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[ライナーノーツ] Neo Life Standard ("New Life Standard" Remix) / xmiiru みーる

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この度、2020/11/15、お陰様で、xmiiru みーるの"New Life Standard"のリミックス盤である"Neo Life Standard"がリリースの運びとなりました。 https://snowdome.kawaiishop.jp/items/36142497

オリジナル盤リリースの際には、たくさんの方々にライナーノーツを御寄稿いただいたので、今回は私から本作を御紹介させていただきたいと思います。

本作、リミキサー4人のうち3人(フジワラ様以外)は、2017年に青森県立美術館で開催させていただいた「青森earthアウトリーチ"立ち上がる風景"関連企画『見えざる風景の振動を読み解く』」というイベントへ御出演いただいたアーティストの方々でした。こちらのイベントでは、環境音を読み解くための手段としてアンビエント音楽を提示したというもので、正に「こういう音楽」を展開するにふさわしい、東日本における重要人物の皆様に御参加いただけたと自負しております。

実は今回、どなたにどの曲をお願いしたいということは、基本的には決めていませんでした。しかしながら、最終的にチョイスされた楽曲がそれぞれ異なることは、自分自身でも大変興味深かったです。最後に残った(?)、"suihei"をフジワラ様にお願いすることとしました。この時点でまだ全体を聴いた訳ではなかったのですが、曲順は「オリジナルとは逆」というコトを決めていました。結果的に、これらの選択は正解だったと思います。

作品名や個々のプロフィール等は、各リミキサー様にお願いしていたので、そちらを引用しながら、曲順に御紹介して参りたいと思います。

[kagerou (beyond the colors mix) Ko “akko” ASHIDA (Tokyo)] 幼少よりヴァイオリン・ギターなど各種弦楽器に親しみ、米国内での演奏活動を経て帰国。現在は広告制作の傍ら自らの音楽表現を模索。ミニマル・アンビエント・ドローン・民族音楽・フィールドレコーディング、また通常のバンド形態での即興演奏など、ジャンルを横断した演奏形態は多岐にわたる。"sizk"名義でBoom Boom Satellites Remix Festival 2013にて優秀賞受賞。ほか"rudimental echo"等変名での活動など。

⇒今回の4人の中で一番お付き合いの長い方が、こちらのakkoさんです。「ドローン」というと、減衰の無いパッド的な音色がイメージされがちですが、この方が表現するドローンはそうした概念に縛られません。今回も図太いアナログシンセ的なシーケンスでそうした音世界を表現してくださりました。オリジナルは、あのEPの中では最もポピュラー音楽に接近していたモノだったので、それが見事に「料理」されているトコロは、非常に興味深いと思います。和声の進行の問題以上に、譜割のちょっとした手の入れ方が大きなファクターになっていて、自分のように、アイドルソングのようなポピュラリティの権化のような世界と、アンビエント・ノイズのようなそれとは最も真逆の世界を行き来しているような人間にとって、その境界線を、微妙な箇所を絶妙に示していただけたことは、オリジナル"New Life Standard"にも重要な意味を与えたところだと思います。

[316 (Poety reading meditation drone remix) chitosh (Hokkaido)] サウンドデザイナー兼DJ。“ambient”をキーワードにフィールドレコーディング等で撮り貯めた膨大な環境音アーカイブを即興的に加工処理し音響彫刻を創りあげる。洞爺湖芸術館 秋特別展 小宮伸二展 トランスケープ (2019)やINTERSECT2015 札幌地下歩道空間 north2 (2015)、ヨーク・クリスト追悼作品展 (2014)等、北海道内各地の美術館等でのインスタレーションやアートフェスに参加。

⇒今回のリミキサー陣の中で、最も繊細な音を奏でるアーティストがchitoshさんだと思います。この曲は、オリジナルのシーケンス自体が、元々複雑にダブ処理されていて、一番、リミックスが困難だったであろうと推察します。元来、chitoshさんが扱われる音の粒はとても繊細で、この曲のソースはいずれも「太い」モノだったので、最初は全く想像がつかなかったのですが、繊細な音像がしっかりと積み上げられていて、独自の世界観をしっかり構築していただけました。若い女性のポエトリーリーディングは、転ぶ方向を間違うと稚拙になりがちですが、絶妙なバランスで二足歩行させていただくことができました。「別なパターンも作っていたが、このパターンに落ち着いた」というお話を伺っています。いつか機会があれば、そちらもお聞きしたいモノです。

[luminance (dimly mix) fug (Aomori)] 1982年 青森県平賀町生まれ。Art into Life、meditations、STORE15NOV等のレコードショップに出会い、アンビエントやドローン、ニューエイジ等に影響を受ける。YAMAHA QY70のトラックに、サンプリングした自然音をふり掛けて造るアトモスフィア。

⇒青森ではこうした音楽の分野においてエース級バンドを率いる彼の"fug"名義による作品です。オリジナル盤では最もポピュラー音楽から距離を置いていたこの曲が、fug氏の解釈を通じて、それとは真逆に「歩み寄って来る様」は、リミックスの面白さの一つを体現していただけていると思います。こうした音楽が、コンピュータや複雑なプログラムで創作されることが当たり前になった時代にあって、氏が紡ぐQY70の音色は、四半世紀前のハードウェアならではの温かみと「融通の利かなさ」が滲み出すことに繋がっており、そうした音色がコントロールされる様は、作者のパーソナリティの一部を作品に投影するとともに、作品そのものの個性になっていると思います。本作の曲順を「逆打ち」にする際に、この作品のこの個性が大きな役割を果たしました。

[suihei (neoparty.ft REMiX) neoparty.ft (Akita)] neoparty.ft =フジワラトキムネ/i am not artist / i wanna love you

⇒恐らく、1~3曲目までは、こうした音楽を聴いてきた方々にとっては「こうなるのだろう」という、ある種の想定の範囲を逸脱するモノではなかったかと思います。オリジナル盤は、曲順が進むにつれ、深淵な概念の中である種の外連味(「ポピュラリティ」と表現してしまうと誤解を産みそうなので)を獲得していくのに対して、今作、リミックス盤では、そうしたモノの喪失から全てが始まり、崩れた家屋の残骸を使って「リノベーション」をしていく過程の果てで、ある種の外連味を獲得してしまうという二律背反的な概念を提示するに当たって、この曲が重要な役割を果たしていると思います。「そうではないモノ」という選択肢も、ディレクションの中にはあったのかもしれませんが、「アイドルのアンビエント・ノイズ作品」の破壊と再構築を提示するという意味で、重要であったと思います。

以上、拙いテキストですが、本作を聴く上での一助となることを期待しております。

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