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今日のラクガキと日記 / 20-07-03版 / 貧乏長屋に沿って存在するとても長い地下街を彷徨った話

夜。夕方でも真夜中でもない。

ただ、夜。

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貧乏長屋が延々と続く道にやってきた。知ってる場所だけど、初めて来た。その貧乏長屋はまっすぐで、ものすごく長く続いているのだが、どこがどう繋がっているのかわからない複雑な構造をしていた。何年も何年もかけてそうなった。

それぞれの家が賑やかでカラフルだ。カラフルなのはいい。楽しい。夜だけど人がたくさんいる。みんな貧乏だけどカラフルだ。

この長い貧乏長屋は住んでいる人が貧乏すぎて、「自分は他の人よりお金を稼いでいる」と威張る若いサラリーマンや、「自分の意見は他の人よりも正しい」と威張る年老いたサラリーマンが近寄らないので治安がいいそうだ。サラリーマンがいないと誰も怒らないので治安がいい。とても良くわかる。

最初に「知っている場所」と言ったのはこの地下街には何度も来ているからだ。上にいるのが初めてなのだ。地下街は貧乏長屋に沿った溝のように存在している。最初はドブ川かなと思ったが、その溝は光っていた。地下街の天井がドブ川みたいにキラキラ光っているのだ。

今いる場所は長い地下街の末端で、その末端の階段を降りて何度も来たことのある地下街へ入っていくのはちょっと楽しかった。ここからずっと長い川みたいに続いていく地下街の末端なのだ。末端はいい。落ち着く。

地下街は賑やかだ。たくさんの小さなお店が隣り合っていて大勢の人が歩いている。このあたりは飲食店が続いている。大勢の人が立って飲んだり座って飲んだり家で飲むために何かを買っていたりする。知っている場所なのに知らないお店ばかりだ。お腹が空いていて知っているお店で何か食べたいな、と思った。でもそれがどこにあるのかがわからない。地下街には案内板というものは無いのだ。

「そばや」に入った。店内は真っ赤に染められているので中華料理の店のようだが、ここは「そばや」だ。「そば」はいい。健康的だ。店内はとても混んでいるので店先のカウンターに座った。

白衣の店員が「そば」を持ってきた。ミートソースがかかっている「そば」はご飯のように細切れになっていた。とても健康的だ。

目の前には座った時から大きな皿に盛られた料理が置いてあった。茹で蛸とか焼いた鱈の分厚い切り身とか魚介類のフライが盛られていた。鱈はいい。美味しい。みんな鱈を侮ってはいけない。上にクレソンがどっさり乗せられているのが意外だったが美味しそうだった。

「そば」を持ってきた店員に「これは食べた後でお金を払えばいいのですか?」と聞いたら笑顔で「もちろんそうです」と言うので遠慮なく食べた。とても美味しかった。「そば」だけだと600円ぐらいだが、この大きな皿の料理を含めても1000円ぐらいで済んだ。いい店で良かった。

お勘定をした後、自分はあの全部の料理を食べたんだろうか、残してしまったんだろうか、と不安になった。お腹がいっぱいなのだがあまりお腹がいっぱいな感じはしなかった。

これはまるで夢みたいだな、と思った。

という夢を見た。


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