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コロニアの子供たち(2021)

マティアス・ロジャス・バレンシア監督「コロニアの子供たち」を観た。

1960年代初頭、元ナチス党員がチリに設立した「コロニア・ディグニダ」は、労働・秩序・清廉さといった“規範”を基にした、一見美しい共同体であったが、その実態は独裁者パウル・シェーファーによる管理・支配のもと、洗脳や密輸、拷問、殺人、児童虐待などが行われていた。…という、本当にあった怖い事実をベースにした物語。

生活が厳しい母子家庭で育った12歳の少年・パブロは奨学生に選ばれ、コロニア・ディグニダに移り住んで、勉強や得意の歌を学べる環境に恵まれた。

しかし、ルームメイトは「余計なことは喋っちゃいけない。神様が聞いてるから」と口をききたがらず、パウル様のところで好きなだけテレビが見られるのに嬉しそうじゃない。パブロから見れば羨ましい限りなのだが…

やがて、パウル様の“お気に入り”に選ばれたパブロは、この施設の隠された正体の一端に触れる。

何でもお見通しなのは神様の力ではなく、施設のあちこちに仕掛けられた監視カメラのせいであり、彼らはパウルによって厳格に管理・支配されていた。

また、コロニーで生まれ育った人たちは外の世界のことを何も知らず、世の中の常識から切り離されて、神様の教えに従って正しく生きているつもりで、実はパウルの都合のいい世界で思い通りに生かされているのだ。

そのあたりをわかりやすく観客に伝えるのが、ギゼラとヨハネスの男女関係の様子。自分たちの成長の中で起きていることを何とか理解しようと試してみては、(監視カメラに捉えられ)皆の前で辱めを受ける日々…

特段凄いことが起きる物語展開でもなく、「コロニア・ディグニダ」で起きていたことを少年の目で捉えるだけのやや地味な映画だが、そこで実際に起きていた事実の一端を世の中に見せることを目的とした映画なのだろう。

「コロニア・ディグニダ」で起きていた出来事はどこでだって起きえる。もちろん、我々の身近にも。

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