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勤務弁護士に求めるものは売上でも受任率でもなくパートナーを時間的に楽にしてくれること

巷では「勤務弁護士は報酬の×倍売り上げるべし」みたいなことが言われたりもします。

ただ、法律事務所には色々なスタイルがあるので、何を勤務弁護士に求めるかは事務所によって異なるかと思います。

ということで、今回は、アルシエンが勤務弁護士に望むことをまとめておこうと思います。

勤務弁護士の売上は見ません

以前もお話ししましたが、アルシエンでは勤務弁護士を売上や受任率で評価するということはありません。
というのも、アルシエンは広告で大量集客をする事務所ではありません。案件を獲得するのはパートナー弁護士次第であり勤務弁護士は受任フローに入っていません。
勤務弁護士が受任フローに入っていないので、勤務弁護士の売上や受任率というものを想定できないのです。

売上や受任率を評価の対象にすることが良くないと考えているわけではなく、ただアルシエンのスタイルには合わないということです。

勤務弁護士が受任フローに入っていないということは、勤務弁護士の期間中に受任のための工夫をする機会が個人事件しかないということになります。これはアルシエンのデメリットといえばデメリットです。売上や受任率が評価の対象になっている事務所であれば勤務弁護士の期間中に事務所事件で受任率を上げるための工夫をする機会が大量にあるということになります。

他方で受任率や売上を気にすることなく弁護士業に専念できるという点は、そのような事務所に比較するとメリットなので、就職活動をしている方が入ろうとする事務所でどのような経験を積みたいか次第なのだと思います。

担当事件での売上もみません

また、勤務弁護士が担当した事件の弁護士報酬を評価の中心にするということもありません。

もちろん、担当してもらった案件が勤務弁護士のおかげで無事に解決して依頼者から成功報酬をいただいた場合、その貢献度に応じて勤務弁護士に追加で報酬をお支払いするということはあります。
これはプラスの評価であり、担当してもらった案件でいくら弁護士報酬が発生していないとというようなノルマもありませんし、担当してもらっている案件から発生する弁護士報酬が少ないことでマイナスに評価することは一切ありません。
また、着手・報酬というスタイルの先生が多く、勤務弁護士のビラブルな時間などを評価することもありません。

パートナーの先生が多数の案件を受任しそれを機械的に配点しているのであれば、担当案件の売上というものに意味が出てくるのかもしれません。
しかしながら、アルシエンは広告で大量集客したり、強烈な集客力を持った一人のパートナーが自分では請けきれない程多数のご依頼をいただいていたりするという事務所ではありませんので、機械的に配点するほどたくさんの案件はありません。

勤務弁護士がどのような案件を担当するかは、パートナー弁護士が請けた案件を勤務弁護士の得手不得手や性格、目指している分野、担当件数などを考慮してパートナーの差配で決めています。そのため勤務弁護士の担当事件の売上を評価の対象にすれば、それは担当案件を決めているパートナーの胸先三寸になってしまいます。

また、綺麗事といえば綺麗事なのですが、そもそも弁護士報酬の多寡により案件の重要性が左右されることはないと思います。

ご依頼いただいた以上は全て大切な案件ですし、私たちのような紹介、口コミに頼るスタイルの法律事務所ではご依頼いただいた1件1件の信用の積み重ねによって継続的にご依頼をいただけるようになっているのですから、弁護士報酬の多寡により案件の重要性は計れないのです。

自分の時間を買ってます

では、勤務弁護士をどのような基準で評価しているかというと、勤務弁護士の働きによりパートナー弁護士が稼働する時間をどれだけ減らすことができたかで評価をしています。

というのもアルシエンのパートナーの先生方は皆マネージャーではなくプレイヤーなのです。
最近は組織化・効率化した法律事務所も多数ありますが、アルシエンはマネージャーとプレイヤーすら分化しておらず、パートナー弁護士も一プレイヤーとして実務に携わっています。
基本的には自分が請けた案件は責任もって自分で担当するわけです。

ただ、弁護士業務には労働集約的な部分もあり、全てを自分でやっていては受任できる事件数も限られてしまいますし自分の時間を確保することも困難になります。
そこで、自分がその作業をせずに他のことをする時間を確保するために、勤務弁護士に案件の一部を担当してもらうのです。

いわば勤務弁護士にお金を払い案件を担当してもらうことで自分の時間を買っているのです。
パートナー弁護士が勤務弁護士に期待しているのは、パートナー弁護士を時間的に楽にしてくれることなのです。

タイムチャージ制ではないので一概には言えないのですが、仮にパートナーの先生の1時間あたりの売上が2万円だとします。
※ここでは1か月の売上を、時間単価2万円×8時間×22日=352万円と仮定しています。

そうすると勤務弁護士に手伝ってもらうことによりパートナーの時間が1時間空けば、その1時間には2万円の価値があることになります。
勤務弁護士の報酬が1ヶ月44万円だとすれば、勤務弁護士のおかげでパートナー弁護士の時間が1ヶ月に22時間分の時間を空けさせてくれれば理屈上は損がないことになります。
パートナーの時間単価が4万円であれば、わずか11時間で元が取れてしまいます。

パートナーの時間を空けてもらうには、遠方の初回期日に行ってもらうという方法だってあります。往復3時間かかる裁判所で行われる欠席判決予定の第1回期日に自分の代わりに出廷してもらえばそれだけで6万円分の時間が浮いたことになります。

起案で言えば、自分で一から作成すれば8時間かかるものを勤務弁護士がドラフトをしてくれたおかげでチェックと修正の2時間で済んだということであれば6時間つまり12万円分の時間が浮いたことになります。
勤務弁護士に起案を頼んだのに修正に2時間もかかったという評価ではなく、自分で一からやるよりかは6時間も節約できたという考えです。

勤務弁護士が成長してクオリティが高くなり、パートナー弁護士のチェック時間が減れば、その分パートナー弁護士の時間が確保しやすくなります。

確保した時間をどう使うかはパートナー次第です

勤務弁護士に業務を依頼して浮いた自分の時間をどう使うかは、そのパートナー弁護士の考え方次第です。

浮いた時間を使って営業活動をしたり、他の仕事を受任して売上を上げれば勤務弁護士に支払った報酬は取り戻せることになります。勤務弁護士に払った報酬を取り戻せるかどうかはパートナーの時間の使い方次第ですので、勤務弁護士がパートナーの売上への貢献など考える必要はありません。

忙しすぎて自己研鑽の時間が確保できていないというのであれば、浮いた時間を執筆や自己研鑽の時間に充てて将来の自分に投資してもよいのです。その場合、短期的にはパートナー弁護士の所得は減ります。ただ減った所得は自分への投資なのですから自己研鑽によるリターンが見込まれ、将来的には減った所得は取り戻せるでしょう。

もちろん浮いた時間を仕事には使わずにライフワークバランスのために家族との時間に充ててもよいかと思います。アルシエンには所得はそこそこでよいのでむしろ家族と触れ合う時間はしっかりと確保したいという先生が多く、このタイプの先生が多いという気がします。

このように勤務弁護士のおかげで自分たちの時間が空くということが、一番ありがたいのです。

というようにアルシエンでは、どのくらいパートナーの時間を浮かせてくれたかで評価をしており、受任や担当事件での売上では評価していないというお話でした。

今度は、勤務弁護士を初めて採用したパートナー弁護士向けにお話している勤務弁護士への仕事の頼み方についても書いてみたいと思います。

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