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別れる決心(2022)

パク・チャヌク監督の「別れる決心」を観た。

とある男性が山頂から転落死する。大筋で事故だと見立てられる中、ヘジュン刑事だけは、これは事故ではなく殺人の可能性があると考え、被害者の妻ソレを取り調べる。

が、取り調べを進めるうちに、いつしかヘジュンはソレに惹かれ、ソレもまたヘジュンに惹かれていく。やがてソレのアリバイが確定し、事件は解決したかに思えたが、ヘジュンはあることに気づく…

と書いていくと、事件もの、推理もの作品だと思えてくるし、確かにその一面もあるのだが、本作は"殺人事件"にまつわる"刑事と容疑者"という相容れない立場に2人を置くことで、どうしようもなく難しい関係性の男女が、どうしようもなく惹かれ合ってしまうという難しい恋愛を描いて見せる。(ヒッチコック監督の「めまい」に近いテイスト)

ただ、これをまたストレートに「愛してる!」と抱き合わせたりせず、お互いの胸の中にあるもの、発する言葉、あえて伝えない気持ちなどを絶妙にない混ぜにして、技巧に満ちた映像表現で提示してくるものだから、ヒントはあれどそこに正解はなく、全ては観客の読み取り方に委ねられるのだ。

でも、人の心って(恋愛って)、とどのつまり、そういうミステリアスなものだから、こういった形での表現のされ方も、ありだなと思った。

離れたところから部屋の中を覗き込んでいる男が、自分の見ている部屋の中に(気持ちの中で)入り込んでしまうような凝った映像表現も多数。こりに凝った映像と、どこまで考えても解けない謎が、深い余韻を残す、謎の魅力に溢れる一作です。

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