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メグレと若い女の死(2022)

パトリス・ルコント監督8年ぶりの長編映画「メグレと若い女の死」を観ました。

1953年。パリ・モンマルトルのバンティミーユ広場で、シルクのイブニングドレスを着た若い女性の遺体が発見された。片足には靴がない。不釣り合いなほど高級なドレス。真っ赤な血で染まったドレスには、5カ所の執拗な刺し傷…。遺体の周囲に被害者を特定できるものはない。

捜査に乗り出したメグレ警視は、被害者の素性と生涯を探りながら事件の背景に迫っていく。

パイプとお酒が大好きな不健康そうな巨漢のメグレ警視の診察の様子と並行して、頼りなさげな若い女性が恐る恐る豪華なイブニングドレスに着替える様子を描くオープニングから、一気に事件は幕を開ける。この導入、なかなか素晴らしい。

ほとんど手がかりがない中、地道に捜査を続けるメグレ警視。単に事件の謎を解くというより、被害者や取り巻く人々それぞれの人生の謎を少しずつ解いていくような、人間に寄り添うスタンスが印象に残る。

やがて見えてくるのは、パリに憧れて田舎から出てきても、何もうまくいかず、都会の食い物にされてしまう若い女性たちの失望と孤独。

この事件とは直接関係がなく、街中で盗みを働こうとしたところをメグレ警視に止められ、助けられるもう1人の若い女性とメグレの不思議な交流が、実はこの物語の重要な縦糸になるところが、危ういけど、うまい。

終始、曇天の暗い風景の中で展開する映像はやや地味ながら、メグレ警視と女性が2人でパリの街を歩く場面には監督らしい美しさも見えたりして、これだけの内容を89分にコンパクトにまとめた無駄の無さも見事です。(でも、やはり全体的に地味かなぁ…)

名優ジェラール・ドパルデューがメグレ警視を好演。

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