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往復書簡 2022/08/30 イマヘイ→ケケ谷

暑い!
とにかく暑くて、眠れずに疲労が抜けません。
今年の夏こそは帰省すると計画していたけど、あーなっちまったんで苦渋の決断で中止にしました。
去年も帰省計画を立てていたのですが、いざ行かん、とすれば規制2日前に新幹線の脱線事故。
これで3年墓参りできていません。

野内漁港24時間耐久釣りレースも頓挫したままです。


慣れた場所を離れるって結構ストレスだよね。
どういう人間が待ってるか、どんな街か、とか
安寧を求めたいけども、何かしら我慢せねばならんこととか あったりね。

こちらはお盆のさなか、松本清張先生の墓参りに行ってきました。
いつか行こう、いつか行こう、って思ってたのが今日になってしまった。
何を伝えるでもなく、何かを感じたいとか、そんなことでなく、 ただ普通に先生に会いたいなあ、そんな感じでした。
朝起きた時から久々にロックスターに会うような高揚感に包まれて緊張してました。
西武線を乗り継いで八王子駅に着くころには猛暑。
先生が眠る富士見台霊園には駅からはタクシーがおすすめです、とネットに書き込みされていたが、先生に会うのに楽をしてはいかんだろ、と妙にストイックな気持ちになり徒歩で現地に向かいました。
事前に霊園事務所のスタッフに場所を教えてもらったのですが、現地に着くと立派なお墓ばかりで、しばし迷いましたが見つけました。

先生はただ黙ってそこにおられました。

「先生、はじめまして」と帽子を脱ぎ一礼。

畏怖の念に打たれて、数分間の沈黙の後に線香を置かせていただいた。

小高い丘の一番上に位置する先生の居場所からは八王子の風景と富士山も見える。

「先生、いつもこの景色みてるんですね」
「先生、また来ますね」

本当にもう一度、ここへ来たいと思いました。
物書きのレベルをもっと上げないと、次会うときに先生に申し訳ない、と思いながら。
家族をどこにも連れていくことはできなかったけれども、自分的には有意義なお盆でした。


さて、ピアノなんですが、やってません(笑)

やらないと忘れるね。当たり前だよね。

自分は1曲もマスターしていないのに、気が多いもので
すぐに次これやってみたいって思っちゃう性質で。

加古 隆「パリは燃えているか」挫折。
久石 譲「6番目の駅」 挫折。
エリックサティ「ジムノペディ 第1番」次はこれです(笑)
あと、基本の「き」も無いくせに「How To Play JAZZ PIANO」とかいうのにチャンネル登録。
ジャズ知ってる感、醸し出しちゃってます。
変な蘊蓄言うようになったら叱ってください(笑)

高校の生物の先生「わからなかったら基本に戻る」って口癖だったなあ。
基本ないのに応用求めたりしてるよ。
小説に関しても、もっと自由とか、革新とか、中央の偉い先生言ってるけど、基本を忠実に踏まえた上での破綻だと思う。
物書きとしての精神的支柱、教科書的なものは自分はすべて松本清張が根幹になってます。
今は「眼の壁」を読んでます。
会社が手形詐欺の被害にあい、その責任を負って自殺した上司の仇を取るべく、部下の男が徒手空拳で巨悪に立ち向かうのだが、以外だったのは刑事が主役じゃないんだよね。
警察権力とか出てこなくて、ただのサラリーマンが主役ってところがたまらないのです。
パトカーも聞き込みも捜査令状も出てきません。
知恵と体力を振り絞るところが何かチャンドラー的なハードボイルドを感じてしまうのです。

いやさてさて、「入口だったところが実は出口だったりして」と寺山の言葉を借りると、本当に現実問題そうだよなって。
牧歌的な風景が、一瞬で血に染まったり。
人を殺めることって、たしか、とってもいけないことだったよなあ・・・。
自問自答してる時がたまにあるんだよね。
毎日毎日、凄惨なニュース見てると自分の正義が揺らぐ時があってさ。
いやあ、こんなんじゃ、創作もぶれるわ。と「喝」を自分に入れるのです。

8月の下旬に家族旅行で九十九里浜へ。
ハゼ、サバを一匹ずつ釣り上げた乏しい釣果にも関わらず良い時間を過ごせた。
早朝の九十九里浜は朝霧に包まれて幻想そのもの。
光の粒子の中で大波が轟々と音を立てていた。
朧げの中を遊ぶ子供たちは幻かもしれない、と思った。
いや、そうではない。まぎれもなく自分の子供だった。
幻想に飲みこまれそうになった自分を恥じた。
もうちょっと強くなんねばなあ、と思った。
幻想を生み出すのはいつだってこちらなのだ。

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