親の家を片づける
親の家を売りました。
敷地約50坪。建坪35。
木造二階建て。築25年。
道路に接していない。
通路は建築基準法で定められた幅より10センチ狭い。
駅からバスで10分。バス停から徒歩1分。
さてこの物件。いくらで売れたかというと。
135万円。
首都圏内ですけれど、こんなもんです。
敷地が奥に引っ込んでいて、道路に接していないってところが大きなマイナス要素でした。
最初の家を建てたあと(60年くらい前)、通路として追加購入した土地の測量が正確ではなく、所有分が実地よりも10センチ狭かった。
道路に接する通路の幅が2メートル以下(1メートル90センチ)。
ために、ここは「再利用のできない土地」でした。
60年前の法律は今とは違っていたでしょうし、測量の不備は父母の責任ではありません。
けれども、ほぼ無価値不動産だったわけで。
これがいわゆる『負動産』。
今ある家を取り壊しても、この敷地のままでは次を建てられない土地で、不動産業者さんもできればこんな物件は引き受けたくない。それがこの低価格の理由でした。
かといって、空き家のまま放置というわけにもいかないですからね。
家は何番目かの家族のようなものです。
人間と同じように、手入れとケアが必要です。
放っておけば傷みます。屋根や外壁のメンテナンス等、定期的に手入れをしないと、あっという間にぼろぼろになります。
住む人はいないし、無人の空き家であっても、もしものときのためにと火災保険などもかけなければならない。
目を離すと庭の植物は伸び放題。
外に放置した物品等に水が溜まって蚊が発生し、郵便受けには郵便物ではない配布物などがぎゅうぎゅうに押し込まれてきます。(郵便物は転送手続きで解決できます)
また、長期間使わない家でしばしば火災が起きることがあるそうです。
人がいないので鼠とか虫とかが住みつき、配線をかじったりして火事になると、これは業者さんから聞きました。
といっても、ブレーカーを落としておくと、無人であることが外からでもわかってしまうので、侵入されたり、盗難に遭ったりという危険がある。
立地にもよりますが、雨風台風その他の災害に遭ったりすることも考えられます。
家を取り壊して更地にしてしまえば古い家の問題は解決しますが、家なしの土地にかかる固定資産税は、家ありのときの6倍(!)。法改正が望まれるゆえんです。
両親がこの家を建てたとき、わたしはもう独立していたので、住んだことはありません。愛着はない。
それでも父と母の晩年を守ってくれた家です。
父と母が存命のうちはこのままにしておこう。
ふたりが旅だったらなるべく早く手放そう。と決めていました。
わたしは一人っ子ですから、どうあってもわたしひとりで、この古家と土地を処分しなければなりませんでした。
というわけで、覚悟を決めました。
持ち出しになっても、赤字になっても、
家と家財と土地を全部処分する。
そしてそのときがきました。
親が生前に持っていたものは、全部処分です。
業者さんが処分場に運び、衣類等は焼却処分されます。
父と母がひとつまたひとつと選んで買って手元に置いたものだから煙になって親のもとへ届けば、それでいい。
残すのは思い出だけ。
そう決意していても、ときどき動揺しました。
全捨って。冷たくないか。
まあ、でも! 一人っ子だからね!
