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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉】 Vol.24

大人の流儀

 伊集院 静さんの『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。

 時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院さんはこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。

 帯に自筆で「ちゃんとした大人になりたければこの本を読みなさい」と記しています。

 ご存知のように、伊集院さんは小説家ですが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。



「愛する人との別れ~妻・夏目雅子と暮らした日々」から

伊集院 静の言葉 1 (70)

 
 結婚のきっかけはよく覚えていません。正直、私は彼女は世間がわかってきたら私の元を離れて行くだろうと思ってましたから。結婚の報道で、彼女から押しかけたと言ってましたが、そんなことはありません。それは二人の意志でそうしたんです。彼女が私の子供たちやらに気を遣ってそう発言したんです。チョゴリを着て花嫁になりたいというのも私の父親への気遣いです。そういう性格でした。彼女のそういう思いやりに私はずいぶん助けられました。

大人の流儀 1 伊集院 静                               




「愛する人との別れ~妻・夏目雅子と暮らした日々」から

伊集院 静の言葉 2 (71)

 
 そりゃ世間は私を恨んで当然でしょう。女優さんは皆のものですからね……。私を疎ましく思った人は多いでしょう。そんな中で演出家の久世光彦さんと映画監督の篠田正浩さんだけはいつも優しい声をかけて下さいました。有難かったですね。

大人の流儀 1 伊集院 静                               



「愛する人との別れ~妻・夏目雅子と暮らした日々」から

伊集院 静の言葉 3 (72)

 
 まだワインを飲む人が少なかった時代です。パリで二人で飲んだんです。いいものを飲ませてやりたかったのですが仕事を休んでいましたし、もう手持ちの金もありませんでした。中位のワインを買ってタクシーで帰る時、金がないというのは情けないもんだと初めて思いましたね。そのことは治療にも言えて、アメリカの病院に行けば病院は治るという情報があったんですね。少なくとも日本よりは治る可能性が高いと。一億くらいかかるんですね。その金が私には工面できなかったんです。まあアメリカに行っても治る可能性が高いというだけで確証があったわけではありません。ずいぶんと悩みました。自分の力不足が死に追いやる結果にならないかとね。だから彼女が亡くなった後、自分で決めたんです。もう二度と金で揺さぶられる生き方はしないとね。

大人の流儀 1 伊集院 静                               



出典元

『大人の流儀 1』
2011年3月18日第1刷発行
2011年7月14日第11刷発行
講談社



✒ 編集後記

『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。

伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。

伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます。

🔷 『大人の流儀 1』の最後の章愛する人との別れ~妻・夏目雅子と暮らした日々についてお伝えします。

しばらく続きます。

今回は、自分の体験と重なる部分があり、涙ぐみました。
自分の無力さを嫌というほど思い知らされたからです。
配偶者を亡くすということがこんなに哀しい出来事で、いつまでも心の中に残ることなのです。

この気持ちをいつまでも忘れてはいけないと思っています。


夏目雅子さん ガールズログから





🔶 伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。


<著者略歴 『大人の流儀』から>

1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。

91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。

作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。





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