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ペーパームーン(1973)

"たとえ、それがボール紙の海に浮かぶ紙でできた月であっても、あなたが信じれば、それは本当の月"

ピーター・ボクダノヴィッチ監督の1973年作品「ペーパームーン」は、僕のお気に入り映画のひとつだ。最初に観たのは大学生の頃だったと思う。

初めてアメリカに旅行したときに、当時の日本では手に入らなかったビデオを探まわって、2本買ってきた内の1本は「ペーパームーン」だった。(もうひとつは、「時計じかけのオレンジ」!) それほどのお気に入りだ。

交通事故で母を亡くした9歳の少女・アディが母の埋葬を見守っているところに、突然やってきたおじさんはモーゼという人物で、どうやら母のたくさんいた"彼氏"のひとりらしい。

アディの身寄りはミズーリ州に住む叔母だけだということで、参列者たちはモーゼに彼女をミズーリまで送り届けるよう頼む。しぶしぶ引き受けたモーゼは、転んでもただでは起きないぞとばかりに、アディの母親の交通事故の示談金として200ドルをせしめる。モーゼは詐欺師なのだ。

モーゼはそのお金で自分の車を買い替え、ミズーリ行きの汽車の切符をアディに渡して追い払おうとしたが、アディは「示談金は私のお金だから全額返せ」とモーゼに迫る。お金を使ってしまったモーゼは、やむなく車にアディを乗せ、詐欺で稼ぎながら2人旅をすることに…

詐欺師にとって、幼い娘を連れていることは同情を引いて思いのほかメリットがあり、さらにはアディが賢く機転を効かせた行動をとることで、ますます商売は上手くいく。

意外に良いコンビとなったこの擬似親子。アディはモーゼが自分の本当の父親ではないかと疑うが、モーゼは完全否定。しかし、この2人の関係は、冒頭に書いた"ペーパームーン=紙の月"のように徐々に変化していくのだ。

モーゼ役はライアン・オニールで、アディは実の娘であるテイタム・オニールが演じた。このテイタム・オニールの演技が実に実に見事で、この映画は完全に彼女が引っ張っている。本作で、最年少(10歳)でアカデミー賞の助演女優賞を獲るのも納得。テイタム・オニールのアディの姿を見るだけでも、十分この映画に触れる価値がある傑作です。

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