見出し画像

バーナデット ママは行方不明(2019年)

リチャード・リンクレイター監督の「バーナデット ママは行方不明」を観た。

シアトルに暮らす主婦のバーナデット。夫のエルジーは一流IT企業に勤め、娘のビーとは親友のような関係で、幸せな毎日を送っているように"見える"。だが、バーナデットは極度の人間嫌いで、隣人やママ友たちとうまく付き合えないばかりか、見知らぬ人と同じ空間にいるのも苦痛なのだ。

なのに、娘は中学をトップの成績で卒業したお祝いに南極旅行に行きたいと言う。本当は他人に囲まれる旅行になんて行きたくないが、最愛の娘の願いを叶えたい一心でバーナデットは旅行の準備をバーチャル秘書(買い物もスケジュール管理も対応してくれるオンラインサービス)に命じるのだった。

そんなバーナデットが大嫌いなのが、隣に住む"仕切り屋"オードリー。何かと対立する(と言っても、バーナテッドは人嫌いなので、何かと仕切りたがるオードリーを無視するというのが実態だが)2人に、ある日派手なアクシデントが起きる。

周囲とうまくやれないバーナテッドを夫は精神的な病気と決めつけ病院に行かせようとするし、さまざまなトラブルは起きるし、追い詰められたバーナデットは忽然と姿を消す。

そんな彼女が向かった先は… といったところから始まる"本当の自分と向き合い、自分にとって正しい生き方を再発見する"お話。

20年前に若き建築家として名を馳せた女性が仕事を辞めて家庭に入って、もがきながら生きているという主人公“バーナデット”を自ら演じたいと熱望したのは、ケイト・ブランシェット。

人間嫌いで偏屈で癖が強いキャラクターを、非常に繊細で可愛らしさまで感じる絶妙なバランスの演技で魅せる。同じ芸術家肌の突き詰めたキャラクターでも「TAR/ター」と全く違うアプローチなのが凄い。

娘のビー役は本作が映画デビューのエマ・ネルソン。母を信じる健気な娘を新人とは思えない演技で本作を支える。

「誰かを完全に知ることはできなくても、知ろうとすることはできる」という原作のメッセージを映像で描いたという監督の言葉通り、非常に複雑で難しいけど、それ以上の魅力を持つバーナデットという人物の姿が明るくクリアな映像の中から伝わって、とても清々しく元気をもらえる作品。

そして、何と言っても南極の風景が美しい!!!(と言っても、ロケ地はグリーンランドなのだそうだが。)こんな風景のど真ん中に行きたい!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?