わたしがそうすると決めたら、反対する人はいない。ので、そこは楽。
家の中には、わたしの両親が60年かけて詰め込んだ家財やら家具やら衣類やらその他もろもろがぎっしり詰まっていました。
母は溜め込み性でしたから、廃棄業者さんも驚くほどの物品量でした。
家の中身全部の廃棄と、小屋の撤去及び中身の廃棄は、不動産手続きの前に、必ず済ませておかなければなりません。
ここ十年ほどのあいだに、わたしが運び出して片づけたものなどもありましたが(合計百回くらいか?)、父母の死後、遺品整理をしてくれる業者さんに頼みました。
遺品整理費用、約120万円。
知り合いの業者さんだったので、かなりお安くしてくれてこの額です。
ちなみに、依頼主のわたしは廃棄に立ち会わなかった。
家の中身をどうするかについて、口出しもせず。
業者さんの話では、遺族が立ち会って『あれは残しておきたい、これは家族にとっておきたいけど、ああ、迷う〜』というように口を挟まれると、作業が滞って困るんだそうです。なので、出したいものがあれば作業前に。ということでした。
この家は二度、相続対象となった物件です。
父が亡くなったときと、母が亡くなったとき。
土地と家屋の所有権を移動するための手続きは司法書士さんに依頼。
手続きの手数料が一回につき10万円よりやや少なめ。
家を売却するために不動産屋さんが入ります。
この手数料も10万円よりやや少なめ。
さらに
家土地を保持するためにかかった諸費用
家屋にかけた保険料
諸手続き、メンテナンス、各種作業にかかった手数料
などを合計すると、家土地売却額を百万円単位で上回ったと思われます。
不動産が負の遺産になるという、典型的な例だったかもしれません。
こうして家の中のものをすべて出し、掃除をし、不動産屋さんに引き渡しました。
親の家にあったものは手元に残しませんでした。
唯一の例外は写真。1枚だけです。五十代のころの父と母が並んで写っています。珍しくふたり揃って笑顔の一枚。この写真を撮ったのはわたしでした。
このように、約一年かけて親の家を片づけてみて、自分はどうかなと振り返ってみました。
今のうちに、動けるうちに、片づけておこう。そう思いました。
わたしはどちらかというと捨て性です。
オリンピックイヤーに、家の中のものを点検して、思い切りよく捨てていく……というかたちでやってきました。
方法は簡単で、四年間、一度も出番がなかったものは新品でも処分する。
使えるかもと考えて保存しておいたもので、四年のあいだ使わなかったものは処分する。これだけです。
それでもけっこうな量になるので、毎月一回程度処分して一年がかり。
人間ってけっこうな数の不要物と一緒に暮らしているんだなあと痛感します。
でもね。年とってくると、四年後に自分が必ず生きているかどうかって、保証はないなって思うようになるんですよ。
悲観ってこともなくて、自然に受け入れる気持ちになるといいますか。
身近なひと、同世代の友が、思いがけなく旅立っていったりもしますしね。なので、先延ばししないで即行動というように仕切り直ししまして。
数年前に、5/5/9計画というのを思いつき、55歳からの5年間で自分に属する荷物、家財、私有物を9割処分しようと、プランをたてました。
が、多重介護+他にもいろいろケアせねばの状態で9割処分はちと無理でした。(実績はどうかな。2割いったかな、どうかなという感じ)
処分したあとで、隙間ができたことに安心して、調子に乗って買い足したものもあるので、実は減っていないかもしれない(!)。
そこで今年、6/6/6計画に変更しました。
60歳から6年で6割処分。
春先から初夏まで、ちょこちょこ片づけまして、真夏は中断(体力が保たない)。
秋から年末にかけてぽつぽつと片づけていこうと思います。そしてきっと真冬も中断する(腰痛が怖い)。
親の遺産を片づけたあとは自分の荷物も片づける。
最後まで残るのは何かなと部屋を見渡して考えて。
絵を描く道具と文章を書く道具。パソコンとモバイルですかねー。
しかし今、大小あわせて9画面あるんですよ(笑)。
そのうち7画面がここ2年で増えたのであり、ここだけは捨て性どころか買い込み性。反省。
今週、秋一回目の大処分をします。
自分で処分場へ運ぶもの、業者さんに頼むもの、メーカー引き取りで返すもの、いろいろです。
何かを買うときは捨てるときのことも(ちょっとでいいから)考えようかなあ。と、当たり前のようだけれど、これに尽きるかなと思う、そんな秋です。
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