見出し画像

育成テーマ② 職人としての地力を蓄えるために 〜起案研修など〜

育成テーマの2つ目、1番大切な弁護士の職人としての地力を蓄えるという部分についてお話しします。

なお、事務所の代表の一人として外部に情報発信するという立場でとてもキレイな話をしていますが、私が実践できていないとか弁護士の職人としての実力がまだ十分に備わっているわけではないという部分はさておきでお話しさせていただきます。

営業セミナーだけではないです

勤務弁護士向けに営業セミナーをしているというのはアルシエンの特色なので最初に説明しましたが、もちろん育成は営業面だけではないです。

ある程度のノウハウがあれば案件のご依頼をいただくことはできるようになるかと思います。
ただ古くから言われているように1番の営業はご依頼いただいた案件をしっかりとこなすことです。

事務所で教える営業ノウハウは、木村先生の言い方を借りれば雪だるまの核の部分の作り方だけです。

その核を転がして経済的基盤になるまで大きくしていくには、ご依頼いただいた案件をしっかりとこなして信用を積み重ねていく他ありません。

営業ノウハウを身に付けてご依頼されても、弁護士としてのスキルがなければ依頼者の期待を裏切ってしまいます。

そのようなことを繰り返していたら悪い評判が立ち、案件をご依頼いただいたりご紹介いただいたりできなくなってしまい、いずれ行き詰まります。

それに何よりもアルシエンの評判も傷ついてしまいます。

ということで、当然、弁護士としてのスキルを育成するための研修もかなり本気で行っています。

起案の書き方研修

弁護士には様々なスキルが必要ですが、私たちは弁護士にとって1番基本となるのは起案の作成だと考えています。

複雑な事案から法的に意味のある事実とそうではない事情とを区別して、それを法的主張として組み立て、分かりやすく書面に表現する。

訴訟では書面でもって依頼者の有利になるように裁判官を説得していくわけですし、仮に訴訟はしないという方であっても事案を分析してこちらの法的な主張を分かりやすく書面にまとめるという作業は必要なので、弁護士にとって起案作成能力が極めて重要な能力であることについては異論がないのではないかと思います。

そこでアルシエンでは起案作成についてOJTで身に付けてもらうというだけでなく、座学での研修も行うようにしました。

具体的にはアルシエンに加入して半年くらいした後に、司法協会の民事事実認定教材を用いて、訴状、答弁書、最終準備書面の起案の仕方に関する研修を行っています。

加入の半年くらい後に実施するのは、パートナー弁護士が勤務弁護士の起案のクセを見付けたり、勤務弁護士も実務に出て実際の案件で起案をしてみて自分なりの悩みを見付けてもらってからの方が座学の効果が高いと考えているからです。

最初のクールは訴状です。

訴状については、陳述書を含めた甲号証だけを渡します。

1日目は、時系列表の作成、訴訟物の設定と請求原因のブロック作成をしてもらい、それで終わりです。

2日目は、有利、不利な間接事実の拾い出しと訴状の目次作成です。

そして、3日にようやく訴状起案です。

次のクールは答弁書で、訴状と同じく3日かけて研修します。

最後のクールは最終準備書面です。
1日目は尋問メモの作成です。甲号証、乙号証、主張書面から原告側の尋問事項を作成し、なぜその事項を聞こうと思うのか、獲得目標はなんなのかを議論します。

2日目は記録の尋問調書も追加して最終準備書面の目次を作成します。

そして、3日目に最終準備書面を書いてようやく終了です。

このように全部で9回に分けて起案研修をしています。
各回ごとに勤務弁護士とパートナー弁護士の成果物を見せ合い、何でその事実を拾ったか、なぜその構成にしたかなどを議論します。
講師をするパートナー弁護士は講評するだけでなく、自分なりの成果物を作り、なぜそのような内容にしたのかについても理由を説明します。また、講評役のパートナー弁護士は講師役が作成した成果物についても自分ならこうするという意見を言うようにして、これまでの試験と違い正解があるわけではないということも伝えるように工夫しています。

このように勤務弁護士には自分で考えもらいつつ、パートナー弁護士も自分が作成した成果物について思考のプロセスを説明をして、アルシエンが考える起案作成の型を身に付けてもらうようにしています。

このように各プロセスに分けて実施することで、起案作成のうちどの部分が得意でどの部分が苦手かも明確になります。
人によって苦手な部分が違うので見ていて面白いです。

ただ面白いだけではなく、個々の苦手部分が明確になるとその後の育成方針の策定にも役立ちますし、起案をお願いするにしても、いったんどこの部分で進捗管理をした方がよいかが明確になります。

法的構成が苦手なら要件事実のブロック段階で一度確認を入れればよいですし、文章の構成が苦手なら起案の目次の段階で一度確認をして文章構成を話し合えば良い起案になります

こうしておくと、いきなり起案してもらい、成果物は全部赤入れで自分で一からやった方が早かったなどということがなくなりパートナーにとっても時間のロスがなくなります。

勤務弁護士にとっても全部赤入れは精神的ダメージが大きいと思うので双方にとってもメリットがあります。

尋問研修会

最近はやっていないのですが、尋問が得意な先生に講師になってもらい、尋問の研修会なども行っています。

任意での勉強会

また、完全自由参加ですが、メンバー同士でランチ勉強会を開催したりもしています。 

昨年(2020年)はコロナによりテレワークしている期間が長く、実施できなかったのですが、一昨年は民法改正についての勉強会を行っていました。

今年(2021年)は、相続法の勉強会を行っているようです。
※私は参加していません。

相談チャット

気軽に相談できるように事務所内で利用しているチャットツールに相談チャンネルも作っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?