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【回想録 由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い 第48回】

🔷 「入院」の中の「由美子のいなくなった夏『面会日誌』 十九日間の記録」(1)を掲載します。🔷

 『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』
(ハードカバー 四六版 モノクロ264ページ)
2016年1月25日 発行 
著者   藤巻 隆 
発行所  ブイツーソリューション

 ✍『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』(第48回)✍

「入院」の中の「由美子のいなくなった夏『面会日誌』 十九日間の記録」(1)を掲載します。

入院

由美子のいなくなった夏『面会日誌』 十九日間の記録(1)

 入院した当日から手帳に由美子の容態の変化をしるしてきました。いや、そんなきれいごとではなく、書き殴ったというほうが正しいでしょう。由美子が入院した、七月二十一日(火)から永眠した八月八日(土)までの十九日間の記録です。

 もちろん、由美子には、その内容を一切見せませんでしたし、話したこともありません。初公開ということになります。読み返してみると、由美子は泣き言を一切言わず、我慢強かったと思います。それだけに、いっそう哀しさと淋しさとつらさが甦ってきます。


公開した理由わけ

 できれば公開したくなかったのですが、公開に踏み切った理由わけは、どんなにつらい検査や治療を受けても弱音を吐かず、前向きな姿勢を崩さなかった由美子のことを、ずっと忘れないで欲しい、と強く思ったからです。いえ、それだけではありません。

 私が忘れないためです。それが本当の理由です。由美子の生き方に深く心を打たれたからです。私が由美子の立場であれば、うろたえ、つらい検査や治療に耐えきれなかったかもしれません。


左手人差し指をカッターで切る(私)

 つい最近、カッターで書類を裁断していた時、誤って左手人差し指の爪の付近を十二ミリくらい切ってしまいました。止血のため人差し指の第一関節あたりを、そばにあったビニール紐で固く結び、患部に流水を続けていましたが、なかなか血が止まらないため、ショックでクラクラし、今にも倒れそうになりました。十分ほどで出血が止まったので、傷口に救急絆創膏を二重に貼りました。その時、思い出しました。


包丁で指を切る(由美子)

 以前、由美子は調理中に包丁で指を切ってしまい、かなりの出血をしたことがありました。ところが、本人はいたって冷静で、自分で包帯を巻いて治したのです。その時の対応に舌を巻きました。「凄いな!」と。

 

入院 一日目(七月二十一日 火曜日)

 自立神経失調症でも更年期障害でもなかった。入院保証金五万円を用意すること。

 面会時間は午前十一時から午後八時まで。不安を隠しきれない表情が窺われる。二十二日からメールを由美子に送ることを伝える。

 

入院 二日目(七月二十二日 水曜日)

 午前九時過ぎにメール。メールは毎日すること! 三井住友から三万円払い出しすること(近日中)。由美子が病室で使う備品を持っていく。オリーブヴァージンオイル、ドライヤー、延長コード、ラジオ、指輪。

 由美子の身体にはドレーンチューブがつながれていた。左肺の下半分まで腹水がたまっているため、先に抜くことになった。ドレーンの容量は二一〇〇CCである。

 まだ六五〇CCほどしか抜けていない。何とも痛々しい姿だ。代われるものなら代わってあげたいなどと、出来もしないことを考える。それでも、本人はさほど意に介していなさそうに見える。見上げたものだ。

 ドレーンの中の液体はオレンジ色をしている。内容物は赤血球、タンパク質、リンパ球、がん細胞などだろう。

(PP.109-111)



➳ 編集後記

第48回は「入院」の中の「由美子のいなくなった夏『面会日誌』 十九日間の記録」(1)を書きました。

「面会日誌」を公開することに躊躇しました。由美子が入院し、息を引き取るまでを一切の脚色をせず、由美子の容態の変化を淡々と書き綴るのは息が詰まるほどつらいことだったからです。



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