Pearl パール(2022)
タイ・ウェスト監督「Pearl パール」を観た。1979年を舞台にした前作「X エックス」から、約60年遡った1918年。例の"恐ろしい老婆"の若かりし時を描く。
両親と農場で暮らす若い女性パール。彼女はスクリーンの中で踊る華やかなスターに憧れ、いずれこの田舎から脱出し、スターになることを夢見ている。
しかし、彼女を連れ出してくれると思って結婚した夫はリッチな実家を出て農場に婿入り(?)したあげくに戦争に出征。結局、パールは病気で車椅子に座ったまま動けない父親と、敬虔で厳しい母親との3人暮らしから逃げ出せないままだ。
自分にはスターの素質があると信じて疑わないパールにとって、父親の世話と家畜たちの餌やりを繰り返す日々は無価値で、鬱々とストレスを溜めるだけ。
そんなある日、村の教会でショーのオーディションが開催されることを知ったパール。このオーディションにさえ出れば自分のスターとしての人生が拓けると思ったパールは参加を望むが、母親に反対され…
前作に続いてパールを熱演するミア・ゴスが凄い。夢見る無垢な少女のようで、ときに頭のネジが外れたようで、情緒不安定で、狂気を孕んだ笑顔を満開に見せる。「こいつ、やべぇ…」って誰もが怯むキャラクターを見事に体現している。(映画後半にある長尺の独白も、ラストも迫力満点!)
また、全編を色調が強いテクニカラーの色彩で、当時のミュージカル的な画と音楽でゴージャスな映像に仕上げているのも見ものだ。(「オズの魔法使い」を、かなりそのままなぞっているのも…)
今回も、一応ホラー映画とはいえ、そんなにビックリさせる作りにはなっていない。とゆーか、中盤まではホラー映画であることを、まるで感じさせない。確かに人は殺されるが、あまりホラーっぽいとは言えないような…
スターに憧れ、自分には凄い才能があるのに親や環境のせいで片田舎に閉じ込められ人生のチャンスを失っていると逆恨みしている、実はたいした才能もない誇大妄想でアタマのネジが外れた主人公の暴走を描く本作は、冷静に考えると、たいした話ではない。しかも、そのへんにリアルにありそう。
ただ、凝りに凝った映画のスタイルと、ミア・ゴスの異様なまでの頑張りで、なんか、よくわからないけど凄い作品に仕上がっている… ような気になる、嫌いになれない一作。
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