ブレーキがかかった。海外の安い労働力を当てにすることは難しくなりつつある。エネルギーコストも原材料費も跳ね上がり、「コスト削減に頼る経営には限界が見えてきた」(山田副理事長)。

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2023.03.13 p. 017
 

山田副理事長: 日本総合研究所の山田久副理事長


法令の改正

昨年7月には女性活躍推進法の省令が改正され、大企業は男女の賃金差を開示することが義務付けられた。同年10月には改正育児・介護休業法で男性の育休取得を推進する制度も施行された。そして政府はようやく、埋めがたい賃金格差を生み出した「元凶」ともいえる制度の見直しにも動き出した。

女たちの賃上げ 年収・昇進・起業の壁を壊せ 
2023.03.13 p. 017
 


企業内での改革が進む一方で、政府も制度見直しに動き出しました。日本の将来を見据えたルール改正や環境づくりに邁進してほしいと思います。


以下の図表をご覧ください。「男女間賃金格差の国際比較」があります。

男女間賃金格差(我が国の現状)男女共同参画局


「男女間賃金格差の国際比較」を見ると分かることは、下から3番目ですが、韓国は最下位で日本より10%くらい下であることに驚きました。

もう一つ言えることは、この図表においてですが、どこの国も男女間賃金格差が存在するという事実です。まったく平等という国はありません。


次回は

PART 2 女性の収入増を阻む昭和モデル 103万円の壁はいらない 性別役割分業と決別を

PART 3 コロナ禍が広げた雇用均等の地平 崩れる「出社=出世」女は実力主義で輝く


をご紹介します。


🔷編集後記

今回の特集は、賃金面での男女格差を是正するための企業の最前線と、法律や制度の改正が施行されている現状をご紹介しました。

改革には必ず痛みが伴います。その痛みを分かちあいながら前に進むことが大切で、決して歩みを止めてはいけません。
「この辺で終わりにしよう」といった中途半端な気持ちは現場に諦観を漂わせ、以前より状況を悪化させることになりかねません。

画竜点睛を欠くということにならないことを切に願っています。


🔴情報源はできるだけ多く持つ

海外情報を入手しようとすると、英語力が必須であったり、膨大な情報がクラウドサービスを利用すれば手に入りますが、それでも非公開情報はいくらでもあります。そうすると文献に当たることが必要になります。

日本の国立国会図書館のウェブサイトや米国の議会図書館のウェブサイトに当たってみるのも良いかもしれません。

もちろん、ロイターブルームバーグなどの報道機関の日本版(PCやアプリ)がありますから、これらを利活用すればある程度の情報を収集することは可能です。これらのLINEアプリもありますので、情報を収集することはできます。

あるいは『日経ビジネス』『東洋経済』『ダイヤモンド』『プレジデント』などの雑誌やウェブ版から情報収集することもできます。これらの雑誌やウェブ版の購読をお勧めします。

あとは自分で、関心のあることに絞って検索したり、ChatGPTBardに質問してみて、知見を広めるのが良いでしょう。

ロイター

ブルームバーグ

moomoo


(6,873文字)


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