中間報告 〜 勉学と育児の間で

(この記事は 2017年9月24日 に執筆したものです)

こんにちは、1年ぶりの投稿です。大学院進学から約一年半が経過し、明日からまた学期が始まるので、これまでのことを中間報告としてまとめておきます。

退職しました

昨年の4月、会社の「勉学休職制度」を利用し、会社を休職して大学院に入学しましたが、1年経過した3月末に退職しました。理由は社会保険料の支払いです。これは僕が不勉強だったのがいけないのですが、休職中は無収入であっても在職時と同額の社会保険料を支払い続けなければいけないことを知りませんでした。

(参考:  休職中・休業中の社会保険料Q&A

例えば月収が30万の場合は社会保険料は約4万円、50万の場合は約7万円です。これが無給であっても毎月取られ続けるのはかなり厳しい。

毎月会社からメールで「○○万円振り込んで下さい」と指示される額がやたらと高く「なんかおかしいか…?」と気づいたのが昨年の10月。当初の想定と大きく異なる負の勾配で減っていく貯金額に心を揺さぶられ続けました。何度か人事の方とも相談した上で3月末に退職することにしました。

1年延長します

在学期間を1年延長することにしました。このことを決めたのは今年の6月です。理由は基礎的な学力が全然足りておらず、このまま進めたところで満足な研究成果は出せそうになかったためです。

一年以上も地に足のついた感覚のないままひたすら知識を詰め込み、毎週行われるゼミでは理解の甘さを詰められ、家族といるときでも「あれをやらないとやばい…」と常に追い詰められたような気持ちでいました。

研究テーマは修士2年の夏休み前ぐらいには見えているべきものですがさらさら手応えもない。このまま先生にテーマを与えてもらって修士論文を書き上げたところで何か得られるものはあるだろうか、2年かけて修士号と引き換えに貯金だけでなく数学への情熱まで失ってしまいそうでした。

時間が足りないなら、時間を増やすのが正しい。これも厳しい決断でしたが、先生や妻とも相談の上で一年延長することにしました。

夏休み 〜 iOSDC 2017

貯金の流出を食い止め、在学期間を延ばしたことで、ようやく安定した気持ちで勉学に取り組めるようになりました。土日は育児に専念しようと割り切れるようにもなり、家庭の雰囲気もよくなりました。

入学以来、意識的に技術関係の情報はシャットアウトしていたのですが、夏休みぐらい良いかと思い、国内最大の iOS 開発者カンファレンス iOSDC 2017 に登壇することにしました。

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僕は「Swift で数学のススメ 〜 プログラミングと数学は同時に学べ」という発表をしました。この発表は1年前に書いた 「Swift で代数学入門」 を元にしています。数学における抽象化と Swift における Protocol-Oriented Programming を対応させて、既知の概念を拠り所に数学の難しい話にも触れられるようにしてみようという試みです。

マニアックな人が数名聞いてくれればいいかなぐらいに思っていたのですが、会場は立ち見が出るほどの満席でした。2日目の昼過ぎで既に場が暖まっていたこともあり、自分がこれまでやってきた中で最高の盛り上がりでめちゃくちゃ楽しかったです。オーディエンスの投票で決まる ベストトーク賞 の4位を頂くことができました。

エンジニアの勉強会の雰囲気はやっぱ良いものだなと思いました。特に「あの人は本当に楽しそうに数学の話をするなぁ」と言ってもらえると嬉しい。普段黙々と数学の勉強をしているときは分からなくて苦しんでることの方が多いので、「やっぱ俺は数学が好きらしい」と原点に立ち返れるので救われます。

まとめ

「一年半経ってようやく地に足がついてきた」という感じです。

勉強と育児の両立は大変ですが、子供を授かったことも数学の道に戻ってきたことも自ら望んだことです。周りの人たちと比べて自分に子供がいることを足枷のように思ってしまうほど悲しいことはない。実際には、子供ができたからこそ自分の人生を見つめ直し、もう一度数学をやろうと決められたのでした。

これまでの自分は少なからず競争を意識して生きてきましたが、今の立場では競争意識を持てば惨めな思いをすることは明らかです。今は色々な制約のある中でもちゃんとベストを尽くせているかが自己評価の基準の大きな部分を占めるようになってきました。

夏休みの最後の週は家族でゆっくり過ごせたので、また明日から張り切って数学をやっていくぞ💪

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