様変わりする世界

2年程前、Google Driveに放り込んでおいた高校の同窓会誌(紙)への寄稿文を記録としてここに記録として転載します。

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私が東大寺学園を卒業したのは1990年、まさにバブル崩壊前夜。それから四半世紀を経て私は、当時想像しえなかったニュースアプリのIT企業の管理部門で働いている。その間、100億円売上・100人勤務規模の急成長するベンチャー企業数社を経験した。20代は外資系カフェチェーンに勤務し、年間100店舗以上出店、年間採用は正社員だけでも数百名規模という成長をしていた。その頃デスクにはパソコンと電話1台が割り当てられているのが常識的な環境。仕事のやり取りはメールか電話、口頭であった。労働時間は長く徹夜作業もよくしていた。

電話が一人一台でなくなったのはこの5年くらいだろうか。代わりにチャットツールが導入され、チャット・メールあるいは口頭というコミュニケーションをしている。スマートホンが最初に登場したのは2007年だが、一人一台の電話は、一人一台の個人で所有するスマートホンに置き換わり、そこに会社のメールやチャット、各種書類を保管するドライブさえある。20年前は海外との会議は高価な電話会議が主流だったが、現在はほぼ無料に近い水準でテレビで相手の顔を見ながら、資料を画面共有しながら行われる。

私の息子は東京の私立中学に通う中学3年生だが、彼が今夢中になっているのはプログラミング。パソコンとスマホを使いこなし、自らアプリも作る。友人同士はLINEでコミュニケーションを行い、SNSも使いこなす。隔世の感とはこのことか。先日、たまたまスキー場で出会った友人の娘の大学生は言っていた。「父の世代は海外留学が珍しいことだったかもしれないけど、今はむしろ海外留学しないほうが珍しい。」

私は経理財務を主軸とする管理部門を得意領域とするが、そうした職場での会計システムも重厚なサーバークライアント型から、気軽なネット環境があればいつでも仕事できるSAAS型に変化している。いつでも、どこでも仕事できるのが当たり前になりつつある。個人のスマートホンで経費精算すると自動的に会計システムに取り込んでいく。20年前はエクセルで作った経費清算書を印刷、経理に提出され、大勢の派遣社員が入力作業を行う光景が広がっていた。最近ではRPA(ロボティックプロセスオートメーション)という新しいツールが出てきた。人間がやっている定型的な業務を全部パソコンの中のロボットに仕事を覚えさせてやろうというものだ。

AIが仕事を人間から奪うといわれて久しいが、低コストで実に多くのITシステムを使いこなしながら、日本語・英語を交えて、経理財務部門の仕事をしていくのが仕事の風景として定着しつつある。

そういえば定年60歳という時代はとっくに過去のものとなり、人生100年時代にどのように仕事をしていくのかが問われている。私が大学生のころレポートをワープロで書くのが新鮮だったが、現在は社内Wikipediaに記載ルールを覚えてアップロードするというのが基本。50歳でも60歳になっても、新しい仕事のツールがどしどし現れてくると思ったほうが良いようだ。

先ほどの私の息子が大学卒業後にどんな職業につくのか、それはもはや想像すらできない。そして、人生100年時代に私自身もおそらく新しく出てくるだろう仕事のツールを覚えながら、使い込みながら、70歳、80歳まで仕事をすることになりそうだ。働き方改革なる言葉が使われるようなり、長時間労働は消え去る働き方になるのかもしれない。それにしても柔らかな脳みそで、柔軟に世の中の変化に対応していく力こそが生き抜く力として必要だと痛感する。私自身も中国語を覚え、15歳の息子と同様にプログラミングを覚え、UBERの自動運転タクシーに乗り、金婚式で宇宙旅行をしているかもしれない。いや、もっと想像を超えたことが起きるのだろう。

現役の東大寺学園で学ぶ生徒たちにはぜひ「変化を楽しむマインド」を身に着けてもらいたいものである。そして、それは卒業後四半世紀を経た我々こそがもっとも必要なものと痛感する。

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