2019.12.09函館教育大学韓国語授業資料「地元」

皆さんの「地元」はどこですか?そう聞かれると困る人もいるんじゃないかと思い、ネットで少し検索してみました。すると「自治体クリップ」というサイト[1]でわかりやすく説明していたので、ちょっと引用させていただきます。 

地元がどこか答えるのに時間を要するものの、出生地ならすぐに答えられるという人も多いのではないでしょうか。出生地とは生まれた場所のことで、生まれてからずっとその土地で暮らしていた人にとっては地元でもあります。・・・一方で、出生地とその後の生活エリアが別の場所であるといったケースも多く見られます。例えば、里帰り出産の場合、・・・

出生地が地元であるという定義が当てはまらない場合、次に思い浮かべやすいのが「もっとも長く暮らした場所」という考え方です。・・・長い間同じ土地に住んでいるうちに、思い出や友人も増えて故郷であるという感覚も自然と抱くことができます。・・・つまり、地元とは生まれたときからずっと住んでいる地域、もしくは子どもの頃に長く暮らした深く関わりのあるエリアであると言えます。・・・

幼少期に長く暮らした地域が地元と言えることがわかっても、引っ越しが多い人はその線引きが難しく悩んでしまうことも少なくありません。転勤が多い家庭だと、引っ越しの回数も多く転々といろいろな地域に住んでいたことになります。そうなると長く住んでいた地域でもわずか数年ということもあるでしょう。・・・その意味で考えると、引っ越すたびに地元が変わっているという解釈も可能です。・・・

要するに、地元の定義は人によって異なるため、これまでの生活エリアやライフスタイルに合わせて決めることができるということになります。出生地は変わることはありませんが、地元はその都度変えられるのが大きく異なる点です。

地元がどこか曖昧に答えていた人も、今後は小さな頃に暮らした思い入れのある地域や現在住んでいるエリアなどを答えると良いでしょう。出生地・出身地・地元など、自分のルーツを示す言葉はたくさんあります。

 ということで、韓国語で「地元」をアピールする時は、皆さんの考えに任せます。函館近郊だとよく、「七飯」生まれだけど、「どうせ七飯って言ってもわかってもらえないから、函館出身にしちゃおう」とか、本当は埼玉出身だけど「東京出身です」とかっこつけてみたりと、虚偽(?)を述べることも多々あるような気がします。一方韓国では、韓国民族大百科事典に「태어나서 자라고 살아온 곳 또는 마음속 깊이 간직한 그립고 정든 장소(生まれ育って暮らしてきた所、または心から大切に想い情が移った場所)」と同じように定義されてはいます。とはいえ、日本と同じく、生まれた場所なのか、思い出深い場所なのかは人によって考えが違うようですし、韓国・朝鮮籍の在日韓国人にいたっては、本籍地を「고향」とする方もいるので、生まれてから一度も足を踏み入れたことがない場所(籍がある場所)が「고향」だと述べる人もいます。

世の中には、「東京生まれHIP-HOP育ち」[2]という人もいるようですが、「HIP-HOPが地元です」とかは絶対やめてください。HIP-HOPはダメですが、今回は、「皆さんが想う地元」「皆さんが想うふるさと」について韓国語で語ってみましょう。祖父母の家というのもありですし、在日韓国・朝鮮の人のように、「本籍地」というのもありです。

考えること

 1.「皆さんの地元」「皆さんのふるさと」はどこですか?「心のふるさと」でもありです。

2.そこはどんなところですか?世界のどこかの街に例えるなら、どこですか。

3.そこを友達に紹介するなら何を勧めますか?(強力に推薦:강추할 만한 건 뭐예요?)

講師の今日のオススメ

ナディ(2019)「ふるさとって呼んでもいいですか」(大月書店)は、6歳で親の「出稼ぎ(不法就労)」のために一家で日本に移住することになったイラン人女性のエッセイです。彼女のように「日本をふるさとって呼んでもいいですか」と問う人々がこれ

から増えてくると思います。私たちはそれにどう答えていけばいいのでしょうか。

康潤伊ほか編著(2019)「わたしもじだいのいちぶです」(日本評論社)は、戦中戦後と日本に住み着いた在日韓国・朝鮮のハルモニたちの作文集です。ここに登場するハルモニたちは話す日本語を生活の中で身につけることはできたけれど、「文字」の学びができなかった方たちです。大人になってから、川崎桜本にある「識字教室」で文字を学んでいます。生まれ故郷を離れ、時代の波に揉まれて生活してきたハルモニたちの祈りとも取れる作文は、「もうすでに日本が多文化である」ことを教えてくれます。


[1] 自治体クリップサイト(2019)「地元ってよく言うけど詳しい定義知っていますか?」,

https://clip.zaigenkakuho.com/jimoto_teigi/,(最終閲覧日:2019年11月23日)

[2] ZEEBRAというラッパーが、2000年ごろDragon AshとACOと共に作った「Grateful days」という曲のヴァースでこの歌詞を歌い、様々な芸人が面白がってテレビで真似していました(他にも同曲で「悪いヤツはだいたい友達」と歌ってたので、半グレ系の人たちがライブ会場に詰め掛け、「お前と友達になったつもりはない」とか抗議されたとかされてないとか)。

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