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【マキアヴェッリ語録】 第2回

マキアヴェッリ語録


🔷 「突然に地位なりなんなりを受け継ぐことになってしまった者にとって、心すべき最大のことは、なによりもまず最初に、しかもただちに、土台をかためることである」


🔷 塩野七生さんのご著書『マキアヴェッリ語録』から私の心に残った言葉をご紹介します。

 前回は「やった後で後悔するほうが、やらないことで後悔するよりもずっとましだ」でした。

 この言葉については最後にリンクを貼っておきますので、ご覧ください。


◎ 私の心に残った言葉 ◎

「突然に地位なりなんなりを受け継ぐことになってしまった者にとって、心すべき最大のことは、なによりもまず最初に、しかもただちに、土台をかためることである」(P.82)

この言葉の続きは次のように書かれています。

「他の者がずっと以前から用意してきたことと同じことを、就任と同時に、時をおかずに実行する心構えが不可欠だ。

なぜなら、はじめに基礎づくりをしておかないと、後になってそれをしようにも、大変な力量が要求されることになるからである。また、後でやる場合には、建物自体を危険に陥らせることにもなりかねないという、マイナスまで頭にいれておかねばならない」(P.82 『君主論』)


 少し長い引用になりました。重要な部分でしたので省略できませんでした。

 もう既におわかりだと思いますが、今回取り上げた言葉をそっくり岸田文雄総理大臣にお伝えしたいくらいです。

 マキアヴェッリは「「イタリア、ルネサンス期の政治思想家、フィレンツェ共和国の外交官」(Wikipediaから)でしたので、外交官としての実体験を通じ、実感したことから導き出された言葉だと、私は思っています。

 岸田文雄氏は、菅義偉(すが・よしひで)前首相の突然の辞任を受け、自民党総裁選に出馬し、決選投票の末、河野太郎氏を破り総裁に選出されました。

 その後、内閣総理大臣に就任したことは言うまでもありません。

  問題なのは、「岸田文雄首相が自民党総裁選で掲げた『令和版所得倍増』などの独自政策が、所信表明演説や党の衆院選公約から相次いで消えた」(「朝日新聞デジタル 2021年10月14日 8時00分」)ことであり、代わりに金融所得課税増税の話が持ち上がっては消え、また復活するなど迷走としか言えないことをしていることです。

  問題は、マキアヴェッリが指摘している「心すべき最大のことは、なによりもまず最初に、しかもただちに、土台をかためること」が出来ているとは言い難いことです。

 「分配から成長」と最初に発言し、次に「成長から分配」へと転換したことも土台がグラグラしていると指摘されても仕方がないでしょう。熟慮の末に結論に至ったのでしょうか?

 だからこそ、「突然に地位なりなんなりを受け継ぐことになってしまった者にとって、心すべき最大のことは、なによりもまず最初に、しかもただちに、土台をかためることである」という言葉が重要な意味を持ってくると思うのです。

 500年経ってもこの点は不変なのですね。

 松尾芭蕉は「不易流行」と言いました。意味は「平たくいうと、変わらぬものと、変化してゆくものとがあるということです。変化してゆく中にも変わらないものがあるということです」(「臨済宗 円覚寺派 総本山 円覚寺」から)。

 岸田首相は「新資本主義」という言葉を全面に出して、日本を変革しようとしているつもりですが、土台がグラグラしていては建物が倒壊してしまいます。そのことに早く気づいてもらいたいものですね。


🔷 著者紹介

塩野七生(しおのななみ)<著者紹介から Wikipediaで追加>日本の歴史作家、小説家である。名前の「七生」は、ペンネームではなく本名。東京都立日比谷高等学校学習院大学文学部哲学科卒業。日比谷高時代は庄司薫古井由吉らが同級生で、後輩に利根川進がいて親しかった。

1970年には『チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷』で毎日出版文化賞を受賞。同年から再びイタリアへ移り住む。『ローマ人の物語』にとりくむ。2006年に『第15巻 ローマ世界の終焉』にて完結した(文庫版も2011年9月に刊行完結)。『ローマ人の物語Ⅰ』により新潮学芸賞受賞。99年、司馬遼太郎賞。2002年、イタリア政府より国家功労勲章を授与される。2007年、文化功労者に選ばれる。

 高校の大先輩でした。


「マキアヴェッリ」と『マキアヴェッリ語録』については、
【マキアヴェッリ語録 その1】>をご覧ください。



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