見出し画像

ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇(2018)

パリを代表する天才ファッションデザイナー、ジャンポール・ゴルチエが自ら企画・脚本・演出を手掛け、2018年パリ初演の後ロンドン公演を経て、2023年には東京・大阪で上演するなど全世界35万人の観客を集めた「ファッション・フリーク・ショー」。

ジャンポール・ゴルチエ自身の半生の物語をベースに、あらゆる多様性を飲み込んでいく彼独自のセンスに溢れたファッショナブルなクリエイティブを、彼の理解者でもある仲間たちが共に「ファッション・フリーク・ショー」というショーに仕上げていく過程を、ヤン・レノレ監督によるドキュメンタリー映画として撮ったものが「ジャンポール・ゴルチエのファッション狂騒劇」だ。

創造の喧騒に満ちたショーの舞台裏は目まぐるしく、沸き続けるアイデアはとどまることを知らず、そんなゴルチエのイメージを現実にステージで再現しようとすれば様々なアクシデントが起きる。それでも、そこに参加しているメンバーが何とかして問題をクリアし、夢を実現しようと悪戦苦闘する姿には胸を打たれる。

と同時に、自分の想いのたけを思わず口にしてしまうものの、すぐに謝罪してチームから出されたアイデアを尊重するゴルチエの姿勢は彼がチームワークを大切に仕事をしてきたのであろうこと、だからこそ、これだけの才能ある人々が彼の周りに集っていることに納得してしまう。

デザイナーを志すこととなった幼少期の学校での出来事、異端児としての苦悩や迷い、個性的なデザインが生まれた背景、ビジネスパートナーでもあった最愛の人との出会いから死まで、「ファッション・フリーク・ショー」が出来ていく過程を見せながら、その中でゴルチエが自らの人生を語る構成は無理なく素晴らしい。

「“違う”ことは、美しい」と言うゴルチエの思想は、多様性を語られる現在において、なお光り輝く。僕自身もそうなのだが、これまでジャンポール・ゴルチエという人物や彼のファッションに触れてこなかった人にも薦めたいドキュメンタリーです。

めっちゃちっちゃい話になっちゃうけど、実は僕も小学生のときにクラスで漫画を描いたのがきっかけでクラス全体に馴染めたという経験があるので、ゴルチエの子供の頃のエピソードにはいたく共感しました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?