21.福は内、鬼は外

 これまでの7年数カ月の間、私の心を癒し、穏やかにしてくれたものの一つには家族や友人達との旅があります。

 病になる前は仕事を休んでの旅行など考えもしなかったこと。せいぜい休日を利用する小旅行以外は実行する心の余裕さえも持っていません。
しかし与命がいつまでか、残りの時間が有限であることを考えると時間の使い方、作り方に変化が生じ、できうるなら自分のやってみたいこと、未知の領域に触れたいというこれまでにない生活スタイルを取り入れる必要性を強く感じるようになってきました。

 そのような時に友人夫妻から素敵なツアー等に誘っていただいたことには感謝です。

 これまでは家族などとの個人旅行の経験しかなく、ツアー等の団体旅行は老人クラブ(失礼、私もその老人仲間なのですが)扱いしていたのですが、これまでの個人旅行の浅学の知識で目的地まで「行った」という満足からツアーガイドさんの巧みな話術をもって、歴史的背景からお薦めスポットなど知る由もなかった道中、並びに目的地の新たな発見、知識も得ることができるなど、すっかりツアーの魅力に引き込まれてしましました。

 旅は、それぞれに雄大な自然の恵みを感じさせてくれ、とても感動を与えてくれます。近場の九州各地の旅から大型客船飛鳥Ⅱによる各地への立ち寄り旅行など。例えば東北秋田の竿燈、青森のねぶたなど勇壮な祭りの観覧や洋上からの花火見学、奥入瀬、十和田湖などの自然を満喫もできました。また沖縄、石垣へのクルーズ、さらには韓国済州島への船旅などにも参加し、大好きな美しくグラデーションを描く海を眺め、非日常への世界へ浸り、一時期と言えども、病を忘れさせてくれる癒しの時間です。

 また同時にその地方の方達との触れ合いもあり、特に青森港でのボランティアの地元高校生が市内を案内してくれ、夜にはその娘たちがねぶたのハネトとして活躍するなど印象深い心に残る旅もありました。

 その他にも暑い夏の京都の大文字焼きや、奈良春日大社の万燈籠、そして京都迎賓館、東寺の弘法市、さらには憧れの軽井沢万平ホテル、草津温泉、出雲大社、松江、島根の大山なども短期間の間に巡ることもできました。
そして、旅のもうひとつの楽しみは、それぞれ地元の美味しい名物料理を堪能できることです。これも満面の笑みを作り出します。
同じツアーに参加の方とも親しくなり、新たな出会いとその後も近況報告をさせて頂くなど笑顔をもたらしてくれる心の旅です。

 まだまだ日本各地に素晴らしい場所、是非訪れてみたくなり、どんどん深掘りしたくなる街もたくさんあることでしょう。

 旅をするためには体調の管理が必須条件となり、一カ月程前から身体の調整に努めたり、強い副作用を伴う薬剤を暫く控えてもらったりしながら、旅を生きる目標のひとつとして過ごしてきました。

 行く先々での神社、仏閣では一番に病の平癒を特に念入りに祈願します。私の身のまわりの持ち物には、行った先々の、また知人から頂いたお守り等を10個を超えて持ち歩いています。古いお守りなどは返納し、新しいものへの交換をしたいのですが、残念ながらコロナ禍の中でいくつかの希望する旅行も中止となる状況で叶わないままです。早く通常の生活に戻れる日を待ち遠しく願っています。
 そして体力、気力があるうちに、笑顔が生まれる楽しい心の旅を少しでも多く実現できることも願っています。

私には残り時間が少ないのですから。

「福はうち」「鬼はそと」「鬼はそと。」

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