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トラウマ/鮮血の叫び(1993)

ダリオ・アルジェント監督の1993年作品「トラウマ/鮮血の叫び」を今年発売されたホラー・マニアックス版Blu-rayで見た。2009年に発売されたDVDで見て以来久しぶりに。さすがに今回のBlu-rayは映像がナチュラルに綺麗で、心地良く見れました。

最新作「ダークグラス」まで全作品を追いかけているダリオ・アルジェント監督ですが、本作はアメリカで撮影され、アメリカの俳優も出演し、執拗な残酷描写がなくなって、これまでの監督作品とは少し違ったテイストに仕上がっている。

ライナーノーツや監督インタビューを読むと、前作「オペラ座/血の喝采」が暴力描写で酷評されたこと、テレビ局の出資を受けて映画を作る際に残酷描写が好まれないこと、本作がラブ・ストーリーであることが、表現をソフトにした理由らしい。(そのために、特殊効果担当のトム・サヴィーニが用意したいくつかの残酷描写アイテムが使われずに終わったというのは残念!)

一般的な考えとして執拗な残酷描写があればいいというわけではないが、監督作品の見せ場としての「そこまでやるの!?」的な描写がなくなり、これまた独特のライティングやゴブリン的な音楽もなくなって、"ダリオ・アルジェント"の要素が薄まったことは否めない。

交霊会から始まり、視覚トリックがあり、凶器としてエレベーターが登場し、ラストの犯人の行く末に至るまで、1975年に発表された傑作「サスペリアPART2」にかなり似た展開になっているのが、「あの大傑作の再来!」ではなく「あの大傑作の劣化版…」という印象を与えるのも残念なところだ。

フランスにおいて悪を裁いたギロチン、時には死に至る拒食症、過去の出来事、オカルト、歪んだ家庭、恋愛… いろんな要素を詰め込んだ物語のバランスはまるで良くないけど、もともと物語の一貫性で見せる監督じゃないので、まぁ、そこは良しとしよう。

そんなわけで、前回見たときはかなりガッカリした記憶だったんだけど、今回改めて見て、そこまで悪くもないか…と考え直した次第。これまでは「オペラ座/血の喝采」以前の作品しか見直してなかったけど、今後は本作もリピート対象に加えようと思った。

登場人物や物語、キャストの活躍っぷりについては、何を書いてもネタバレになりそうなので、省略させていただきます。

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